Project/Area Number |
23K23057
|
Project/Area Number (Other) |
22H01789 (2022-2023)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26030:Composite materials and interfaces-related
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
富永 洋一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30323786)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 博明 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授 (60176667)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
|
Keywords | 固体高分子電解質 / Liイオン二次電池 / 電極/電解質界面 / 表面処理 / Liデンドライト |
Outline of Research at the Start |
Liイオン伝導性に優れるカーボネート型の固体高分子電解質(SPE)を用いた全固体電池の創出を目指し、電気化学的に最適化された電極/SPE間の接合界面を形成する電極表面改質技術を開発する。電極表面への化学処理や物理蒸着により、SPEとの接合界面を改善し、Liデンドライトの生成を抑制する。電極の表面分析や各種特性評価を通じ、カーボネート型SPEに適した正・負極表面改質の処理条件を明らかにする。最終的には、電池特性に優れる電極/SPE界面の化学的・形態的状態を解析し、その構造モデルを決定する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、カーボネート型の固体高分子電解質(SPE)と無機フィラーからなる複合膜をモデル電解質としたSPE型電池の特性改善につながる電極の表面処理・改質法を明らかにすることを目指している。これまでに、リン酸鉄リチウム(LiFePO4, LFP)正極表面への大気圧プラズマ処理によってLFP表面のカーボン層の一部にアミド基などの極性基が導入されることが分かった。Li負極の表面改質には、大気非暴露で操作が可能な真空蒸着装置を用い、物理蒸着法によりアクリル酸などのモノマーを被覆後に重合させ、Li表面に高分子の極薄膜を形成した。Li表面において熱的・力学的に安定で、SPEの還元分解およびLiデンドライトの生成を抑制する人工SEIとしての被膜形成を目指した。一方の電解質には、ポリエチレンカーボネート(PEC)とLi塩からなるSPEをモデルとして用いた。Li負極とPEC末端OH基との反応を抑制するため、PEC末端のアセチル化を行い、Li負極との反応抑制だけでなく、SPEの耐熱性や電池特性も改善することが分かってきた。本年度は、SPEの最適化(高分子構造や添加剤の影響)を検討した。アリル側鎖(AGE)を有するエチレンカーボネート(EC)/エチレンオキシド(EO)共重合体を合成し、架橋構造とイオン伝導性や力学特性との関係を明らかにした。AGE含有量4%の共重合体に対してTiO2を充填した複合型電解質では、AGE含有量4%の共重合体に対してイオン伝導性および力学的強度を改善し、電池充放電サイクル性の改善にも貢献することが分かった。さらに、有機系フィラーとしてサクシノニトリル(SN)を用い、PEC/LiFSI電解質への添加効果を検討した。SN添加量が130 mol%のときにイオン伝導度が最も高くなり、SN未添加試料と比較して約100倍増加することが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、固体高分子型電池の特性改善のためのSPEの最適化(高分子構造、添加剤の影響)を検討した。イオン伝導性に優れる一方で力学的強度に劣るエチレンカーボネート(EC)とエチレンオキシド(EO)からなる共重合体に架橋構造を導入することで力学的強度を改善することを目的とし、アリル側鎖(AGE)を有するエポキシドとの共重合化を試みた。ECとEOのモル比をほぼ1:1として固定し、AGEの含有量を4%~29%まで変えた共重合体を複数合成し、そのイオン伝導特性や電池特性を評価した。その結果、AGE含有量が10%を下回る共重合体のLiFSI電解質はイオン伝導性に優れる一方で、力学的強度の向上は限定的であった。一方、AGE含有量が10%を上回る共重合体のLiFSI電解質は、イオン伝導性は低下したものの、力学的強度の大幅な改善が見られた。さらに、無機系フィラーとしてTiO2を充填した複合型電解質では、AGE含有量4%の共重合体に対してイオン伝導性および力学的強度を改善し、電池充放電サイクル性の改善にも貢献することが分かった。また、有機系フィラーとしてサクシノニトリル(SN)を用い、PEC/LiFSI電解質への添加効果を検討した。SN添加量が130 mol%のときにイオン伝導度が最も高く、SN未添加試料と比較して約100倍増加、ガラス転移温度は-60 ℃にまで低下することが分かった。FT-IR測定からは、130 mol%添加試料ではC≡N伸縮振動とC=O伸縮振動に基づくピークが2279 cm-1、1726 cm-1にそれぞれ見られ、C=Oのピークの形状にはSN添加によるわずかなピークシフトが見られた。この変化はLiと配位していないC=OがSNによって増加したためであることが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き各電極表面処理の条件および無機フィラーを用いた複合型電解質の作製および最適組成に関するデータをもとに、SPE型固体電池としての最適系を見出す。Li負極の表面分析については、大気非暴露で測定する必要があるため、NIMSの蓄電池基盤プラットフォームの大気非暴露設備を利用し、SEM/EDSによりLi表面に形成されたポリマー薄膜の被覆状態の観察および元素分析を行う。続いて、正・負極およびSNFを複合化させたSPE膜からなるセルの電気化学的評価を行う。CV測定により各界面における酸化還元挙動を、インピーダンス測定により各抵抗成分の分離・解析を行う。様々な条件で作製した正・負極の表面解析結果とインピーダンス挙動との相関を明らかにする。電池作製・充放電特性評価および電極/SPE界面構造解析・モデル決定については、正・負極およびSPEを用いたコインセルを作製する。電池の充放電挙動およびサイクル特性評価を行い、得られるデータを電極/SPE界面の構造解析につなげる。接合後の電極/SPE界面は強く密着していると考えられ、剥離してその表面を分析することは困難なため、接合したままの界面を分析・評価する方法を検討する。NIMS蓄電池基盤プラットフォームの各種分析設備を利用し、集束イオンビーム(FIB)加工を備えたSEMにより各界面の切断面の微細構造観察を行い、Liデンドライトの有無を確認するほか、走査型オージェ電子分光測定(AES/SAM)によりFIB加工断面における元素組成や化学結合状態を明らかにする。これらの分析結果をもとに、最終的には電池特性に優れる電極/SPE界面の構造モデルを決定する。
|