イネ高温登熟障害耐性における根系機能が果たす役割の解明
Project/Area Number |
23K23593
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Project/Area Number (Other) |
22H02328 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39020:Crop production science-related
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
小川 敦史 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (30315600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松波 麻耶 岩手大学, 農学部, 准教授 (40740270)
川上 寛子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70772359)
曽根 千晴 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30710305)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,670,000 (Direct Cost: ¥5,900,000、Indirect Cost: ¥1,770,000)
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Keywords | イネ高温登熟耐性 / 根系 / オミックス解析 / 抗酸化活性 / 炭素分配 / イネ高温登熟障害耐性 / 光合成速度 / メタボローム解析 |
Outline of Research at the Start |
地球温暖化に伴い、イネ高温登熟障害が全国的に頻発している。その克服に向けて、メカニズムの解明と高温登熟障害への対策が喫緊の課題である。高温登熟障害に関する研究の多くは,現象が現れる穂を中心とした地上部に注目して行われてきた。一方で申請者らの研究グループでは「高温登熟障害耐性には出穂期においてイネ根系を十分発達させ、養水分を地上部に十分供給し、光合成を維持することが重要」という仮説に行き着いた。本研究では、「出穂期における高温登熟障害耐性メカニズムを、地上部だけでなく根系の働きの両面から明らかにする」ことを目的とし、形態学、植物生理学、分子生物学の多面的側面から網羅的手法を用いて解明に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
出穂期から登熟期にかけての光合成速度および蒸散速度の測定したところ、対照品種の「あきたこまち」では対照区と比べ高温区で登熟期の光合成速度や蒸散速度の低下がみられた.これらの結果から,「あきたこまち」は高温条件下では光合成速度や蒸散速度が維持できず,玄米外観品質が低下するのに対し,高温登熟障害耐性品種の「ふさおとめ」は光合成速度や蒸散速度が維持できるため,玄米外観品質の低下が抑制されているのではないかと考えられた.高温処理が出穂期以降の同化産物の転流へ与える影響を調査した.高温登熟障害耐性品種「笑みの絆」では処理区間で分配比の大きな違いは見られなかった.一方,「コシヒカリ」は高温処理によって根への分配が増加し,「あきたこまち」は根への分配が減少し,穂への分配が増加していた. この時,抗酸化活性を示す指標の一つであるORAC値は両品種とも高温区において上昇し,「あきたこまち」の方が「ふさおとめ」よりも高い値を示し.SOD活性は,どちらの品種も処理区間で有意な差はみられなかったが,両処理において「ふさおとめ」の方が有意に高い活性を示した.スーパーオキシド産生速度は,どちらの品種も高温区で減少する傾向がみられ,「ふさおとめ」では有意に減少していた. さらに出穂期の穂と根における高温処理による代謝物質の変化をメタボローム解析により網羅的に調査した.穂では,高温処理により「あきたこまち」ではTCAサイクル,グルタミン酸代謝を中心とした18物質が有意に増加し,「ふさおとめ」ではTCAサイクル糖代謝系を中心とした12物質が有意に増加した.一方で「あきたこまち」では7物質,「ふさおとめ」では9物質が有意に減少していた.根では,高温処理により「あきたこまち」では糖や核酸代謝系を中心とした5物質が有意に増加し,「ふさおとめ」ではTCAサイクル,グルタミン酸代謝を中心とした14物質が有意に増加した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度交付申請書に記載した2022年度研究実施計画である a)生長ならびに高温登熟障害程度の評価 b)出穂期における炭素分配の変化の検討 c)メタボロミクスによる代謝物質の差異の網羅的解析 d)抗酸化活性の差異の検討 の4項目に取り組み,成果を得ることができた.この結果をもとに令和5年度以降の研究を進めてく準備も整っていることから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究成果をもとに,令和5年度には以下の4項目に取り組む. a) 根系形態及び内部形態の差異の評価・・・イネ根系では,根系の大部分を占め養水分吸収のほとんどを担っていると考えられている側根には,高次根を発生させない細いS型側根と高次根を発生させる太い側根L型側根の2種類の異型根がある.本研究では,高温登熟障害耐性品種と感受性品種間で異形根の差異について評価する.さらに組織切片を作成し,内部形態の差異を評価する. b) 養分吸収の差異の検討・・・「高温登熟障害耐性には,出穂期において養水分を地上部に十分供給することが重要である」という仮説を証明するために,出穂期おいて地上部の窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛,モリブデン,銅含有量を測定し,高温登熟障害耐性と感受性品種間での養分吸収の差異を明らかにする. c) トランスクリプトーム解析による発現遺伝子の差異の網羅的解析・・・高温登熟障害耐性と感受性品種間でのイネ根系と地上部における遺伝子発現にどのような差異が見られるかをトランスクリプトーム解析により網羅的に比較検討し,高温登熟障害耐性を示すために必要な遺伝子候補の探索を行う.この結果をもとに,高温登熟障害耐性を示すために必要な代謝物質の探索を行う. d) 抗酸化活性の差異の検討・・・出穂期に根および地上部 (穂,葉身,根) を採取し,水溶性成分の抗酸化力をORAC法,により網羅的に評価する.さらに活性酸素解毒過程のグルタチオン-アスコルビン酸回路での代謝に関わる物質ならびに酵素活性を測定し,高温登熟障害耐性に対する関与を明らかにする.
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)