Project/Area Number |
23K23956
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Project/Area Number (Other) |
22H02693 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岸田 拓士 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40527892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 真史 東海大学, 人文学部, 准教授 (00566961)
西岡 佑一郎 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (00722729)
中西 利典 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (10462582)
樽 創 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (50260344)
瀬川 高弘 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (90425835)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
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Keywords | 古代DNA / 保全遺伝学 / 集団ゲノミクス / 称名寺貝塚 / 縄文時代 / ミナミハンドウイルカ / カマイルカ / 動物考古学 / 海獣類 / 縄文貝塚 / 海棲哺乳類 |
Outline of Research at the Start |
現在の生物多様性の健全性を評価し、将来に向けた保全を考える上で、過去の多様性を理解することは不可欠である。日本列島に人類が定住してから現在までの間に、この地域の動物相は大きく変化してきた。本研究では、日本の在来動物に着目して、彼らの遺伝的多様性に関して縄文時代から現在に至る時系列的な変遷を調べることで、日本における動物相の変遷とその背後にある人為的影響を解明する。日本の動物相の「本来あるべき姿」や在来動物の絶滅へと至る過程を明らかにすることで、今後の保全計画における指針を提供する。
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Outline of Annual Research Achievements |
横浜市金沢区に位置する縄文時代後期初頭の称名寺貝塚は、海獣類を捕獲するための専用の銛やヤス、それに多くの海獣類の骨が出土しており、東京湾における先史時代捕鯨を今に伝えている。この貝塚から出土した小型鯨類(イルカ類)の骨からDNAを抽出してミトコンドリア配列の解読を行うとともに、骨に含まれるコラーゲンを用いて放射性炭素年代測定を行い、捕鯨が行われた年代と当時の東京湾における鯨類の遺伝的多様性を調べた。解析したイルカ類のほとんどはミナミハンドウイルカあるいはカマイルカのどちらかの種に分類され、特にミナミハンドウイルカに関しては、現在の御蔵島(東京都御蔵島村)個体群に固有のミトコンドリアハプロタイプ、およびそれと近縁だが現在の御蔵島個体群からは見つからないハプロタイプが解読された。現在の御蔵島個体群は、縄文時代に東京湾を泳いでいた個体群の母系の直系の子孫であること、だが当時の遺伝的多様性は現在の御蔵島個体群のそれよりもはるかに高かったことが示唆された。カマイルカに関しても、現在東京湾近辺で見られる個体群と同じハプロタイプが解読された。放射性炭素年代測定を行った結果、解析した骨のほとんどは4000年よりも古いものであることが示唆された。これらの結果から、イルカ類は高い遊泳能力を持つにもかかわらず、少なくとも過去4000年間に渡って、同じ母系群が東京湾近辺に定住し続けていたことが示唆された。 また、伊豆半島には現在はクマは定住していないが、明治時代まではクマの定住的な分布が記録に残されている。明治時代に伊豆で捕獲されたツキノワグマの上腕骨からDNAを抽出してミトコンドリア配列を解読したところ、現在の南アルプスから御殿場にかけて主に静岡県北部に分布するハプロタイプと同一のものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度から所属研究機関を異動したため、本研究プロジェクトで必要とする古代DNAを取り扱うための陽圧クリーンブースを備えた専用実験室を所属先研究機関に新設した。また、横浜市埋蔵文化財センター、釧路市立博物館、オホーツクミュージアムえさしなど、縄文時代から現在にかけての多くの動物遺存体を保管する機関との共同研究体制を構築した。加えて、放射性炭素による年代推定を行うにあたって、名古屋大学宇宙地球環境研究所や静岡県立博物館「ふじのくに地球環境史ミュージアム」などとの共同研究体制も構築した。横浜市金沢区に位置する称名寺貝塚(縄文時代中期~晩期)と野島貝塚(縄文時代早期)、釧路市に位置する東釧路貝塚(縄文時代中期)と幣舞遺跡(縄文時代晩期~続縄文時代)、枝幸町に位置する目梨泊遺跡(オホーツク文化期)などから出土した動物骨からDNAとコラーゲンの抽出、およびミトコンドリアDNA配列の解読と放射性炭素年代測定を試みた。いずれの遺跡からもDNAおよびコラーゲンの抽出に成功しており、特に、寒冷な北海道の遺跡からは劣化の少ない良質なDNA分子が得られることが示唆された。また、動物骨で作られた江戸時代の根付や、明治時代に地元の猟師が捕獲した伊豆半島のクマの骨などといった歴史時代の動物遺存体からもDNA分子の抽出に成功している。さらには、釧路市の春採湖やフィリピンのパイタン湖などの湖底堆積物のボーリングコアからの古土壌環境DNAの抽出と解読にも着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
先史時代から現在に至る動物骨の収集やDNA抽出、年代測定に関して、今年度までにそのネットワークや手法を確立させることができた。次年度以降は、ゲノム全長の解読と解析に注力する。まずはニホンアシカのゲノム解析を予定している。ニホンアシカは20世紀中葉に絶滅した海棲哺乳類であり、先史時代から中世にかけて日本各地の遺跡から出土することから、かつては日本列島沿岸に広く分布していたことが示唆されている。東京湾に面した称名寺遺跡から出土した縄文時代後期のニホンアシカ2個体のミトコンドリアDNAの一部配列を解読して解析を行ったところ、うち1個体は確かに既知のニホンアシカのミトコンドリア配列多様性の範囲内に収まるものであったが、もう1個体は、ニホンアシカおよび近縁なカリフォルニアアシカのちょうど中間的な配列を示した。縄文時代の日本沿岸には、ニホンアシカに加えて未記載のアシカ種が存在したのか。これら2個体のゲノム解析を通して先史時代の日本列島のアシカ類の遺伝的多様性を明らかにする。こうした古代サンプルのゲノム全長の解析に加えて今年度からは、地質コアからの古土壌環境DNAの解析を行う。骨の形で残される試料はごくわずかであり、また生物学のみならず考古学的な資料価値も高いため、容易に削ることは許されない。だが、DNA分子が残されるのは骨だけではない。貝塚などの土壌にも残されていることが期待される。こうした古土壌に含まれる古代のDNA分子を得るために、地質コアからのDNA抽出方法の確立を試みる。
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