Project/Area Number |
23K23500
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Project/Area Number (Other) |
22H02233 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38020:Applied microbiology-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永田 裕二 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (30237531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 嘉行 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (40342761)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
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Keywords | 環境細菌 / 低栄養環境 / バイオレメディエーション / 細菌コミュニティ |
Outline of Research at the Start |
本研究では、① 従属栄養細菌が極貧環境下でCO2の固定を伴って生育する潜在能力を有する、② 分解細菌は単独よりも非分解細菌を含むコミュニティ状態の方が汚染物質の分解代謝を効率的かつ持続的に行える、という我々が見出した現象の分子機構を解明し、細菌の劣悪環境での生残・増殖機構という新たな切り口から、「細菌は如何にして 様々な環境に適応し迅速に進化するのか?」という生物学の根源的な「問い」に対する重要な答えを提示する。さらに、その原理を「なぜ純粋分離株の実験室での評価から期待される成果が実環境では得られないのか?」という有用細菌の高度利用に直結する問いに対する回答にも繋げる 。
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Outline of Annual Research Achievements |
有用機能を持つ細菌を実環境などで利用する際、しばしば純粋分離菌の実験室環境での評価から期待される成果が得られず問題となる。その主因は、当該環境が細菌の生残・ 増殖に適さない劣悪な環境であることによる。本研究では、典型的な環境細菌をモデルとして、我々が見出した(1)有機炭素源非添加の極貧栄養条件下での増殖現象(HYGO表現型)と、(2)高度難分解性の有機塩素系殺虫剤HCHによる汚染環境での集団としての適応現象に着目し、細菌の「劣悪環境での生残・増殖」の鍵となる基本原理・機構を明らかにし、(3)その知見から有用細菌の機能を劣悪な環境でも最大限に利用するのための理論的基盤を構築する。 本年度は、各項目について以下の成果を得た。(1)これまでに取得したデータを元に、HYGO表現型株は、低栄養環境下においてグリオキシル酸回路でCO2の放出を抑えつつ、補充反応でCO2を固定し、環境中に低濃度で存在する微量のアルコール類を炭素源・エネルギー源として利用している可能性が高いと結論した。また、HYGO表現型に必須なアルコールデヒドロゲナーゼAdhXは、様々な基質から還元力を得るだけでなく、基礎代謝系の活性強化やシグナル物質の代謝など、多面的な機能を持つ可能性が示唆された。(2)HCH分解細菌コミュニティ形成に中心的な役割を果たす非分解細菌のCupriavidus属TKC株のプレート上でコロニーを薄く広げる変異株を取得し、リシーケンスにより2つの遺伝子の変異を同定した。また、TKC株は当該コミュニティ由来でないHCH分解細菌UT26株とも巨大コロニーを形成することを明らかにした。(3)プレート上でPaenibacillus属NK-L2株によりHCH分解細菌株が運ばれるヒッチハイク現象にプレートの寒天濃度と水分含量が重要であることを明らかにした。また、NK-L2株の全ゲノム配列を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目(1)では、HYGO表現型の機構について一定の結論を得ることができた。さらに、AdhX様々な基質から還元力を得るだけでなく、基礎代謝系の活性強化やシグナル物質の代謝など、多面的な機能を持つ可能性があるという新規知見を得ることができた。一方、項目(2)では、HCH分解細菌コミュニティにおける非分解細菌のCupriavidus属TKC株のHCH分解菌とのコミュニティ形成に重要と推定される表現型を示す変異株を取得し、リシーケンスにより2つの遺伝子の変異を同定することができた。また、TKC株は当該コミュニティ由来でないHCH分解細菌UT26株とも巨大コロニーを形成することを明らかにした。UT26株は遺伝学的取り扱い手法が確立されており、今後の当該現象の解析が容易になった。さらに、項目(3)では、Paenibacillus属株によりHCH分解細菌株が運ばれるヒッチハイク現象にプレートの寒天濃度と水分含量が重要であることを明らかにし、当該現象を再現性良く観察することができるようになった。また、NK-L2株の全ゲノム配列を決定し、今後の遺伝学的解析がしやすくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
項目(1)では、HYGO表現型の機構について、一定の結論を得たため、これを論文としてまとめる。また、AdhXの多面的な機能についてさらに解析を行い、HYGO表現型の全貌解明を目指す。さらに、それら知見を元に、HYGO表現型の強化を目指す。項目(2)では、TKC株の変異株の表現型がリシーケンスにより明らかにされた遺伝子の変異よるものであるか、遺伝学的手法で明らかにする。また、巨大コロニー形成に必要なHCH分解菌側の因子について、UT26株を用いた解析により明らかにする。項目(3)では、Paenibacillus属株の変異株を作製し、ヒッチハイク現象の機構解明を目指すと共に、移動性がHCH分解細菌株の土壌での生残性を向上させる直接の因子であるか検討する。また、項目(1)(2)で明らかにした機構が分解細菌株の土壌での生残性の向上に応用可能か検討する。
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