Project/Area Number |
23K22412
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Project/Area Number (Other) |
22H01141 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13010:Mathematical physics and fundamental theory of condensed matter physics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 創祐 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00771221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 輝代士 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50759256)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2026: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
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Keywords | 非平衡熱力学 / 最適輸送 / 化学反応ネットワーク / 最小エントロピー生成 / ゆらぎの熱力学 / 最適輸送理論 / 情報幾何 / 化学熱力学 / 熱力学的トレードオフ関係 / 確率過程 / 流体力学 / 緩和ダイナミクス / 熱力学的不確定性関係 / 速度限界 / 定常状態熱力学 / Fokker-Planck方程式 / 情報幾何学 / 非平衡系 |
Outline of Research at the Start |
非平衡系の普遍的な原理を見出すための指導原理の候補として, 本研究はまず微分幾何学に基づいた非平衡熱力学の理論を構築する. そして, 幾何学的な関係式・不等式という観点からエントロピー生成に関するトレードオフ関係について, 従来の結果を位置づけ直す中で, 新たな熱力学的なトレードオフ関係のような非平衡系の普遍的法則の発見を目的とする. この目的を達成するために具体的には, 最適輸送理論と情報幾何学の熱力学的な接点の構築, 微分幾何学における双対性と熱力学的な双対性の関係の構築, 幾何学的な不等式に基づいた新たな熱力学的なトレードオフ関係の導出, という三つのテーマに沿って研究を行う.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度、伊藤は最適輸送理論や情報幾何学などの幾何学に基づいた非平衡熱力学の理論の構築のために、幾何学性に基づく熱力学的な制約や情報理論的な制約に関する研究に従事した。具体的には非平衡定常状態における幾何学に基づいた熱力学的不確定性関係の拡張、情報幾何学による速度的な制約に基づく進化における制限、幾何学的な等周不等式に基づいた熱力学的な駆動力と相互相関関数の非対称性に基づく新規なトレードオフ関係、最適輸送理論に基づいたゲーム理論的な情報熱力学的な最小部分エントロピー生成に関する研究、緩和ダイナミクスにおけるレート行列の固有値のスペクトルの摂動と熱力学的な散逸の間のトレードオフ関係、情報幾何の双対座標系を用いた平衡状態緩和中の非平衡非定常ダイナミクスの特徴づけと緩和における情報幾何学的な制限について考察した。これらはそれぞれPhysical Review E, Physical Review Letters, Physical Review Research誌など6本論文が出版された。 また本年度は、散逸の幾何学的分解における維持エントロピー生成率の固有周波数モードによる分解、サルの皮質脳波における脳波モードごとの散逸の定量化、反応拡散系における幾何学的な非平衡熱力学、パターンダイナミクスにおけるパターンの周波数成分の変化速度と散逸の間の熱力学的なトレードオフ関係の導出、最適輸送理論と非平衡熱力学の理論のアナロジーによる流体力学における幾何学的な非平衡熱力学、及び流体力学における熱力学的不確定性関係の研究を行った。 また金澤は、実社会における相関関数に関する理論/実証研究を行い、金融市場で観測される自己相関関数の長期記憶性のミクロな起源を求めた。これらはPhysical Review Letters, Physical Review Research誌に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展しているとみなせる理由に、本年度は新たな幾何学と非平衡熱力学の間の関係を見出したことが挙げられる。例えば、幾何学的な等周不等式に基づいた熱力学的な駆動力と相互相関関数の非対称性に基づく新規なトレードオフ関係は新たな方向性として注目に値する結果であり、Physical Review Letters誌に出版されてEditors` suggestionに選ばれるなどしている。そのため、幾何学性に基づく非平衡熱力学の理論の展開は、順調に進展した上できちんと評価が行われ始めているとみなすことができるだろう。 また今年度及び昨年度に出版された最適輸送と非平衡熱力学に関する論文と、幾何学的な等周不等式に基づく新たな熱力学的トレードオフ関係の結果は、それぞれ2023年におけるPhysical Review Reseach誌及びPhysical Review Letters誌におけるmost-downloaded paperに選ばれるなどしており、本研究課題である幾何学性に基づく非平衡熱力学の研究そのものが大きく発展して、注目を集めているということも挙げられる。 この二つの論文に関連する我々側での発展としては、反応拡散系における最適輸送理論の幾何学性に基づく非平衡熱力学の理論と、緩和現象を表現するマスター方程式におけるレート行列のスペクトルギャップと熱力学的な散逸の間のトレードオフ関係がある。これらにより一般的な拡張もしくは相補的な関係式を導出することに成功しており、応用可能性や発展性についても十分見通しが立っている状況にある。また、分担の金澤が行なっている金融の実データにおける相互相関関数の研究と、熱力学的な駆動力における相互相関関数の非対称性の研究の間の関係についても議論を行い、知見の交換が順調にできており、さらなる展開について議論を重ねることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
幾何学と非平衡熱力学の接点について、まずは現在すでに取り組んでいる複数の研究を完成させるべく研究を続行していく。具体的には反応拡散系のダイナミクスにおける非平衡熱力学とパターンダイナミクスにおける熱力学的なトレードオフ関係や、流体力学ダイナミクスにおける非平衡熱力学と熱力学的なトレードオフ関係の導入、拡散系として取り扱うことが可能な脳ダイナミクスにおける幾何学的な散逸の分解と固有周波数モードによる散逸の解析、などがある。論文のリバイズなどでこれらの研究の改良を行い、幾何学に基づいた非平衡熱力学の取り扱い手法に対する理解を深化させていくことを考えている。 またさらに今後は様々な系への理論の応用可能性を発展させていくことを考える。現在研究を行っているマクロな反応拡散系、ナビエ=ストークス方程式で記述できる流体系、マスター方程式で記述される確率過程やブラウン運動による拡散ダイナミクスにおいて、これまで別の系でのみ適用可能だった理論を拡張することを考える。また加えて今後はGKSL方程式で記述できるような量子系や、キルヒホッフの理論に基づく電気回路系など新たな系についても、これまでの研究の拡張の可能性についても検討を行っていく。さらにこれまでにない幾何学的な視点に基づいた非平衡熱力学の研究が、これまで行ってきたような化学反応系やポピュレーションダイナミクスの系においても可能かどうかについて検討を進めていく。 また、これまでの研究では最適輸送理論や情報幾何学などの機械学習に関連の深い幾何学の数理に基づいて非平衡熱力学を展開してきたため、逆に非平衡熱力学の知見がこのような最適輸送理論や情報幾何学の視点に基づいて機械学習などに活かすことができないかを模索していくことも考えている。例えば具体的には生成モデルなどの学習において非平衡熱力学の知見が活かすことができないかを模索していく。
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