Project/Area Number |
23K23973
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Project/Area Number (Other) |
22H02710 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45050:Physical anthropology-related
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Research Institution | University of Hyogo (2023-2024) Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences (2022) |
Principal Investigator |
郷 康広 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (50377123)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
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Keywords | シングルセル / オミクス解析 / 霊長類 / 脳 / 進化 / ヒト / チンパンジー / 類人猿 / オミックス / オミックス解析 |
Outline of Research at the Start |
ヒトの知性をつかさどるヒト特異的な脳細胞は果たしてあるのか? この問いにヒトと類人猿4種の死後脳を用いた、1細胞解像度の遺伝子発現解析、クロマチン動態解析、空間遺伝子発現解析、空間タンパク質発現解析の4次元統合マルチオミックス解析により解明することを目的とする。得られた結果から、ゲノムという設計図が脳という場においてどのように時空間的に制御され、種の固有性・特殊性となって現れるのか、1細胞が持つ分子情報をデジタル情報として網羅的に読み出し、種間比較することで、ヒト脳の特異性を担保する「ヒト特異的脳細胞」を定義・同定・評価し、「ヒトとは何か」という問いを明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヒトらしさをつかさどるヒト特異的脳細胞を同定するために、ヒトと類人猿の死後脳を用いたシングルセル比較トランスクリプトーム・エピゲノム解析を行った。ヒトや類人猿は実験動物ではないため、新鮮な脳試料を入手することが難しい。そのため、シングルセル解析に通常用いられる生細胞ではなく、凍結試料でも使用が可能であると考えられている細胞核を用いたシングル核解析の実験プロトコル・解析パイプラインを構築し、実験を推進した。シングル核単離プロトコルの構築は、遺伝子発現制御に重要なエピゲノム状態を規定するクロマチン状態(クロマチンが開いていて転写因子などがアクセスできる状態にあるかどうか)を解析する上でも必須である。 令和5年度は、上記で構築・単離したシングル核サンプルを用いて、長鎖型シーケンサーによる1細胞完全長トランスクリプトーム解析と短鎖型シーケンサーによる遺伝子発現とクロマチンアクセシビリティを同一細胞で同時取得するマルチオーム解析を行った。 長鎖型シーケンサーを用いた1細胞完全長トランスクリプトーム解析では、ヒト2検体、チンパンジー1個体、ゴリラ1個体死後脳の海馬から単離したシングル核サンプルを用いて実験と解析を行った。解析の結果、ヒトの海馬において特異的に発現する(チンパンジーやゴリラの海馬においては発現しない)エクソンを持つ遺伝子を多数同定した。その多くは、興奮性および抑制性神経細胞において発現しており、精神神経疾患に関係する遺伝子も多数含まれていた。 短鎖型シーケンサーを用いたマルチオーム解析では、ヒト4検体、チンパンジー6個体、ゴリラ2個体、オランウータン1個体、テナガザル2個体の死後脳の前頭前野から単離したシングル核サンプルを用いてライブラリ作成とシーケンス解析を行い、現在データ解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長鎖型シーケンサーを用いた1細胞完全長トランスクリプトーム解析では、ヒト2検体、チンパンジー1個体、ゴリラ1個体死後脳の海馬から単離したシングル核サンプルを用いて実験と解析を行った。サンプルあたり平均2,400万リードのデータを用いて解析した結果、ヒト(2検体)でそれぞれ24,864遺伝子と210,625アイソフォーム、26,682遺伝子と314,494アイソフォームを得た。同様にチンパンジーとゴリラからも、それぞれ16,113遺伝子と189,751アイソフォーム、14,440遺伝子と59,481アイソフォームを得た。これらを用いて、ヒト特異的な発現エクソンを持つ遺伝子を639遺伝子同定した。その中には、精神神経疾患に関係する遺伝子も多数含まれていた。 短鎖型シーケンサーを用いたマルチオーム解析では、ヒト4検体、チンパンジー6個体、ゴリラ2個体、オランウータン1個体、テナガザル2個体の死後脳の前頭前野から単離したシングル核サンプルを用いてライブラリ作成とシーケンス解析を行い、現在データ解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
短鎖型シーケンサーを用いたマルチオーム解析プラットフォームは、同一細胞(細胞核)から遺伝子発現データとクロマチンアクセシビリティデータのマルチモーダルなデータが取得できるだけでなく、同一ライブラリを長鎖型シーケンサーを用いることで、1細胞完全長トランスクリプトーム解析を短鎖型シーケンサーで用いたものと同じ細胞核で行うことが可能である。つまり、同一の細胞核から、遺伝子発現解析、クロマチンアクセシビリティ解析、アイソフォーム解析の三つの異なるレイヤーの情報が取得可能になる。実際に、マルチオーム解析用に作成したライブラリは長鎖型シーケンサーにも解析可能な状態で保存しており、令和6年度は、それらのライブラリを用いた1細胞完全長トランスクリプトーム解析を行い、ヒトと類人猿4種の三つのモダリティデータを用いた統合解析により、ヒトらしさを担保する分子脳基盤の解明に取り組む。
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