Project/Area Number |
23K23768
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Project/Area Number (Other) |
22H02503 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今内 覚 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (40396304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 史郎 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10579163)
大橋 和彦 北海道大学, 獣医学研究院, 特任教授 (90250498)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 免疫チェックポイント / PD-1 / 難治性疾病 / 家畜 / 伴侶動物 / PD-L1 / 慢性感染症 / がん |
Outline of Research at the Start |
アンメット・メディカルニーズとは、未だ有効な治療方法や薬剤がない患者に対する医療ニーズを示す。獣医療において、アンメット・メディカルニーズは腫瘍疾患や慢性感染症などの難治性疾病を中心に存在する。しかし、獣医分野では、革新的な新薬創出を目指す研究はほとんど行われていない。そこで、動物を対象とする革新的新規治療・予防技術の応用研究を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
アンメット・メディカルニーズとは、未だ有効な治療方法や薬剤がない医療へのニーズを示す。獣医療においてもアンメット・メディカルニーズは難治性疾病を中心に存在する。そこでこれまで開発を進めてきた動物用免疫チェックポイント阻害薬を基盤とした副作用が小さく、より高い奏効率を発揮する発展的な新規治療・予防技術の構築を行い将来的な社会実装・実用化に向けた臨床知見を収集する。牛の慢性感染症では、免疫チェックポイント分子PD-1/PD-L1がT細胞の疲弊を引き起こし、病気の進行に関与している。我々は、ウシのPD-1/PD-L1の結合を特異的に阻害するモノクローナル抗体(mAbs)を確立したが、従来の抗PD-1mAbsは抗原との結合親和性が低いため、治療薬としては適さない。そこで今年度は、高い結合親和性を示す抗ウシPD-1ウサギmAbおよびキメラ抗体を樹立した。抗ウシPD-1ウサギmAbは、従来の抗PD-1 mAbと比較してウシのPD-1に強く結合し、PD-1/PD-L1相互作用に対して顕著な阻害活性を示した。また、キメラ抗体はIFN-γ産生の増強などの免疫活性化を示すことも確認された。さらに、牛伝染性リンパ腫ウイルス感染牛にキメラ抗体を投与し、抗ウイルス効果を調べた結果、抗ウイルス効果が確認された。一方、抗PD-L1抗体による治療を行った肺転移のある口腔内悪性黒色腫のイヌについて、低分割放射線療法と抗PD-L1抗体療法の組み合わせが奏効に及ぼす影響を検討した。その結果、抗PD-L1抗体治療を開始する直前(8 週間以内)に放射線治療を受けていたイヌで肺転移病変に対する奏効率が高く、また免疫療法における生存期間も長くなる傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
牛の慢性感染症では、免疫チェックポイント分子PD-1/PD-L1がT細胞の疲弊を引き起こし、病気の進行に関与している。我々は、ウシのPD-1/PD-L1の結合を特異的に阻害するモノクローナル抗体(mAbs)を確立したが、従来の抗PD-1mAbsは抗原との結合親和性が低いため、治療薬としては適さない。そこで今年度は、高い結合親和性を示す2種類の抗ウシPD-1ウサギmAb(1F10F1と4F5F2)およびウシIgG1を用いたキメラ型(Boch1D10F1)を確立した。ウサギのmAb 1D10F1の1つは、従来の抗PD-1 mAb(5D2)に比べてウシのPD-1に強く結合し、PD-1/PD-L1相互作用に顕著な阻害活性を示した。さらに、改変したキメラ抗体Boch1D10F1 はIFN-γ産生の増強などの免疫活性化を示すことも確認され、牛伝染性リンパ腫ウイルス感染牛に投与した結果、抗ウイルス効果も確認された。 イヌの口腔悪性黒色腫(OMM)において、免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-L1抗体)により奏効を示す症例は一部にとどまる。そこで、抗PD-L1抗体による治療を行った肺転移のある口腔内悪性黒色腫のイヌについて、低分割放射線療法と抗PD-L1抗体療法の組み合わせが奏効に及ぼす影響を検討した。放射線治療(RT)の影響がないと考えられた「RT なし群」(n = 20)、抗 PD-L1 抗体初回投与の前8週間以内に放射線治療を受けていた「RT 前治療群」 (n = 9)、放射線治療の初回照射の前後 1 週間以内に抗 PD-L1 抗体治療を開始した「RT 同時治療群」 (n = 10)の 3 群に分けて解析を行った。その結果、RT 前治療群」では、肺転移病変の臨床的有用率は55.6%となり、他群と比較して有意に高い比率を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った解析によって、ウサギ由来抗体を改変した牛キメラ抗体Boch1D10F1 は、IFN-γ産生の増強などの免疫活性化を示すことが確認された。さらに、牛伝染性リンパ腫ウイルス感染牛に同抗体を投与した結果、抗ウイルス効果も確認された。今後、頭数を増やして生体内での詳細な免疫応答について検証を行いたい。また、抗 PD-L1 抗体を開始する直前(8 週間以内)に放射線治療を受けていたイヌで肺転移病変の反応率が高く、また免疫療法における生存期間も長くなる傾向が認められた。この組み合わせ療法において安全性にも大きな問題は認められなかったことから、放射線治療を免疫チェックポイント阻害薬の開始前に適用することで、より良い治療効果が、得られる新しい治療法となる可能性があると考えられた。 本研究成果は、低分割放射線療法が適用される他のがんにも適用できる可能性があり、免疫チェックポイント阻害薬の適用拡大と併せて検討を進めることで、イヌの腫瘍に対するより良い治療の提供に繋がるものと期待される。
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