Project/Area Number |
23K23730
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Project/Area Number (Other) |
22H02465 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 41040:Agricultural environmental engineering and agricultural information engineering-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白神 慧一郎 京都大学, 農学研究科, 助教 (80795021)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,330,000 (Direct Cost: ¥14,100,000、Indirect Cost: ¥4,230,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥16,510,000 (Direct Cost: ¥12,700,000、Indirect Cost: ¥3,810,000)
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Keywords | トレハロース / 二糖 / ポリオール / 誘電分光 / 水和 |
Outline of Research at the Start |
二糖のトレハロースは高い保水性と氷成長抑制機能を持つ生体保護物質として経験的に知られており、安全性の高い食品添加剤として広く用い られている。一方でその分子論的な機序は十分な理解が進んでいなかったものの、分光学的手法によってトレハロースと水の分子間相互作用が 生体保護機能の根源であることが明らかになりつつある。そこで本研究では、0.5 GHz~120 THzに及ぶ超広帯域分光を実現することで分光学的 な情報量を格段に増加させ、トレハロースが高い保水性と氷成長抑制を示す分子論的機序を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
二糖のトレハロースは高い保水性と氷成長抑制機能を持つ生体保護物質として経験的に知られており、安全性の高い食品添加剤として広く用いられている。ただしその分子論的な機序は十分に理解が進んでいないため、本研究ではマイクロ波から赤外領域に及ぶ超広帯域分光測定を用いることで、トレハロースと水の分子間相互作用が生体保護機能にいかに関与しているかを明らかにすることを目指す。 トレハロース、スクロース、マルトースを対象に二糖水溶液のマイクロ波誘電分光を行ったところ、二糖の中でもトレハロースが最も“リジッドな”水和殻を形成して水を効果的に保持していることが分子レベルで明らかになった。これは、トレハロースは2個の単糖が二枚貝を作るようにグリコシド結合することで、貝の内側では水和水が安定的に保持されていることに起因すると考えられる。さらに、このようなトレハロースの水和優位性は温度低下とともに顕著になる傾向が認められたことから、低温下における氷成長抑制機能にも水とトレハロースの相互作用が密接に関係していることが考えられる。 また、二糖と同様に生体保護機能を持つことが知られているポリオールに対しても同様に分光解析を実施したところ、ポリオールは二糖よりも水和能力が著しく大きいことが明らかになった。そこで熱分析や密度測定を併用してその原因を追求したところ、ポリオールでは親水性OH基だけでなく、疎水性の炭化水素基も水の分子ダイナミクスを遅滞化させるうえで重要や役割を担っていることがわかった。この結果は、生体保護機能に関わる水の重要性を理解するうえでは、親水性水和と疎水性水和を区別して議論する必要があることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は濃度・温度依存的に代表的な二糖水溶液の誘電分光を実施することで、トレハロースを取り巻く水に特徴的な分子挙動が現れるかを検証することを目指して研究を推進した。当初計画していた赤外分光との相関解析には到達することができなかったものの、マイクロ波帯の誘電スペクトルが反映する水分子ダイナミクスを解析したことで、トレハロースは他の二糖分子に比べてより安定な水和殻を形成していることが明らかになった。 また、二糖の生体保護機能をより本質的に理解するための試みとしてグリセリンなどのポリオールを対象とした研究を展開し、分光分析にとどまらず熱分析や密度測定を組み合わせることで、生体保護分子周辺の水の振る舞いをより包括的に理解することに挑戦した。その結果、当初の予想を遥かに上回って水の分子動態を詳細に描写することが可能になったため、次年度の研究プラットフォームを強固に確立したという点では、研究が大いに進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に取得した二糖水溶液の誘電分光スペクトルをさらに詳細に解析し、水和水の数やその動態、ならびに活性化エネルギーといった水和パラメーターを定量化することで、トレハロース周辺を取り巻く水の特徴を正確に言語化できるようになることを目指す。また、分光分析(マイクロ波領域の誘電分光と赤外分光)に加えて熱分析や密度測定も実施することで、二糖の中でトレハロースと水の相互作用にどのような特徴が見られるかを包括的に理解するとともに、ポリオールなどの他の生体保護分子と二糖の比較を行うことで、二糖そのものの特徴も理解することを目指す。 そのうえで最終的には、生体保護分子(二糖あるいはポリオール)と水、そしてそこにタンパク質が加わった3成分系にも研究を展開し、生命活動の根幹を担うタンパク質の活動に対して生体保護分子や水がそのように相互作用するかを明らかにすることにも挑戦する。
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