単子葉植物に特有なアブシシン酸シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
23K23521
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Project/Area Number (Other) |
22H02254 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38030:Applied biochemistry-related
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
竹内 純 静岡大学, 農学部, 准教授 (00776320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 利幸 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (60542165)
山下 寛人 静岡大学, 農学部, 助教 (70915488)
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,710,000 (Direct Cost: ¥6,700,000、Indirect Cost: ¥2,010,000)
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Keywords | アブシシン酸 / シグナル伝達機構 / 単子葉植物 |
Outline of Research at the Start |
アブシシン酸(ABA)は環境ストレス耐性誘導を担っている植物ホルモンであり,その受容体(PYL)アゴニストやアンタゴニストは農業利用が期待されているものの,実用化には至っていない。この要因の一つとして,モデル植物シロイヌナズナを用いた解析により得られた知見をそのまま他の植物種に適用することができないことが挙げられる。本研究では,研究代表者が独自に開発したPYLアンタゴニストを化学ツールとして,化学遺伝学とゲノムワイド関連解析を用いたアプローチによって,単子葉植物イネに特有な新規ABAシグナル伝達機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
イネ・コアコレクション109品種を用いて,最も強いABA様活性を示すPYLアンタゴニスト(PANSF5)に対する感受性の違いを比較したところ,第二葉鞘長阻害において品種間で明確な差があることを見出した.そこで,この阻害率を「形質の値」として,約300万のvariantsからなる高密度のSNPマーカーを利用してゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った.GWASにおいて,最も強い相関がみられた第3染色体に着目し,アミノ酸配列に変異をもたらすSNPが2つ存在する遺伝子(LOC_Os03g45970)を標的候補として選抜した.LOC_Os03g45970はPDZドメインタンパク質をコードする遺伝子であり,PDZドメインは動物において,タンパク質間相互作用の誘導やシグナル伝達に関わるタンパク質複合体を形成する際の足場タンパク質として機能することが報告されている.そこで,PANSF5由来のシグナル伝達はこのタンパク質の変異によって大きな影響を受けるのではないかと推測し,PDZドメインタンパク質の機能解析を進めた. LOC_Os03g45970がコードするPDZドメインタンパク質のPANSF5結合活性を評価するため,大腸菌発現系により同タンパク質の発現を試みた.しかし,現在までに全長のPDZドメインタンパク質を得ることは出来ていない.この原因の一つとして,発現したタンパク質が大腸菌内で分解・切断されている可能性がある.そこで今後は,宿主を真核生物であるピキア酵母やタバコを用いた植物細胞系に変更して再度発現検討を行う予定である. また,LOC_Os03g45970欠損変異体に対するPANSF5感受性を検証するために,CRISPR-Cas9システムを用いて機能欠損個体の作出に取り組んだ.現在,スクリーニングとT1種子採取を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,高密度のSNPマーカーを用いてGWASを行い,PANSF5の標的候補遺伝子としてLOC_Os03g45970を選抜した.LOC_Os03g45970がコードするPDZドメインタンパク質とPANSF5の結合活性を評価する目的で,同タンパク質の大腸菌発現を試みたが,pET28bを始めとしたプラスミドベクターとBL21(DE3)等の大腸菌株の組み合わせを複数種検討しても全長のPDZドメインタンパク質を得るには至らなかった.故に,この部分に関しては計画に遅れが生じている.一方,R5年度に取り組む予定であったLOC_Os03g45970欠損変異体の作成に関しては,計画を前倒して進めることが出来ている.候補遺伝子のエキソン領域にgRNAを設計し,バイナリーベクター(pZH_gYSA_PubiMMCas9)にクローニングした.当バイナリーベクターをアグロバクテリウムEHA105株に導入後,イネカルス(日本晴)に感染させ,再分化個体を得た.現在,スクリーニングとT1種子採取を進めており,R5年度にはLOC_Os03g45970の欠損変異体を用いてPANSF5感受性を評価する予定である. また,第57回植物化学調節学会(福井)で指導学生が研究成果発表を行い,優秀発表賞を受賞した.上記の進捗状況を総合的に判断して,研究は概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
GWASによって選抜したPANSF5標的候補遺伝子(LOC_Os03g45970)の機能解析を進めると共に,下記の研究結果からPANSF5の標的がLOC_Os03g45970ではないことが示唆された場合に備えて,形質値をPANSF5による発芽阻害率に変更して再度GWASを行うためのデータセットを取得するための生物試験を実施する.具体的には以下の実験を予定している. 1) LOC_Os03g45970がコードするPDZドメインタンパク質の発現とPANSF5結合活性の評価.同タンパク質は,大腸菌発現系での調製が困難であったため,本年度は宿主を真核生物であるピキア酵母やタバコを用いた植物細胞系に変更して再度発現検討を行う.目的タンパク質が発現出来次第,示差走査蛍光定量法(DSF)または等温滴定型カロリメトリー(ITC)によりPANSF5との結合を検証する(担当: 竹内・大西). 2) CRISPR-Cas9システムを用いて作成したLOC_Os03g45970欠損変異体のPANSF5感受性の評価.変異体種子が収穫出来次第,第二葉鞘伸長阻害試験を行い,野生型と比較してPANSF5感受性が低下したかどうかを検証する.欠損変異体でPANSF5感受性の低下が確認できた場合は,LOC_Os03g45970がPANSF5標的遺伝子であると判断して,ABAシグナル伝達におけるPDZドメインタンパク質の役割を追及する.一方,PANSF5感受性の低下が確認できなかった場合は,遺伝子重複が原因である可能性を考慮して標的候補遺伝子の過剰発現体の作成を検討する(担当: 一家・山下). 3) ABAの代表的な生理作用として知られる種子休眠・発芽阻害を指標(形質の値)として再度GWASを行うために,イネ・コアコレクションを用いてPANSF5の発芽阻害試験を行う(担当: 竹内・山下).
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)