Project/Area Number |
23K23392
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Project/Area Number (Other) |
22H02124 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34030:Green sustainable chemistry and environmental chemistry-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
小川 昭弥 大阪公立大学, 研究推進機構, 特任教授 (30183031)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥12,090,000 (Direct Cost: ¥9,300,000、Indirect Cost: ¥2,790,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | グリーン合成 / 医薬品関連分子 / 常圧酸素酸化法 / メタルフリー / ワンポットプロセス / イミン / 医薬関連分子 / アミン |
Outline of Research at the Start |
本研究では、アミン類のイミン類への酸化的脱水素反応を、サリチル酸とその誘導体を有機触媒とする常圧酸素(空気)酸化法によって達成し、さらにこの反応系を一連の医薬関連分子の合成に応用する。本メタルフリー酸化法は反応系がシンプルであるため、多くの有機反応を連続して行うことが可能と期待され、one-potで医薬品関連分子を合成し、環境にやさしいものづくりを実践したい。具体的には、1) β-ラクタム誘導体のグリーン合成法の開発とジアステレオ選択的アミノ酸合成への応用、2) 多段階酸化過程を経る複素環合成のone-pot化、及び 3) 検査試薬となる発光性分子のグリーン合成法の開発 について検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に従って、本年度は以下に示す研究成果を得た。(課題1)イミンとケテンの[2+2]環化反応の汎用性を確立する目的で、本反応への不安定イミンの適用について詳細に検討した。サリチル酸誘導体を有機触媒とするメタルフリー条件でのイミンの酸化的脱水素二量化反応により、不安定イミンを調製し、これらを単離精製することなく、one-potでケテンとの反応を行った。昨年度に、不安定イミンからのβ-ラクタム合成に対して、いくつかの基質で反応がある程度進行することを見出したので、本年度は不安定な対称イミンについてβ-ラクタムの構築を検討した。その結果、系中で発生する水をモレキュラシーブに吸着させることで、広範囲の不安定対称イミンからβ-ラクタムが合成可能なことを見出した。合成したβ-ラクタムは単純な構造のものも含めて新規化合物であり、本手法はβ-ラクタム系医薬品の合成に広く利用されるものと期待している。(課題2)アミンの酸化的イミン合成、分子間縮合反応、環化反応、および芳香族化反応の4段階の反応のone-pot化に取組み、医薬品の重要な基盤骨格であるキナゾリンの高選択的合成に成功した。本反応では、2種類のアミンを酸化的に縮合させるが、ここで重要なのは一方のアミンのみを高選択的にイミンに変換する必要がある。既存の合成法ではこの選択性が低かったが、本年度の研究ではこの選択性を大きく向上することに成功し、その結果キナゾリンのone-pot合成に成功した。(課題3)昨年度までの研究で明らかにしたトリアリールメタンのメタルフリー合成法をバイオセンサーとして利用可能なローダミン誘導体短工程合成に応用した。その結果メタルフリー条件下でローダミン誘導体を中程度の収率で合成できることを見出した。(課題4)課題1と2について大量合成を視野に、最も安価なサリチル酸を有機触媒とするグラムスケール合成を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では医薬品関連分子として、β-ラクタム(課題1)、キナゾリン(課題2)、ローダミン(課題3)、および三置換ピリジン(課題4)などの有用分子の構築を、サリチル酸誘導体を有機触媒とするメタルフリー酸化触媒反応を利用して合成するものである。本年度は特に、課題1と2について、重点的に取り組んだ。課題1では従来法ではβ-ラクタム合成に利用困難であった不安定イミンについて詳細に検討し、不安定対称イミンを系中で調製し、単離することなくone-potでケテンと反応させることで多くの新規β-ラクタムの合成に成功した。課題2では、4段階の工程が必要なキナゾリン合成について、既存法では逐次反応によって実施されていたのに対して、本研究では4段階のone-pot化に成功した。以上の2つの研究成果は、医薬品の代表的基盤骨格であるβ-ラクタムとキナゾリンをメタルフリー条件下、短工程で合成することができるとともに、数多くの新規誘導体の合成に成功した。さらに、課題3では、バイオセンサーとしての利用が可能な発光性のローダミン誘導体のメタルフリー合成に取組み、現段階では中程度の収率ではあるが、短工程での合成に成功した。今後、反応条件を精査することで収率向上が見込まれる。さらに本手法はローダミンの酸素を他のヘテロ原子に置き換えた発光性分子の開発へと展開可能であるので、次年度以降に検討したいと考えている。以上のように本研究では、重要な医薬品関連分子をメタルフリー条件下、one-potで合成することが可能である。医薬品関連分子では金属残渣の混入は安全性と製造コストの観点から避けなければならない。従ってメタルフリー条件は今後の医薬品合成の鍵となる。そこで、課題4では、本メタルフリーone-pot合成法のプロセス化学的展開を検討した。すなわち、最も安価なサリチル酸を有機触媒とする医薬品分子の合成を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
各課題の今後の推進方策について以下に示した。(課題1)本年度の研究成果に基づいて、アミン類のサリチル酸触媒による酸化的脱水素により、2種類のアミンから非対称不安定イミンを合成し、ケテンとの[2+2]環化付加反応により、さらに多様なβ-ラクタム誘導体のメタルフリー合成に展開する。さらにβ-ラクタムのジアステレオ選択的合成に取り組むとともに、立体選択的に調製されたβ-ラクタムの加水分解により、ジアステレオ選択的なβ-アミノ酸の合成を検討する。 (課題2)アミンの酸化的イミン合成を基軸反応とするキナゾリン誘導体の高選択的合成に成功したので、本メタルフリーone-potキナゾリン合成法の環境調和性を詳細に検討する。すなわち本反応について、環境調和性の指標であるE値やRME値を求め、本手法の環境調和性を評価するとともに、プロセス化学的な展開を行う。また発光性を有するキナゾリン誘導体の構築をさらに詳細に検討し、本手法の汎用性を検討する。(課題3)ローダミンを体内に投与することを考えると、メタルフリーによる本サリチル酸触媒系は、金属の混入がなく、バイオセンサーの開発に有効な合成手法を提供できるものと大いに期待される。そこで今後は、シンプルなローダミン誘導体の高収率合成と官能基を有する発光性分子の合成へと展開する。(課題4)本メタルフリー酸化触媒系の環境調和性を高め、かつ大量合成への展望を明確にすることが次に重要となってくる。そこで、大量合成を視野に、最も安価なサリチル酸を有機触媒とする医薬品などの機能性分子のグラムスケール合成を確立する。すなわち、ジペプチド合成法となるUgi反応、グアニン四重鎖認識分子である三置換ピリジンの合成などの反応について、環境調和性の指標であるE値やRME値の改善を目指すとともに、サリチル酸類縁化合物を触媒に用いた酸化触媒系の開発に展開する。
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