Project/Area Number |
23K23666
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Project/Area Number (Other) |
22H02401 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40010:Forest science-related
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Research Institution | Asia Center for Air Pollution Research |
Principal Investigator |
佐瀬 裕之 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 部長 (20450801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷川 東子 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10353765)
山下 尚之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30537345)
藪崎 志穂 総合地球環境学研究所, 基盤研究部, 上級研究員 (60447232)
諸橋 将雪 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 主任研究員 (40761606)
四柳 宏基 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 生態影響研究部, 主任研究員 (60937209)
黒川 純一 一般財団法人日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター, 情報管理部, 部長 (70534262)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
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Keywords | 蓄積量・形態 / 同位体比 / 土壌型 / 混合モデル / 機械学習モデル / 機会学習モデル / 硫黄 / 土壌・植生系 / 循環・蓄積 / 吸脱着プロセス / 増水時 / 臨界負荷量 |
Outline of Research at the Start |
大気から森林生態系に沈着・流入した大気汚染物質(硫黄、窒素、重金属等)の一部は、 土壌・植物系に循環・蓄積しており、大気汚染のレガ シー(遺物)と言える大きなプールを形成している。本研究では、地域や土壌型による汚染物質の蓄積状況を明らかにするとともに、日本海側( 新潟県)と太平洋側(岐阜県)に設定した集水域試験地において、同位体比分析も活用し豪雨時の物質流出メカニズムを明らかにする。さらに、 広域評価モデルを構築し、極端気象による流出撹乱が大きくなる要監視地域の抽出を試みる。得られる知見・手法の、東アジア地域への適用可能性について検討するため、地域枠組みであるEANETとも連携して実施する。
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Outline of Annual Research Achievements |
以下の3課題で進めた。 1)地域や土壌型による汚染状況の明確化・指標化(谷川東子、佐瀨裕之): 樹齢400年以上の樹木の年輪を用いてイギリス産業革命前から現在に至るまでの大気汚染の変遷をS同位体比(δ34S)で評価した結果を、投稿論文としてとりまとめを開始した。また、加治川集水域(KJK:新潟県)での土壌調査により3断面分の土壌試料を採取し、蛍光X線分析法を用いて全S濃度を測定した。その結果、KJK土壌の全S濃度は土壌深度にかかわらず、人為起源のS化合物の負荷量が最も多かった伊自良湖集水域(IJR:岐阜県)の土壌のそれよりも低かった。これは、KJKではS収支が概ねバランスし近年は流出過多の傾向である一方、IJRでは土壌が高いS吸着能を持つことが主な原因として考えられる。 2)極端気象イベント時の物質流出メカニズムの解明・流出量推計(佐瀨裕之、諸橋将雪、 四柳宏基、藪崎志穂):KJKの増水時調査では、河川水のH・O同位体比(D-excess値)は大きく変化し、混合モデル解析は降水の直接流入を示唆したが、δ34S値は安定しており、土壌のSO4吸脱着プロセスによる均質化されたSO4流出を示唆した。この結果を国際誌に投稿した(審査中)。一方で、IJRの増水時調査では、δ34S値が土壌溶液のそれに近づく現象が見られ、土壌に蓄積したレガシープールの流出を示唆した。次年度もさらに調査を進め、そのプロセスを確認する予定である。 3)広域評価モデルによる要監視地域の抽出(山下尚之、黒川純一、佐瀨裕之):協力関係にある国立環境研究所の研究グループから、2000-2020年の大気化学輸送モデルによるシミュレーション結果を入手し、大気Sの累積沈着量等のデータ整理を行った。今後、地形・地質・気象データ等とともに、機械学習モデルの構築を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最大の仮説は、生態系内に循環・蓄積した大気汚染物質由来のプールが極端気象で大きく動くのではないかというものであった。本年度までの調査により、Sの流入・流出収支がバランスしている加治川集水域(KJK)では、土壌におけるSO4吸脱着プロセスが急激な酸流入に対する緩衝機構として機能しており(Saito et al. 2023, Journal of Forest Research)、増水時にも同様の機構が機能しδ34S値は大きく変化しないことが明らかとなった(Yotsuyanagi et al. 投稿中)。一方で、土壌へのS蓄積が指摘されていた伊自良湖集水域(IJR:Tanikawa et al. 2022, Geoderma)では、増水時に河川のδ34S値が明らかに土壌溶液のそれに近づく現象が見られ、生態系内に蓄積した大気汚染レガシーの流出を示唆した。また、KJKの土壌はIJRほどSの蓄積能がないことも明らかになりつつあり、上記の結果と一致していた。さらに、巨木の年輪には大気汚染の起源情報がδ34S値として記録されており、大気汚染物質由来のSが土壌・植生系でのS循環に大きく影響していることが示された。このように、当初の仮説が実測データで証明されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、以下の3課題で進めていく。 1)地域や土壌型による汚染状況の明確化・指標化(谷川東子、佐瀨裕之): 年輪解析の結果を、国際誌に投稿、受理を目指す。また、KJKで得られた土壌試料についてS同位体比を含めて分析を進め、歴史的に沈着量が多かったIJRの土壌との蓄積量・形態の違いについて、明らかにする。 2)極端気象イベント時の物質流出メカニズムの解明・流出量推計(佐瀨裕之、諸橋将雪、 四柳宏基、藪崎志穂):審査中であるKJKの増水時調査の投稿論文について、国際誌での早期の受理を目指す。IJRの増水時調査をさらに進め、KJKとの流出パターンの違いを明らかにする。 3)広域評価モデルによる要監視地域の抽出(山下尚之、黒川純一、佐瀨裕之):2000-2020年の大気化学輸送モデルによるシミュレーション結果から、大気Sの累積沈着量等をマップ上で明らかにして、地形・地質・気象データ等とともに、機械学習モデルの構築を進める。さらに、上記1)や2)の結果も援用しながら、広域的な評価を試みる。 本研究では、Sを中心に解析を進めているが、同時にデータが得られているNや重金属についても、併行して議論を進めていく予定である。さらに、これらの成果を大気汚染の国際的な枠組みである「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)」の関連会合等でも共有し、今後の東アジアにおける大気汚染対策にどのように役立てることができるか、併せて検討を進める。
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