Project/Area Number |
23K22506
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Project/Area Number (Other) |
22H01235 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
長野 邦浩 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (90391705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田窪 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50423124)
隅田 土詞 京都大学, 理学研究科, 助教 (80624543)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥10,140,000 (Direct Cost: ¥7,800,000、Indirect Cost: ¥2,340,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
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Keywords | ベル不等式 / 量子力学 / LHC / フレーバー相関 / 素粒子物理学 / 量子もつれ / ATLAS実験 / B中間子 / 素粒子実験 |
Outline of Research at the Start |
量子力学の予言する「量子もつれ」と呼ばれる信じがたい性質は、近年、光子を用いた低エネルギーの実験において「ベル不等式」の検証を通じて証明された。しかし、物質を構成する素粒子であるクォークやレプトンによる高エネルギー素過程反応ではまだ確かめられていない。本研究では、宇宙開闢直後に対応する、人類が自らの手で作り出せる最高エネルギーにおいて、ベル不等式が成り立つかを世界で初めて検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究で新たに考案したベル不等式の検証実験で重要となるのは測定効率であり、これまで行えなかった低い横運動量領域まで、ミュー粒子、D*粒子の測定効率を改良する新規開発が必要となる。昨年度まででミュー粒子測定効率を制限しているハードウェアトリガーの改良に成功した。本年度では取得した実データで新トリガーの効率を詳細に測定することに成功し、効率上昇を実証できた。 しかし、2023年7月にLHC加速器の通常運転において真空漏れが起こり、その修理のため運転計画が遅れたため、本年度中には本研究が目指していた低パイルアップ特別運転が行われなくなった。そのため急遽、第2期運転での低パイルアップ特別運転、さらに、低エネルギー特別運転も加えたデータの解析を開始した。 ATLAS実験でこれらの特殊な第2期データからD*粒子とミュー粒子からB0の再構成を行ったのは初めてであった。データの理解を着実に進め、B0粒子対生成の候補事象を高い純度で選別することに成功した。また、B0対生成の候補事象の崩壊時間分布から背景事象による影響を補正してベル不等式検証に用いる非対称度をもとめる一連の方法を確立した。さらに、最大乖離点だけでなく非対称度の分布自体にフィットすることで最終的なベル 不等式検証の感度を大きく上げる方法も確立した。 以上のように、LHC加速器運転の遅れという想定外のことがあったが、代わりに第2期データを使用して、B0粒子対生成事象の再構成手法の確立、崩壊時間分布を用いたベル不等式検証の感度を上げた解析手法の確立など、当初の計画に沿った成果を上げることができた。研究結果について、日本物理学会1件、研究会1件にて、講演を行った。新ハードウェアによるトリガー運転、および、上記のデータ解析・手法の確立のため、共同研究者の辻川をCERN研究所に派遣した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を成功に導くための鍵の一つは、3年という長期の休止期間ののちパイルアップや衝突輝度が大きく上昇してトリガー・データ収集系などへの難易度が高くなった第3期運転において、まずその開始までにハードウェアトリガー改良を間に合わせ、データ取得まで新ハードウェアを完成させることであった。これについては当初の計画通りに成功、実データから測定を行って効率上昇も実証できており、達成した。 本年度にLHC加速器運転の遅れという想定外のことがあったが、代わりに第2期の特別運転データを使用して、B0粒子対生成事象の再構成に取り組んだ。当初は電荷の組み合わせにより背景事象の分布が大きく異なるなど想定外のデータの振舞いに苦しんだが、シミュレーションとの比較などから着実に理解を進めて解決することができた。また、B0対生成の候補事象の崩壊時間分布から背景事象による影響を補正してベル不等式検証に用いる非対称度をもとめる一連の方法を確立できたのも大きい。加えて、最大乖離点だけでなく 非対称度の分布自体にフィットすることで最終的なベル不等式検証の感度を大きく上げる方法も確立し、これで、実データからベル不等式検証までの一連のデータ解析手法のベースラインは出来上がった。最終結果を得るに向け、現在はさらに、ATLAS実験の標準D*再構成手法を大きく改善するべく、新しい手法のアイデアや低いトラック運動量領域へのさらに積極的な展開など、さらなる効率上昇を目指してデータ解析を進めている。 総じて見ると、本年度に当初見込んでいた研究成果は得られており、本年度の目標は達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第2期運転での低パイルアップ特別運転、さらに、低エネルギー特別運転も加えたデータの解析を完成させる。欠損横運動量と崩壊バーテックス位置を用いてD*とB0の運動学をフィットから解く、まったく新しい再構成手法を完成させることで、背景事象を抑えつつ候補事象数を増やして統計精度・感度を上昇させる。また、横運動量しきい値だけでなく、カイ自乗などのフィットに関連する変数や飛跡の横方向飛程など の変数も組み合わせて、ベル不等式検証感度を最大化する。平行して、系統誤差、特に背景事象からの系統誤差について評価をする。これらによりベル不等式検証のデータ解析のすべての手法を完成させ、実際にベル不等式の検証を行う。第2期運転データからの暫定結果を2025年3月の物理学会において公開することを目指して、研究を進める。 それと並行して、第3期LHC加速器運転において新ハードウェアトリガーによるデータ取得を行う。低パイルアップ特別運転が実施される場合は上記第2期運転データに加え、取得した第3期運転における低パイル アップデータを加えて、ベル不等式検証データ解析を迅速に進める。 本研究で得られた結果をATLAS国際共同実験論文として出版するための承認プロセスを開始する。ATLAS国際共同実験内のEditorial Boardメンバーと詳細に議論を進め、本研究のデータ解析や得られた結果についてその正当性が承認されるよう進める。ATLAS国際共同実験論文として執筆する。 研究代表者の長野は、総括・牽引、データ取得・トリガー運転、データ解析、系統誤差の評価、ベル不等式の検証、ATLAS国際共同実験論文の作成を行う。研究分担者の田窪は、データ取得・飛跡検出器運転、データ較正、ベル不等式検証感度の最大化、シミュレーション事象の生成を行う。
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