Project/Area Number |
23K23489
|
Project/Area Number (Other) |
22H02222 (2022-2023)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 37030:Chemical biology-related
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
進藤 直哉 九州大学, 薬学研究院, 講師 (20722490)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
|
Keywords | コバレントドラッグ / リジン / ケミカルバイオロジー / 創薬化学 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、タンパク質のリジン残基と可逆的に共有結合する新規反応基を開発し、コバレントドラッグ創薬に応用する。標的タンパク質と共有結合するコバレントドラッグは、持続的な薬効などの利点から近年注目されている。システイン残基を狙ったコバレントドラッグ創薬が盛んな一方、プロテオーム中に豊富に存在するリジン残基を狙うことで、標的可能なタンパク質領域の飛躍的拡大が期待できる。また、非特異反応による毒性懸念を最小限にするためには、非特異付加体が可逆的に解離することが望ましい。本研究ではリジンの可逆的共有結合修飾のための新たな分子デザインとして、β-フルオロビニルスルホンを提案する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
コバレントドラッグは、共有結合の形成によって標的タンパク質の機能を不可逆的に阻害する。強く持続的な薬効などの利点から、標的と選択的に共有結合するよう合理的にデザインされたコバレントドラッグが盛んに開発されており、システイン残基を狙ったチロシンキナーゼやKRAS G12C変異タンパク質阻害剤が様々上市されている。システイン残基はチオールの高い求核性に加え、プロテオーム中の存在割合が低く選択性確保の面でも有利である反面、標的可能なタンパク質は制限される。これに対し、プロテオーム中に豊富に存在するリジン残基を狙うことで、標的可能なタンパク質の飛躍的な拡張が期待できる。一方、毒性懸念を最小限に抑えるためには、非特異反応による共有結合付加体が可逆的に解離することが望ましい。本研究では、リジンの可逆的共有結合修飾を可能とする新たな分子デザインとして、β-フルオロビニルスルホン (FVS) を提案し、有機化学的な基礎検討およびコバレントドラッグ創薬への応用を検討している。これまでにFVSがアミンと可逆的に共有結合することを明らかとしたが、チオールとの不可逆的な結合が問題であった。アミン選択性向上を目指し種々検討を実施したが、チオール反応性を排除することは困難であった。FVSがタンパク質のリジン残基を共有結合修飾可能であることを実証するため、遊離チオール基を持たない熱ショックタンパク質90 (Hsp90) のFVS型コバレントプローブを設計・合成し、蛍光ラベル化を検討した。その結果、精製Hsp90タンパク質の共有結合ラベル化を示唆する結果を得たが、生細胞やライセートを用いた実験ではチオール反応性に由来すると思われるオフターゲットラベル化が顕著であった。現在、FVSのアミン/チオール両反応性求電子基や、チオール反応基としてのリパーパスを視野に、さらなるコバレントドラッグ応用を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
β位置換基の異なる様々なFVS誘導体を合成し、アミンとチオールのモデル求核剤としてそれぞれN-アセチルリジン、グルタチオン (GSH) との反応をHPLCで追跡し、半減期を算出した。なお、N-アセチルリジンとの反応はpH 9.3、GSHとの反応はpH 7.2で行った。これらの条件では、両反応系中における求核種 (それぞれ遊離アミノ基とチオレート) の濃度が理論上同一となる。アミンとチオールそれぞれとの反応速度の比からアミン選択性を評価したが、β-メチルFVSで約1:1の選択性となったのが最大で、チオールと比べアミン反応性が大幅に高いFVS誘導体は見られなかった。選択性に課題を残したものの、FVSが標的タンパク質のリジン残基を共有結合修飾可能であることを実証するため、熱ショックタンパク質90 (Hsp90) を狙ったFVS型コバレントプローブを設計・合成した。Hsp90はシステイン残基を持たず、既知のリジン反応基を有するコバレント阻害剤が報告されているため、 モデル標的として最適である。プローブにはアルキンタグを導入し、精製Hsp90タンパク質と反応させたのちにクリックケミストリーにより蛍光色素を導入してゲル内蛍光解析を行った。その結果、FVS型コバレントプローブ処理によってHsp90の蛍光バンドが観察され、共有結合ラベル化の進行が示唆された。そこで、生細胞中のHsp90のラベル化を試みたが、オフターゲットラベル化が多く見られ、既存のHsp90阻害剤との競合実験等を行ったもののHsp90ラベル化の確たる証拠は得られなかった。FVSプローブによるオフターゲットラベル化は、システイン残基を網羅的にラベル化するN-エチルマレイミドで前処理したライセート中では大きく減弱したことから、FVSとシステインチオールとの反応に由来することが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、FVSを用いたコバレントドラッグ創薬を検討する。FVSの置換基を種々検討したものの、チオール反応性を排除することは困難であったため、アミンとチオール両方に反応性を示す点を活かした検討を行う。具体的には、EGFRを標的としたFVS型コバレントドラッグの創製を目指す。EGFRは上皮細胞の増殖に関わるチロシンキナーゼで、非小細胞肺がんの創薬標的として重要である。ATPポケットに結合する可逆阻害剤が開発されたが、ゲートキーパー残基の変異 (T790M) による獲得耐性が見られることから、ATPポケット近傍のCys797と共有結合するコバレントドラッグが開発された。EGFR-T790Mを選択的に阻害するオシメルチニブがブロックバスターとなっているが、C797S変異による感受性の喪失が新たに問題となっている。そこで、Cys797との共有結合によってEGFR-T790Mを阻害し、T790M/C797S変異体に対しては触媒性Lys745との共有結合によってキナーゼ活性を阻害するFVS型コバレントドラッグの開発を目指す。ピリミジンを母核とする第三世代EGFR阻害剤とEGFRの共結晶構造から、Cys797とLys745双方に届きうる位置にFVSを導入した阻害剤をデザインし、精製キナーゼタンパク質や生細胞の蛍光ラベル化を検討する。また、アクリルアミドやフッ素のない通常のビニルスルホンは、β置換基の導入により著しくチオール反応性が低下するのに対し、FVSはβ位に芳香環などのかさ高い置換基を有していても無置換アクリルアミドと同等のチオール反応性を示す。この特徴を利用し、β位置換基を多様化可能なチオール反応基としてFVSをリパーパスする検討も行う。チロシンキナーゼのひとつBTKを対象にFVS型コバレントプローブを開発し、アクリルアミド型プローブとのプロテオーム反応性の差異を検証する。
|