Project/Area Number |
23K23218
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Project/Area Number (Other) |
22H01950 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29020:Thin film/surface and interfacial physical properties-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 宜昭 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (00432518)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,330,000 (Direct Cost: ¥14,100,000、Indirect Cost: ¥4,230,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥15,470,000 (Direct Cost: ¥11,900,000、Indirect Cost: ¥3,570,000)
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 |
Outline of Research at the Start |
太陽系形成の最初期の段階である星間分子雲では、ガスや塵が漂っており、それら塵表面上で原子から分子、さらに生命の材料となりうるような有機分子までもが形成されたと考えられている。そのようにしてできた有機分子が隕石や宇宙塵によって地球にもたらされて、地球上でさらに化学進化を続けて生命に至ったというシナリオが提案されている。そこで太陽系形成以前に起源がある隕石に含まれる地球外有機分子を原子間力顕微鏡によって初めて分析する。アミノ酸やアミノ酸前駆体など生命に関係する有機分子を単分子レベルで同定して、生命起源の謎に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、隕石に含まれる地球外有機分子を原子間力顕微鏡(AFM)によって直接可視化して、個々の有機分子を同定することを目的とする。そして、アミノ酸・アミノ酸前駆体・その他有機分子など、これまでの手法で確認されていない有機分子の存在を明らかにすることを目標とする。これまで、隕石中の有機分子の同定には質量分析装置が主に用いられてきた。質量分析では、同じ分子量を持つ構造異性体が原理的に区別できない。隕石中で見つかっている有機分子は分子量が数100を超えるものがあり、構造の同定が困難なものがあった。アミノ酸前駆体の有力候補である複雑有機物もその一例である。また、質量分析法では、数が多い有機分子が優先的に検出され、検出限界未満の数しかいない有機分子は存在自体の確認が不可能である。AFMでは1つひとつの有機分子を観察するので、その構造が同定できれば、その分子が確実に存在していることが証明できる。新しい有機分子を1つ同定するごとに、隕石中に含まれる有機分子のリストに加えることができる。 現有のAFMによって、隕石など地球外の試料から抽出した有機物の観察を引き続き行った。水晶振動子型の低温超高真空AFMを用いているが、力の検出感度が低いので、バンド幅を狭くしてスキャン速度を遅くして画像を取得した。有機溶剤から抽出した有機物やその残渣を評価した。さらに、できるだけ多くの有機分子の高分解能観察を行って、統計的な議論を行う必要があるため、高力感度の装置開発を行った。レーザー干渉によって、カンチレバーの変位を検出する方式であるので、水晶振動子型のAFMと比較して、高い力感度を有するので、イメージングを高速化することができる。開発したAFMによって、液体ヘリウム温度において、原子分解能が得られることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの試料から抽出した有機物を水晶振動子型の低温超高真空AFMで分析した。シリコンの基板に塗布した有機物を超高真空中で瞬間加熱することによって、金属基板に吸着させてAFMイメージングした。残渣の試料においては、地球由来の有機分子が多く確認された。試料の表面積が大きいためであると考えられる。一方、有機溶剤から抽出した有機物においては、分析がより容易であることがわかった。本来残渣として分類される有機物も、有機溶剤から検出されるということがわかった。 一方、隕石に含まれる有機分子のような天然の有機分子は分子ごとに様々な形状をしている。したがって、スキャン速度を上げて、時間あたりにできるだけ多くの画像を取得して有機分子の構造を決定していく必要がある。そこで、現状の装置と比較すると力感度が100倍以上であるAFMを引き続き開発した。液体ヘリウム温度において、AFMの原子分解能が得られることを確認し、十分な性能を有していることを確認した。レーザーを用いたカンチレバーの変位検出を行うための光学系が液体ヘリウム温度でも駆動することが確認できた。また、除振機構を調整しながら、AFMの信号雑音比を評価することによって、冷却性能を犠牲にせずに除振が適切に行われていることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
有機溶剤から抽出した地球外有機物を中心に、低温超高真空AFMでイメージングして分析を行う。隕石由来、リュウグウ由来の有機物の形状を比較することによって、星間分子雲における化学進化に関する理解を深める。 さらに、新しく開発した高力感度な低温超高真空AFMを用いて、有機物の高分解能観察が高速に行えることを確認する。高速な高分解観察が達成されれば、探針先端に単分子を付着させるなどで空間分解能を向上させたAFM動作によって、地球外有機物の高分解能観察を行う。従来の水晶振動子方式と比較して、力感度が向上している効果が望めるので、それを評価するために、スキャン速度を速くしても、高分解能観察が行えることを実証する。それにより、より多くの有機物の形状を分析して統計的な情報を得る。
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