受容体分子の時空間ダイナミクスの統合的理解による新規薬剤スクリーニングの基盤構築
Project/Area Number |
23K23856
|
Project/Area Number (Other) |
22H02593 (2022-2023)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
|
Research Institution | Osaka University (2023-2024) Institute of Physical and Chemical Research (2022) |
Principal Investigator |
廣島 通夫 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (20392087)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,890,000 (Direct Cost: ¥5,300,000、Indirect Cost: ¥1,590,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
|
Keywords | 1分子薬剤スクリーニング / 大規模1分子計測 / 1分子生体情報学 |
Outline of Research at the Start |
細胞の外部からのシグナルは細胞膜上の受容体を通じて細胞内に伝達される。上皮成長因子受容体(EGFR)はその異常が多くの疾患と関与するため、創薬の標的分子である。細胞内の分子個々の動きを可視化する手法(1分子イメージング)により、EGFRの活性化が動きに顕著な変化を及ぼすことが見出されている。これは新しい活性化検出法であるため、開発中の全自動1分子解析システムと組み合わせれば、革新的な薬剤スクリーニングが実現する。しかし、活性化が分子動態を変化させるメカニズムは分かっていない。本研究では、分子構造や細胞膜環境と関連付けてメカニズムを解明し、細胞内1分子スクリーニングの基盤手法の実効性を裏付ける。
|
Outline of Annual Research Achievements |
細胞応答に関与する細胞膜受容体において、分子の構造/動態/活性化が密接に関わりながら変化し下流シグナル経路を活性化する過程を、蛍光1分子イメージングによる大規模計測から分子状態を解析する手法を用いて感度良く捉え、一連の分子現象の時空間ダイナミクスを網羅した描像を提示する。分子レベルでのシグナル伝達のプロセスを、今までの知見のミッシングリンクを埋めて明らかにする。さらに得られた情報を基に1分子動態を指標とした新規の薬剤スクリーニングが可能となることから、実際に応用してその有用性を実証する。本研究では重大な疾病にも関わる上皮成長因子受容体(EGFR)を取り上げ、シグナル伝達時の分子状態(動態と多量体形成)について、野生型と構造変異体それぞれの1分子軌跡・輝点強度データを隠れマルコフモデルに基づく機械学習手法により解析している。計測は22-23年度に作成した4種類の構造変異体の細胞株に対して、数段階設定したリガンド濃度下で添加後の経時変化を追跡する。これらの試料や条件の組み合わせについて十分なデータ数を得るためには膨大な計測が必要であることから、我々が開発した全自動化細胞内1分子イメージングシステムを用いて大規模計測を行っている。また、この新しい大規模計測から得られた知見を基に、この手法がどのように薬剤スクリーニングに応用できるかについても検証する。さらに、非小細胞肺癌で多く見られるEGFRの癌変異体L858Rや、抗癌剤gefitinibによる治療で生じる薬剤耐性二重変異体 L858R/T790M、そしてこの変異に効くosimertinibに対しても耐性を獲得した三重変異体 L858R/T790M/C797Sについて、構造変異体と同様の計測を行ない、野生型や構造変異体との差異を定量的に評価し、薬剤の効果を効果的に検出可能な指標を探索する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
構造変異体の計測では、当初予定していた細胞内領域、二量体化アーム、細胞外領域それぞれを欠損させたEGFR(ΔICD, ΔArm, ΔECD)のうち、ΔICDとΔArmについては順調に計測が進んでおり、新しい知見も得られてきた。また、分子構造に起因する動態がシグナル伝達にどう影響しているか、より詳細に探るため、当初の計画を越えてさらに1) C末端リン酸化領域、2) C末からキナーゼ領域まで、3) 細胞内領域全て、4) 二量体化アーム、5) 二量体アームと細胞内領域の両方、をそれぞれ欠損させた分子や、膜貫通ドメインの二量体間相互作用部位に変異を導入した分子(TM646, TM647)についても細胞株を既に作成し計測を進めている。その結果、EGFR各ドメインが動態や多量体形成に与える影響とシグナル伝達における役割に関して、想定していた以上のデータが得られている。なおC末端リン酸化領域を削った変異体の結果から、本研究で用いているCHO-K1細胞の内在性ErbB2とトランスフェクションしたEGFRとで形成するヘテロダイマーの影響が無視できない場合があったことから、内在性ErbB2をノックアウトした細胞株を構築した。今後、野生型EGFRをはじめ各種変異体について安定発現株の取得を進める。 また、スクリーニングへの応用を見据えた癌変異体の計測では、当初予定していたL858Rや薬剤耐性の二重変異体 L858R/D761YやL858R/T790Mに加え、二重変異株に効果のある薬剤に対して耐性を持つ三重変異株L858R/T790M/C797Sも細胞株を作成して計測を行っており、期待された効果が見られているとともに、耐性のメカニズムとの関連が示唆される結果も得られつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度に引き続き、EGFRの構造変異体の1分子イメージングによる計測・解析を進め、シグナル伝達の調節機構における分子構造と動態の寄与を探る。変異体の種類は当初計画より増え7種類となり、それぞれリガンドと阻害剤濃度は3段階以上、時間は10秒枚の6段階となる。これらを組み合わせた条件下において、観測する細胞数はEGF刺激前後で >100細胞程度必要となる。従って計測では相当な量のデータ取得が必要となるが、我々の全自動1分子イメージングシステムを使用することで2024年度での完了を目指す。得られたデータから分子状態の解析を行い、EGFRの構造や局在、会合体サイズ、また細胞環境を統合的に記述し、また経時変化を追うことで、リガンド結合やリン酸化に伴う変化が、いつ、どこで、どのように生じるか、定量的指標と共に明らかにする。並行して、内在性ErbB2をノックアウトした細胞に変異体をトランスフェクションした細胞株の取得を進め、ErbB2の影響を受けないEGFR動態評価のプラットフォームを確立する。 さらに薬剤スクリーニングへの応用を念頭に、癌変異体を用いた計測も2023年度同様に進める。多量体サイズの定量も可能となった改良版の解析プログラムを用いて分子状態の平均マップを作成し、構造や環境を感度良く反映する有効なスクリーニング指標を見出す。またここで得られた知見を前項のEGFRによるシグナル伝達調節の統合的理解にも役立てる。加えて、癌変異体を標的分子として1万種程度の化合物ライブラリに対して薬剤スクリーニングの実証実験を行い、手法の有効性を評価する。
|
Report
(2 results)
Research Products
(10 results)