Project/Area Number |
23K23461
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Project/Area Number (Other) |
22H02194 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 37010:Bio-related chemistry
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中野 実 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70314226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 恵介 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (00553281)
中尾 裕之 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00805020)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,680,000 (Direct Cost: ¥13,600,000、Indirect Cost: ¥4,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,710,000 (Direct Cost: ¥6,700,000、Indirect Cost: ¥2,010,000)
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Keywords | リン脂質 / フリップフロップ / 蛍光 / 中性子散乱 / スクランブラーゼ / ペプチド |
Outline of Research at the Start |
生体膜は脂質二重層構造からなり、通常、膜の内層側に局在するホスファチジルセリン(PS)は細胞死(アポトーシス)の際に外側へ露出する。これにより、露出したPSをマクロファージが認識し、細胞を貪食する。このようなリン脂質の表裏間の移動(フリップフロップ)は膜タンパク質により制御されている。われわれは、リン脂質のフリップフロップを誘起する合成ペプチドを見いだした。この機能をさらに活性化できれば、特定の細胞をマクロファージによりクリアランスする技術を達成できる。本研究では、モデル脂質膜や培養細胞系でリン脂質フリップフロップを計測してペプチドの最適化を行い、この新しい細胞クリアランス技術の創成を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度、親水性残基グルタミン(Q)をヘリックスの同一面上に2つ持つ膜貫通ペプチドが高いフリップフロップ促進能を有することが判明したが、そのペプチドを二量化することでさらに活性が上昇すると予想し、実験を行った。N末端側の様々な位置にシステイン(C)を導入したペプチドを合成し、ジスルフィド結合により二量化させ、ベシクルに組み込み、脂質フリップフロップを計測した。ペプチド単量体を二量化したことによるフリップフロップ速度の上昇度はC残基の導入位置に依存し、全く上昇しないもの(Q2-3C)や、約10倍促進するもの(Q2-2C)があった。前者(Q2-3C)のC残基は2つのQ残基に対してヘリックスの反対側に位置し、二量化によってそれぞれのヘリックスのQ残基は互いに外側を向くため、二量化による活性の上昇がみられなかったと考えられる。一方、後者(Q2-2C)のペプチドは二量化により4つのQ残基が近接するため、相乗的なフリップフロップ促進効果がみられたと考えられる。この高活性ペプチドと同じ位置にC残基を有し、Q残基をさらに1残基増やしたペプチドQ3-3Cはさらに高い活性を示した。これらのペプチドの比較から、Q残基は脂質フリップフロップの活性化エネルギーを1残基あたり2.1kJ低下させると計算された。 脂質フリップフロップを最も促進したQ3-3CのN末端にヒスチジン(H)配列を導入し、亜鉛イオン(Zn2+)とH配列との相互作用によるペプチドのさらなる会合を引き起こし、そのフリップフロップ誘起能を検証した。興味深いことに、二量化ペプチドを組み込んだベシクルのフリップフロップ誘起能はZn2+の添加により大きく低下し、キレート剤の添加により回復した。これは二量化ペプチドのさらなる会合により脂質と接触するQ残基の数が減少したためと考えられ、膜中のペプチドの会合制御により活性を変化させられることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜貫通ペプチドを用いた脂質のフリップフロップ促進に関して、計画通り研究を進められている。亜鉛イオンによるフリップフロップ誘起能の制御では、二量化ペプチドのさらなる会合により(予想に反して)活性が上昇するのではなく低下するという結果が得られたが、その原因については十分に解釈できる。膜中のペプチドの会合制御により活性を変化させられることが判明したことから、この手法は今後さまざまな応用に利用できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
一連の膜貫通ペプチドによる脂質フリップフロップ促進効果については、蛍光脂質を用いた評価を行っているが、非ラベルリン脂質でも同様の現象が起こることを中性子散乱を用いて明らかにする。 亜鉛イオンによるフリップフロップ誘起能の制御では、二量化ペプチドがどのようなサイズの会合体を形成しているかを明らかにする必要があるため、架橋剤とTris-Tricine SDS-PAGEを用いた会合評価や光褪色後蛍光回復法による拡散速度評価のほか、中性子散乱による会合体サイズ評価を検討する。 ペプチド添加による細胞膜脂質フリップフロップの促進がもたらす効果について、蛍光顕微鏡やフローサイトメトリーによる評価を実施する。ペプチド添加によって細胞から小胞が出芽することが確認できているが、この小胞がどのような成分で構成されているのかを、ウェスタンブロットなどを用いて評価するとともに、小胞のドラッグデリバリーシステムへの応用について検討を行う。
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