摩擦生成ナノ界面トライボ被膜の分析と高機能トライボ被膜の為のDLC炭素構造の解明
Project/Area Number |
23K22660
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Project/Area Number (Other) |
22H01389 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 18040:Machine elements and tribology-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村島 基之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70779389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲津 仁志 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00394883)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,460,000 (Direct Cost: ¥14,200,000、Indirect Cost: ¥4,260,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥16,640,000 (Direct Cost: ¥12,800,000、Indirect Cost: ¥3,840,000)
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Keywords | 輸注添加剤 / DC / トライボロジー / 油潤滑 / 添加剤 / トライボ被膜 / 油中添加剤 / 摩擦面リアクター / DLC膜 |
Outline of Research at the Start |
機械潤滑油中に含まれる添加剤は,金属しゅう動面の摩擦により摩擦・摩耗特性に優れる反応生成物(トライボ被膜)を形成する一方で,低摩擦・耐摩耗性に優れる炭素系薄膜(DLC膜:diamond-like carbon)上では低摩擦被膜を形成しないことや異常摩耗を引き起こすことが報告されている.従って,本研究では,DLC膜の摩擦・摩耗特性を維持しつつ高機能トライボ被膜の成長を導く革新的な炭素構造の設計指針を実際に摩擦試験を実施することで提案する.
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Outline of Annual Research Achievements |
機械潤滑油中に含まれる添加剤は,低摩擦・耐摩耗性に優れる炭素系薄膜(DLC膜:diamond-like carbon)上ではトライボ被膜を形成しないことや異常摩耗を引き起こすことが報告されている.従って,次世代の省エネルギ機械の為には,DLC膜の摩擦・摩耗特性を維持しつつ高機能トライボ被膜の成長を導く革新的な炭素構造の設計が必要である.ここに対して本年度の研究ではDLC膜をシリコンウェハ上に成膜し,それに対してAFM油中摩擦試験を実施した.その結果,窒素を添加したDLC膜上においてのみZDDP由来のトライボ被膜が形成されることを明らかにした.また,その成長形態を明らかにするため,AFM摩擦試験における各摩擦サイクルにおける形状像からの成長量を測定した.加えて,各摩擦サイクルにおけるSEM/EDSを用いた元素組成測定を実施した.その結果開始,100サイクルまではトライボ被膜の成長はほとんど見られないが,100サイクルを超えると徐々に成長するという成長形態が明らかになった.また,最もトライボ被膜の成長が確認されたDLC膜においては,平均して4x105 nm3/cycleのトライボ被膜の成長速度であることが明らかにされた.加えて,各サイクルのSEM/EDS分析結果より,トライボ被膜の組成は摩擦サイクルにより変化していくことが明らかとなった.具体的には,100サイクル時点では,硫黄分の多いトライボ被膜が形成されることが明らかとなった.さらに摩擦試験を継続すると,硫黄の割合が低下し,リン成分が多く検出される結果となった.一方で,トライボ被膜の成長速度が遅いDLC膜上ではこの元素割合は摩擦サイクルによって変化しなかった.結果として,摩擦初期に硫黄分を多く含むトライボ被膜の形成がその後に形成されるトライボ被膜の成長に重要であることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究では,ボールオンディスク型の摩擦試験機を用いたマクロ摩擦試験を実施したところ,窒素を含有したDLC膜において良好なトライボ被膜の成長が確認された.また,成膜条件を変化させたところ,そのトライボ被膜の形成量が変化することが明らかになった.本年度は主に,これらのDLC膜に対してAFM摩擦試験機を用いたナノスケール摩擦試験を実施した.従来のマクロ摩擦試験手法では,形成されたトライボ被膜が表面粗さ由来の別の突起上で反応が進行したり摩耗したりする.そのため,平均的なトライボ被膜の形成特性を明らかにすることは可能であるが,具体的にどのようなプロセスによりトライボ被膜が成長するかを明らかにすることは困難であった.本年度は,AFMのナノ接触点における荷重やすべり速度を一定にして試験をすることにより,その成長形態を明らかにした.その結果,最もトライボ被膜の成長が促進されたDLC膜においては,平均して4x105 nm3/cycleのトライボ被膜の成長速度であることが明らかにされた.加えて,各サイクルのSEM/EDS分析結果より,トライボ被膜の組成は摩擦サイクルとともに変化していくことが明らかとなった.具体的には,100サイクル時点では,硫黄分の多いトライボ被膜が形成されることが明らかとなった.さらに摩擦試験を継続すると,硫黄の割合が低下し,リン成分が多く検出される結果となった.一方で,トライボ被膜の成長速度が遅いDLC膜ではこの元素割合は摩擦サイクルによって変化しなかった.結果として,摩擦初期に硫黄分を多く含むトライボ被膜の形成がその後に形成されるトライボ被膜の成長に重要であることが明らかとなった.本研究は当初予定されていた研究進捗に加え,その成長速度とそれに対応する元素組成までを明らかにすることに成功しており,当初計画以上に研究が進捗していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究においては,窒素を含有したDLC膜であれば,AFMナノ摩擦試験においてもZDDP由来のトライボ被膜が成長することを明らかにした.また,初期に硫黄成分を多く含むことが,トライボ被膜の成長を促進するために重要であることが明らかになった.今後の研究においては,まず,「成膜条件を変化させた,多種のDLC膜に対するAFMナノ摩擦試験を実施」する.そして,次に,各DLC膜の特徴を,XPS,Raman分光分析,ナノインデンテーション試験により明らかにする.具体的には,DLC膜に含まれる窒素含有量,酸素含有量,炭素の結合状態の一つであるsp2結合とsp3結合の比であるsp2/sp3比,最表面硬さとヤング率を測定する.これらのパラメータがZDDP由来トライボ被膜の成長量にどのような影響を与えるかを最終的に明らかにする.
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Report
(2 results)
Research Products
(6 results)