Project/Area Number |
23K23418
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Project/Area Number (Other) |
22H02150 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35020:Polymer materials-related
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
吉岡 太陽 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (90596165)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥16,770,000 (Direct Cost: ¥12,900,000、Indirect Cost: ¥3,870,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,890,000 (Direct Cost: ¥5,300,000、Indirect Cost: ¥1,590,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
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Keywords | 再生可能資源 / シルク / 紡糸 / ナノフィブリル / 高タフネス / 持続可能材料 / 人工シルク繊維 / 人工シルク紡糸 / フィブリル階層構造 / 構造転移 / X線散乱 / 階層構造 / 再生シルク / 高タフネス繊維 / 脱石油材料 / フィブロイン |
Outline of Research at the Start |
(以下、継続課題のため初年度に記した概要をそのまま示す) 高タフネス性バイオ素材であるカイコやクモの糸(総称:シルク)は、脱炭素社会の構築に繋がる次世代構造材料候補として強く期待されている。しかし、これらの糸を溶解させて得られる再生シルクタンパクや、遺伝子組換え技術を用いて創り出される人工シルクタンパクから、天然繊維に匹敵する高タフネス繊維を紡糸する技術は達成されていない。本研究では、天然シルクの高タフネス性発現に重要な役割を果たすフィブリル階層構造を人工紡糸繊維に付与する技術を開発し、構造材料として実際に使える高タフネス性再生シルクの創製を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、天然シルクと同様のフィブリル階層構造を有する人工シルク繊維の紡糸技術を開発し、人工シルク繊維の強度ならびにタフネスを向上させることにある。目的達成に向け、(1)天然シルクのフィブリル階層構造とその形成機構の解明、(2)フィブリル階層構造と物性との因果関係の解明、(3)人工シルク繊維への導入技術の開発、の3つの課題解決を相補的に進める。 初年度は、課題(1)を中心に取り組み、高タフネス性を特徴とするミノムシシルクのフィブリル階層構造において、繊維中心から外層にかけてのフィブリル径の傾斜異方性構造を見出した[1]。シルクの構造と物性の因果関係を探る理論研究においては既に傾斜異方構造が理論的に予測されており [2]、傾斜異方構造が物性に及ぼす影響の解明は、シルクの構造-物性相関理解の大きな進展に繋がると期待される。本年度は、この傾斜異方構造が物性に及ぼす影響の解明に向け(課題2に対応)、ビーム径が繊維直径の約1/30となる直径150nmφのナノX線ビームを用いた繊維延伸過程のダイナミクス散乱解析を欧州放射光施設(ESRF, フランス)との共同研究として計画し、実験ビームタイム獲得に向けた実験計画書の作成と応募を行った。また、実験に適した試料作製法の検討に着手した。 次に、当研究所にて継代飼育を行っている野蚕(エリサン)の幼虫を用い、絹糸腺の延伸過程で生じるシルクタンパク質の構造形成機構を調べ、構造形成機構の一部を明らかにした。また、課題(3)についても着手した。 [1] T. Yoshioka et al., Nano Lett. 2023, 23(3), 827. [2] F. Fraternali et al., Nanomaterials 2020, 10, 1510.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(1):欧州放射光施設(ESRF, フランス)での2024年度中の実験ビームタイム獲得に向け、シルク繊維を延伸した際の構造変化を150nmφのX線ビームを用いた広角および小角X線散乱により時分割解析を行うための実験計画書を申請した。試料の厚みはビーム径と同程度の厚みまで薄くし、X,Y,Z方向の空間分解能を合わせる必要があるため、本年度は薄切試料の作製条件を検討し、ESRFのナノビームを用いた試行を行うことで、最適な試料厚みとその作製条件を得た(T. Yoshioka et al., ESRF Experimental Report No. SC-5259)。 次に、天然シルクのフィブリル階層構造形成において、吐糸による延伸作用が働く前段階での自己組織化ナノフィブリル前駆構造の形成とその後の吐糸延伸過程での構造転移が極めて重要な機構であることを実験的に捉えた。とくに重要な成果として、無配向のα-ヘリックスが延伸により配向β-シート構造へと転移する臨界配向度を明らかにし、天然シルクの構造形成機構の理解を大きく進展させた。 課題(2):フィブリル階層構造と物性相関の解明を行う上で、ナノフィブリル1本に着目した際、その内部は結晶層と非晶層とが交互に繰り返した構造を有しており、本研究代表者は、非晶配列長のばらつきが少ないほど線形性の高い応力ひずみ挙動を与えるモデルを提案してきた[1]。本研究では、非晶性配列長のばらつきが極めて少ない野蚕シルクについて構造-物性相関を調べ、上記モデルの実証を得た。 課題(3):再生シルクの人工紡糸技術の開発に着手し、高タフネス性の向上に繋がる成果も得られ始めている。本成果については、現在、知財出願の準備を行っているため詳細情報の公開は出願後とする。 [1]吉岡太陽, 亀田恒徳,in 延伸による高分子の構造と物性制御, S&T出版, 第3章9節.
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでに、天然シルクの階層構造、構造形成機構、構造-物性相関の解明についてフィブリル階層構造に着目した研究を進め、着実に理解を深めてきた。2024年度も引き続き、1)天然シルクの構造の理解をさらに深めることを進めつつ、2)天然シルク繊維の構造を再現するための人工紡糸技術の開発を進める。 1)では、フランス放射光施設との共同研究として「シルクの傾斜異方性フィブリル階層構造の延伸過程でのナノX線ビームを用いた変形挙動解析」を進め、フィブリル階層構造が力学挙動に及ぼす影響の解明を目指す。本年度の予定として計画に挙げていたドイツ中性子散乱施設(Forschungs-Neutronenquelle Heinz Maier-Leibnitz (FRM II))との共同研究(濡れによる構造コントラストを利用した階層構造解析)については、実験施設の改修工事からの再開延期により、2024年度以降の計画に延期した。 2)では、カイコ、エリサン、ミノムシの糸の再生シルクタンパクを中心に、引き続き弾性率、強度、タフネスの向上に向けた紡糸技術の開発を、ナノフィブリルの導入に主眼を置き進める。
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