Project/Area Number |
23K23919
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Project/Area Number (Other) |
22H02656 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44040:Morphology and anatomical structure-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 浩隆 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (20363971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 保彦 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (00192584)
越智 拓海 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (00837180)
前嶋 翔 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (10773286)
犬束 歩 自治医科大学, 医学部, 助教 (30584776)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
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Keywords | 性経験 / 視床下部 / 神経ネットワーク / 脳機能変革メカニズム / 行動 |
Outline of Research at the Start |
初めての性経験はある種の成功体験として脳に深く「記憶」されるため、交尾を経験したオスラットでは性衝動が顕著になる。通説では、「記憶」は大脳が主に担っているとされている。本研究では、この脳機能変革メカニズムを明らかにするため、オスの性行動に関連した間脳・視床下部神経ネットワークに着目して解析を行う。性行動を司る分子・神経回路の解明から、行動レベルでの神経回路系の動作原理の解明を通じて、性経験インパクトがどのように視床下部神経ネットワークに影響をおよぼすかを明らかにする。性衝動を変化させる神経回路メカニズムの解明は、性衝動を任意にコントロールする新しい技術の創出にもつながることが期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
性欲は最も強い欲求のひとつであり、性衝動のコントロールは健やかな社会生活をおくる上で極めて重要である。異常な性衝動により、社会的損失を繰り返しても性的な行為がやめられない依存症状態になり得る。一方、初めて交尾を経験したオスラットは性衝動が顕著になる。初めての性経験はある種の成功体験として脳に深く「記憶」されるため、交尾を経験したオスラットでは性衝動が顕著になる。性経験が「脳」の中でどのような因子により「記憶」され、また、どのようにして行動レベルで影響するのか、といった神経メカニズムは不明であった。これまで「記憶」に関しては、海馬をはじめとした大脳機能がクローズアップされてきた背景があり、本能行動・自律神経系を司るとされる「間脳の視床下部領域」は、高次機能である「記憶」とは切り離して議論されてきた。そこで本研究では、この脳機能変革メカニズムを明らかにするため、応募者がこれまで明らかにしてきたオスの性行動に関連した間脳・視床下部神経ネットワークに着目して解析を行う。性行動を司る分子・神経回路の解明から、行動レベルでの神経回路系の動作原理の解明を通じて、性経験インパクトがどのように視床下部神経ネットワークに影響をおよぼすかを明らかにする。2023年度ではオスの性行動を司るmPOAを求心性に制御するGRPニューロンとして扁桃体領域の神経核Xニューロン群を同定した。この発見により、今後の研究が飛躍的に進展することが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性衝動起始核(mPOA)-ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)陽性ニューロンを活性化する神経入力の同定 研究代表者の坂本はこれまでに、GRPR陽性ニューロンは脊髄のみではなく性衝動の起始核(mPOA)においてもオス優位な性差があることを見出してきた。さらにラットのmPOA外殻部において、GRP陽性線維が性経験依存的に増強することを確認している。しかし、このmPOA外殻部のGRP陽性線維がどこに由来するのかは不明であった。そこで本年度は、mPOAに投射するGRPニューロンを同定し、mPOAに入力するGRPニューロンによる性行動調節メカニズムを明らかにすることを目的とした。まず、mPOAに入力するGRPニューロンを同定する目的で、終末領域から逆行性に感染し、GRPプロモータ活性を利用してGRP発現細胞でのみ組み換え酵素Creを発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV(retrograde: rg)-pGRP-Cre)を、Cre依存的に赤色蛍光タンパク質(tdTomato)を発現する遺伝子改変ラットに投与した。結果、様々な脳領域においてtdTomato陽性ニューロンが観察された。本研究では、その中でも神経核Xに着目した。次いで、雄ラットのmPOAにAAV(rg)-pGRP-Creを、神経核XにCre依存的に膜移行型緑色蛍光タンパク質(palGFP)を発現するAAV-FLEX-palGFPを投与し、神経核Xに発現するGRPニューロンの軸索末端に至るまでを可視化した。その結果、palGFP陽性線維はmPOAにおいて顕著に観察された。これらのことから、神経核XニューロンとmPOAshellニューロンが密に神経連絡していることが示された。以上のように、おおむね順調に進展しているものと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究により、オスの性行動を司るmPOAを求心性に制御するGRPニューロンとして扁桃体領域の神経核Xニューロン群を同定した。このことから、2024年度では、神経核XニューロンがmPOAを介してオス性行動を制御していることが示唆された。2024年度では、まず、AAV(rg)-FLEX-ジフテリア毒素Aサブユニット(DTA)を用いて、mPOAから逆行性に扁桃体の神経核Xニューロンを特異的に破壊する。破壊後、オスの性行動を指標にして解析を進める。行動解析は、マウント、イントロミッション(ペニスの挿入)、射精などの各種行動パラメータの発現のタイミングと、神経活動パターンを解析する。 さらに、嗅覚選好性テストを併用して発情メスに対するオスの選好性も定量化し、性行動解析の結果と比較する。続いて、AAVベクター系を用いて、オスの性行動時の神経核Xニューロンの神経活動をin vivoでカルシウムイメージングすることにより、リアルタイムで解析していく予定である。一方、神経核XニューロンはGRPニューロンであると同時に、古典的な神経伝達物質により経シナプス的にmPOAニューロンを制御している可能性が高い。そこで2024年度では、神経核Xニューロンの神経伝達物質についても解析を進め、神経核Xニューロンで使用される神経伝達物質を同定することにより、これらのニューロン群が興奮性ニューロンなのか、あるいは抑制性ニューロンなのかを明らかにする。これらの解析により、mPOAおける神経核Xニューロンの作用機序の解明も目指す。以上の成果をまとめ、2024年度中に論文化し、国際科学雑誌へ投稿することを計画している。
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