Project/Area Number |
23K22499
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Project/Area Number (Other) |
22H01228 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Institute of Science Tokyo |
Principal Investigator |
宗宮 健太郎 東京工業大学, 理学院, 准教授 (10582603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 弘毅 東京都市大学, デザイン・データ科学部, 教授 (40419693)
LEONARDI MATTEO 国立天文台, 重力波プロジェクト, 特別客員研究員 (90816448)
Zeidler Simon 立教大学, 理学部, 助教 (80773598)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | 重力波 / 干渉計 / 機械学習 / 複屈折 / 姿勢制御 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、低温重力波望遠鏡KAGRAで用いられるサファイア結晶鏡における非一様複屈折がもたらす問題の一つである、姿勢制御信号の不安定性に対する解決策の獲得であり、モダルモデル干渉計シミュレーションによる複屈折の影響の解析、線形制御および機械学習による複屈折の影響の除去、試験実験機による機械学習の実践、という3つのアプローチで構成される。同様の問題は常温望遠鏡でも見つかっており、次世代の望遠鏡でも課題となることが予想される。機械学習を用いたこれまでにない新しい手法でこの問題の解決の糸口を探り、重力波天文学の発展に貢献したいと考えている。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光干渉計の入射鏡の非一様性に起因する姿勢制御信号の乱れに対し、機械学習などを用いた新しい手法で正常な制御信号を回復することを目標としている。重力波望遠鏡KAGRAは世界初の大型低温干渉計であり、重力波を観測するためのテストマスはサファイア結晶でできている。熱伝導率の高いサファイアを用いることでレーザーからの入熱を冷凍機に輸送することができるだけでなく、極低温での機械損失が小さく熱雑音の軽減につながる一方で、結晶の非一様性が様々な問題をもたらしている。特に非一様な複屈折の影響が大きく、我々が開発してきた干渉計シミュレーションの結果から、0.1urad程度のオフセットが乗ることが分かっている。このオフセットはビームの照射位置に依存して変わるため、非定常な揺らぎとなる。そこで我々は、ビームの位置が変わってもオフセットが変わらないような制御信号の取得方法として、16分割光検出器の使用を提案している。一昨年度までに、16分割光検出器の出力の線形和を最適化することにより、オフセットを軽減することに成功していたが、今年度は分割数を4分割に下げてもオフセットを軽減できることを示すことに成功した。さらに、機械学習を用いた手法でもオフセットの軽減に成功し、その軽減幅を用いて線形制御と機械学習の比較を行うことにも成功した。今回は、人工的に生成した、空間周波数が高い複屈折マップと低い複屈折マップとそれぞれでシミュレーションを行い、高い方では、4分割・16分割共に線形制御がより高い軽減率を示し、空間周波数が低い方では、16分割では線形制御が、4分割では機械学習がより高い軽減率を示した。現時点では機械学習のコードに改善の余地が残されていると考えている。また、本研究では機械学習をデータ解析や非定常雑音の除去に利用する研究も進めており、それらに関しても成果を挙げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までにプロトタイプ干渉計を構築し、長さ制御を課した状態でウェーブフロントセンシング技術による姿勢制御信号取得に成功した。本研究で提案する16分割光検出器用の基板も完成していたが、16分割光検出器を用いたシミュレーションが予想以上の成果を挙げたため、4分割光検出器で試すことを優先した。その結果、4分割でもオフセットを軽減することができることが分かった。4分割光検出器の方が帯域が広いことなどを考えると、4分割で解決できる見通しがついたことで、実機への導入が早まったと言える。最終目標はKAGRAのITMの複屈折マップを用いて、分割検出器の最適化をして姿勢制御信号を取得することであるが、今年度は人工的に生成した2種類のミラーマップについて最適化を実施した。マップは空間周波数が高めのものと低めのものを用意し、それぞれについて4分割検出器と16分割検出器で信号を取得し、線形な組み合わせと、非線形を含む機械学習とで最適化を行った。機械学習は1次元のニューラルネットワークを用いた。最適化後の姿勢制御精度は、まず低周波のものは、16分割のNNが3e-10rad、線形制御が1e-13rad、4分割のNNが7e-11rad、線形制御が2e-10radとなった。4分割では機械学習が上回る結果となったが、自由度の多い16分割ではNNの精度が4分割より悪化しており、学習に改善の余地があることを示している。次に高周波のものは、16分割のNNが5e-8rad、線形制御が2e-11rad、4分割のNNが9e-8rad、線形制御が3e-9radとなった。どちらも線形制御の方が良い結果となっており、高周波になるとNNがうまく機能していないことが分かる。一方で、4分割でも高い精度で姿勢制御を実現することが分かったのは大きな成果で、研究開始前の予想を上回る結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
一部の条件下でニューラルネットワークが線形制御よりも悪い結果を出しているのは、学習方法に改善の余地があることを示している。これまで1次元のNNを用いてきたが、空間的な広がりを加味した二次元の畳み込みNNを導入することでさらなる改善を目指す。また、これまでの計算では縦横どちらかの自由度しか用いていなかったので、縦横同時に独立に姿勢制御信号を得ることを目指す。その上で、ミラーマップをKAGRAで実測された複屈折マップに置き換え、干渉計構成もKAGRAに合わせて、最適化を実施する。計算コストが上がるため、これまで用いてきたモダルモデル計算プログラムFINESSE2から、開発途上のFINESSE3へ移行する。この移行により、エルミートガウス光学モード数をこれまでの10次から30次程度まで上げることが可能となる。 研究当初の目論見では、4分割検出器を用いる場合は、機械学習が必須であり、線形制御では自由度が足りず最適化ができないと考えていた。現状、実際に4分割検出器の線形制御で最適化に成功しており、この事態を解析的に説明しようとモデル化を試みている。一つの可能性として、縦横同時制御を実施していないからという可能性もあるが、定数オフセットと重みづけを合わせることで自由度が足りるという可能性が浮上してきており、理論計算を引き続き行う。 昨年度後半から今年度にかけてシミュレーションにかなりの重点を置いているが、来年度後半は干渉計実験を再開する予定である。ITMに非一様な模様をつけ、従来法と新手法の姿勢制御信号の違いを実験的に検証する。 機械学習を重力波研究に応用する方法は姿勢制御以外にもあると考えており、姿勢制御を最重要課題としつつ、重力波のデータ解析を含めた他の可能性も幅広く検討する。
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