Project/Area Number |
23K22630
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Project/Area Number (Other) |
22H01359 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 18010:Mechanics of materials and materials-related
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
菊池 将一 静岡大学, 工学部, 准教授 (80581579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
關根 惟敏 静岡大学, 工学部, 准教授 (00765993)
藤井 朋之 静岡大学, 工学部, 准教授 (30377840)
蓮沼 将太 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (50709764)
塩澤 大輝 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (60379336)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,810,000 (Direct Cost: ¥13,700,000、Indirect Cost: ¥4,110,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥10,790,000 (Direct Cost: ¥8,300,000、Indirect Cost: ¥2,490,000)
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Keywords | 金属疲労 / 粉末冶金 / 力学特性 / 高輝度放射光 / 破壊力学 |
Outline of Research at the Start |
本研究の概要は,ミクロ強度の異なる組織をマクロに周期配置させた3次元周期ヘテロ金属を対象に,多機能化発現の根幹となる損傷分散概念を確立することである.とくに「強さ」と「しなやかさ」の両立という特異な力学特性を発現させるため,ヘテロ金属のミクロ・マクロ損傷の双方を捉えるための実験や解析を行い,3次元構造における損傷分散の時間的変化(4次元的損傷分散)を評価しモデル化する研究である.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,機械構造物の動的な破壊・破損を抑制するため,構造用金属材料のミクロ組織を周期的に制御して,損傷をマクロに分散させる概念の確立を目的とする.チェーン状に連なる高強度相が低強度相を包み込む構造(3次元周期ヘテロ構造)を創製し,3次元構造における損傷分散の時間的変化を司ることにより,「強さ」と「しなやかさ」を兼ね備えた多機能金属を創製することは重要である. 本年度は,昨年度に確立した方法を用いて結晶粒径を周期的に制御したヘテロ構造ステンレス鋼を創製し,研究対象とした.このヘテロ構造ステンレス鋼を高輝度放射光施設(SPring-8)に持ち込み,昨年度構築した回折コントラストトモグラフィ(Diffraction contrast tomography: DCT)システムによってミスオリエンテーションの連続測定を実施した.その際,検出限界を考慮し,結晶粒径を相似的に大きくした「粗大」ヘテロ構造ステンレス鋼のモデル材も作製することにより,準静的な引張下で粗大粒部のみならず微細粒部におけるミスオリエンテーションの直接計測を達成した.その結果,微細粒部のミスオリエンテーションは粗大粒部に比べて高いことが明らかとなった.これは,ヘテロ構造内のネットワーク状の微細結晶粒組織が優先的に損傷したことを裏付ける結果である.さらにヘテロ構造ステンレス鋼の疲労特性についても検討を行い,各相のミスオリエンテーション変化における応力繰返し数依存性についても明らかにした. ミスオリエンテーション測定は疲労き裂の発生と関連がある.疲労過程では,発生したき裂の進展挙動の評価も重要である.そこで,ステンレス鋼と疲労き裂が閉じやすいハイエントロピー合金の粉末を混合して焼結し,エントロピーが周期的に変化するヘテロ構造金属を作製した.その結果,所定の応力比条件において疲労き裂の進展抵抗が増大することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた通り,結晶粒径やエントロピーを周期的に制御する手法を確立しただけでなく,周期へテロ構造ステンレスの損傷分散挙動を明らかにしている.さらに,周期へテロ構造ステンレスの各相の損傷を個別に捉えるためのモデル材作製やその場損傷計測の実施にも着手できたことから,本課題は「おおむね順調に進展している」といえる. 高輝度放射光を利用したその場損傷計測システムについては,検出限界が存在する.本研究のヘテロ構造ステンレス鋼の微細粒部は2ミクロン程度であり,検出限界を下回っていた.そこで粉末冶金技術を駆使し,結晶粒径を相似的に大きくした「粗大」ヘテロ構造ステンレス鋼のモデル材を作製することにより,検出限界よりも大きい微細粒部の創製に成功した.このモデル材作製のアイディアによって,粗大粒のみならず微細粒部のミスオリエンテーションを直接計測することができ,ヘテロ構造内のネットワーク状の微細結晶粒組織に優先的に損傷が分散する事実を実証した.このような特異な損傷挙動は,周期へテロ構造ステンレスのマクロな降伏応力より高い応力域において生じたことから,並行して切欠きを有する周期へテロ構造金属の塑性疲労挙動評価にも着手している. さらに,疲労き裂の発生だけでなく,進展挙動についても検討を加えることができた.ステンレス鋼をベースに,同じfcc構造を有するハイエントロピー合金粉末と混合して焼結することにより,局所エントロピーを周期的に制御したヘテロ構造を創製した.このエントロピー周期ヘテロ構造に対して疲労き裂試験試験を行い,き裂進展下限界値やき裂開閉口挙動についても検討を加えることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様,ミクロ組織を周期ヘテロ構造制御した金属材料を研究対象とする.ヘテロ構造内の微細粒部への損傷分散は,周期へテロ構造金属のマクロな降伏応力より高い応力域において生じる.そのため,鋭い切欠きを設けることにより応力集中を引き起こし,切欠き底近傍のみを塑性変形させる条件で疲労試験を実施する.なお,本研究課題では,稜間角の異なる複数の圧子を用いたインデンテーション法(二圧子法)によって,周期ヘテロ構造金属内の各相の局所的な応力-ひずみ関係を実験的に同定し,各相の降伏強度を定量化している.これらの値をFEMモデルに組み込み,実験と解析の両面から応力・ひずみ分配挙動と疲労き裂発生位置を関連付けることを目指す. また,粗大粒部と微細粒部の形成割合がヘテロ構造金属の力学特性に及ぼす影響についても検討を加える.具体的には直径の異なるステンレス鋼とハイエントロピー合金の粉末を用いて,各投入量を変化させて焼結させる.微細粒部の形成割合が変化した際の応力・ひずみ分配挙動を明らかにすることを通して,ヘテロ構造金属の力学特性を明らかにする.また,ステンレス鋼とハイエントロピー合金の粉末の直径を入れかえれば,「逆ヘテロ構造金属」を作製することもできる.逆構造の場合,当初の材料創製コンセプトとは異なるため,応力・ひずみ分配の程度が下がり,良好な力学特性を発現しないと予想している.両構造の力学特性を比較することにより,周期ヘテロ構造金属の損傷集中メカニズム解明を通して,学術的観点からヘテロ構造制御による材料多機能化指針の明確化を目指す.また,準静的な引張試験のみならず,疲労き裂進展試験を行い,ヘテロ構造化による疲労き裂進展抵抗増大の指針の明確化にも取り組む.
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