Project/Area Number |
23K22429
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Project/Area Number (Other) |
22H01158 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13020:Semiconductors, optical properties of condensed matter and atomic physics-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
堀越 宗一 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00581787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
筒井 翔一朗 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 客員研究員 (30808803)
土居 孝寛 京都大学, 理学研究科, 助教 (50804910)
田島 裕之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80804278)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,150,000 (Direct Cost: ¥5,500,000、Indirect Cost: ¥1,650,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 量子シミュレーション / FFLO超流動 / フェルミ粒子系 / 符号問題 / 冷却原子実験 / 複素ランジュバン法 / ダイアグラム展開法 / 量子多体系 / 負符号問題 / 冷却原子理論 / 超流動 |
Outline of Research at the Start |
実験班と理論班が連携し「フェルミ面がズレているスピン1/2フェルミ粒子系の相図」の決定とその理論的解釈を進める。実験班は、リチウム6から成る極低温フェルミ原子気体を用い、FFLO相の発現が予想されている実験パラメータ領域周辺を探査する。具体的には温度、粒子間相互作用、フェルミ面のズレ度合いを実験的に制御し、状態方程式やクーパー対の重心運動量分布を測定する。理論班は、ダイアグラム展開法と複素ランジュバン法で状態方程式と重心運動量分布を計算する。このようなフェルミ粒子系を理論的に扱う際、符号問題に直面するが、この符号問題を克服しつつFFLO相の解析が可能であることを実験値と比較する事で示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
実験班では、昨年度に実験で評価されたスピンバランス系の状態方程式が先行研究と異なる振る舞いを示したことから、その原因を探るため吸収イメージの解析に用いるリチウム原子の飽和強度と実効吸収断面積の再評価を進めた。新しい評価方法は原子がプローブ光から光子を平均何個吸収したか直接評価する方法であり、これまで用いていた手法より精度の高い手法である。この再評価により、これまで用いていた実験パラメータは大きく間違っていないことが確認されたが、今回評価されたパラメータを用いても依然状態方程式の振る舞いは先行研究と異なる結果となった。この研究活動は日本物理学会第78回年次大会で報告した。また、フェルミ粒子を2次元系に閉じ込めるアコーディオントラップの開発も進めテスト運転を行い、改善点の検討を行った。 理論班では, 複素ランジュバン法を空間2次元以上の2成分インバランスフェルミ気体へ適用するコードを開発中であり、現在までの進捗状況を日本物理学会2024年春季大会で報告した。ボトルネックとなっている逆行列計算手法の最適化を進めているところで、今後は様々な手法を取り込みながら、今回の計算に適した計算手法を開発し、複素ランジュバン法による2次元・3次元のインバランス系の物理量の精密計算を目指す。加えて、スピンインバランスフェルミ気体のポーラロンの性質を利用し、冷却フェルミ原子気体に類似した希薄中性子物質の磁場中相図を得た。また、2次元系におけるBCS-BECクロスオーバーにおける相互作用有効距離(相互作用カットオフ)効果を調べた。これらの結果は, Physical Review C, Physical Review Aなどの国際誌に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験班では、極低温リチウム6原子気体を用いた超流動状態の実現、クーパー対の重心運動量測定の実現、ラジオ波と非弾性散乱を用いたスピン成分の制御まで至っており、FFLO超流動相を実現するための極低温スピンインバランス系の実験手順はほぼ確立した。これまでは3次元調和ポテンシャルで行ってきたが、今後2次元箱型ポテンシャルに極低温リチウム6原子気体を閉じ込める必要がある。このトラップを実現するための2次元光トラップ用の光源の導入は済んでおり、現在トラップ系の開発と評価を進めている。状態方程式評価の妥当性のテストも先行研究のあるスピンバランス系で進めている。しかし先行研究と異なる振る舞いを示しており、この原因を突き止めるのが喫緊の課題である。 理論班では、1次元系で機能することが確認できている複素ランジュバン法を高次元系へ拡張するにあたり、ボトルネックとなっている逆行列計算の高速化に取り組んでいる。具体的には、Sherman-Morrisonの公式やWoodburyの行列公式などを使った逆行列計算の高速化を試みている。システムサイズが小さい系でテスト計算したところ、単純な適用では高速化は難しいが、複数の手法を組み合わせることで高速化が期待できることがわかった。最適化を行った後、本格的な数値計算を行う予定である。また、必要に応じてトラップポテンシャルの効果も導入する。加えて、理論班ではスピンインバランスフェルミ気体が強磁場中性子星の希薄領域における物性を直接的に調べられることを示した。今後の冷却原子気体実験や複素ランジュバン計算の結果に基づいた学際的発展や応用も期待できることに加え、FFLOを示す他の系との類似性を探ることで相補的にスピンインバランスフェルミ気体の相構造に迫ることも今後可能であると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
実験班では、大きく二つの方策に従って進める。一つ目はスピンバランス系における定量評価である。本研究課題はスピンインバランス系における状態方程式の評価であるが、その定量性を担保するためには先行研究で理論と実験が一致しているスピンバランス系で我々の測定結果が一致する必要がある。しかし昨年度までの我々の実験では先行研究と異なる振る舞いを示しているため、これが実験系から生じている「物理」なのか、観測や解析から生じている「エラー」なのか原因を究明する事が喫緊の課題である。二つ目はアコーディオン光トラップを用いた2次元系の実現である。既に光源の導入とテスト運転は済んでいるが、トラップの安定性に課題が残っている。今後、安定度向上を実現し、スピンインバランス2次元系に極低温リチウム6原子を捕獲する。 理論班では、符号問題が厳しくモンテカルロ法による精密計算が困難となる2次元, 3次元系に対して、複素ランジュバン法を適用することで、インバランス系における物理量を精密計算する。1次元系では複素ランジュバン法が正しく機能することが確認できているため、次は複素ランジュバン法を高次元系に拡張することを目指す。ただし、複素ランジュバン法を遂行する際に必要な逆行列計算の計算コストが、次元と共に増えるため、効率的かつ高速に行う手法を開発する必要がある。現在はSherman-Morrisonの公式やWoodburyの行列公式などを使った逆行列計算の高速化に取り組んでいるが、今後はこれ以外の手法も取り込みながら今回の計算に適した手法を開発する。逆行列計算の開発を完了させた後は実際高次元系において複素ランジュバン計算を実行し、複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布を確認することで計算の正当性を確認し、実験と比較可能な物理量の測定を行う。また、FFLO相の兆候を捉える物理量の候補を考察する。
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