Project/Area Number |
23K22711
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Project/Area Number (Other) |
22H01440 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 20020:Robotics and intelligent system-related
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Research Institution | Institute of Science Tokyo |
Principal Investigator |
倉林 大輔 東京工業大学, 工学院, 教授 (00334508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 憲一 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (80420248)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
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Keywords | 自己組織化 / 群体性藻類 / 自律分散システム |
Outline of Research at the Start |
本研究では,ボルボシン藻類と総称される,単細胞から約1万の多細胞の間で多様な細胞数構成を取る藻類を対象とし,複数の自律型構成素子が物理的に結合した際の状況適応的な行動制御手法を明らかにする.制御システムの観点から,脳も神経系も持たない群体がいかにして運動機能や適応的な行動選択を実現しているのかについて,生物の具体的な観測とシステム工学的な構成的手法を両輪として解明を進める.ロボットを用いた構成的検証により,得られた知見を新しいサーバーフィジカルシステム設計論へフィードバックする.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新陳代謝可能な人工システムの実現を志向し,群体を形成する生物が持つ自律分散的な構造体自己形成およびその合目的的制御手法の解明を行う.具体的には,ボルボシン藻類と総称される,単細胞から約1万の多細胞の間で多様な細胞数構成を取る藻類を対象とし,その制御システムとしての群体形成・維持と鞭毛を用いた群体行動の自己組織的制御手法を明らかにする.自律素子集団による適応的な自己組織行動システムの設計論を提案するとともに,工学として再構成可能とすることを目的とする. 2023年度においては,生物の動態観測とシステム工学的な構成的手法を相補的に用いて,複数の自律素子から構成される水中移動群体の合目的的挙動システムについて解析を進めた.ボルボシン藻類の遊泳観測に基づくダイナミカルモデルの構築を行い,基礎的な制御モデルの立式およびシミュレーションによる挙動確認を可能とした.具体的には,モデル生物において観察される走光性転向遊泳,および走光性の正負切り替えが生成可能であることを示した.また,群体挙動を振動子モデルとして捉え,位相縮約表現を介した状態推定・制御介入を行うことで,直接的・記号的な相互通信などを必要としない群体行動の自己組織化が可能であること,およびモデル生物を模した感覚器の位相配置によって,頑健な遊泳行動が可能となることを示した.また,ロボットシステムとしての実装に向けて相互作用のための情報交換手段等について予備的な検討を行った.具体的には,遊泳力を生成する動作機構に受動関節を組み入れ,その挙動を計測しフィードバックを行うことで,流体中の群体全体の挙動を反映した情報が得られるとの見通しを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究はおおむね順調に進展した.2022年度に整備したモデル生物の挙動計測系および計算機環境を活用し,複数の自律素子から構成される水中移動群体の合目的的挙動システムについて解析を進めた.特に個体および群体における遊泳動作の状況依存的応答のモデル化,および個体応答と群体の合目的的行動生成の調和システム解析について成果を得た.具体的には,モデル生物において観察される走光性遊泳について,位相縮約を用いた立式による簡潔な表現を用いることで,パラメタおよび状態量が遊泳挙動に与える影響を明らかにした.その中で,外部入力である光の伝達遅れを表す位相変位量による転向遊泳速度の変化や,走光性の正負切り替え生成について示した.また,モデル生物を模した光感覚器の位相配置によって,頑健な遊泳行動が可能となることを示した.これらのことは,群体を構成する自律モジュールが群体の挙動を位相という簡潔な状態量を介して知覚・制御可能となりうることや,外界知覚に対する身体の物理的設計によって遊泳挙動の頑健さを変化させうることを示しており,合目的的挙動生成に対する設計指針を得ることができた.これらの成果に基づき,ロボットシステムとしての実装に向けて相互作用のための情報交換手段等について予備的な検討を行った.具体的には,遊泳力を生成する動作機構にあえて受動関節を組み入れ,その挙動を計測しフィードバックを行うことで,流体中の群体全体の挙動を反映した情報が得られるとの見通しを得た.これらの成果は,国際会議講演2件および国内口頭発表5件として公開されており,おおむね順調な進展状況であると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,ボルボシン藻類と総称される,単細胞から約1万の多細胞の間で多様な細胞数構成を取る藻類を対象とし,複数の自律型構成素子が物理的に結合した際の状況適応的な行動制御手法を明らかにする.群体を構成する細胞(素子)の自己組織的かつ適応的な行動変容について,生物の動態観測とシステム工学的な構成的手法を相補的に用いて解明を進める.2022年度から2023年度の間に,ボルボシン藻類の遊泳を観測可能な計測システムの構築,生物学的実験を介した知見の収集,および遊泳挙動に関するダイナミカルモデルの構築を行い,基礎的な制御モデルの立式およびシミュレーションによる挙動確認が可能となっている.2024年度は,2023年度までに得た知見に基づき,モジュラー型の小型水中ロボットを設計・試作し,藻類群体が発揮する合目的的遊泳行動と,その頑健性についての解析と実現を進める.研究代表者の倉林と研究分担者の若林が密に連携し,生物である藻類群体が生息する環境の物理的性質と,実装するロボットのそれとの差異に注目しながら,目的とする機能発現に共通する物理的相互作用についてモデル化・設計を進める.実機実験機の実装にあたっては,遊泳力を生成する動作機構にあえて受動関節を組み入れ,その挙動を計測しフィードバックを行うことで,流体中の群体全体の挙動を反映した情報が得られるとの見通しを得た.これに基づき,構成素子間で直接的な情報交換を行うことなく,群体の物理的挙動から秩序的行動を生成可能な実機実験機の製作を進める.この実験機による群体を実験水槽で遊泳させ,モデル生物から得た知見がスケールおよび動作機構の異なるロボットシステムにおいて有効か検証を行う.これらにより,自己組織化のカギとなる特徴量・特徴行動を明確にし,合目的的行動生成メカニズムの解明へ歩を進め,ロボットシステムとしての実体機能発現に資する知見を獲得する.
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