Project/Area Number |
23K23995
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Project/Area Number (Other) |
22H02732 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 46030:Function of nervous system-related
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Research Institution | Institute of Science Tokyo |
Principal Investigator |
松田 隆志 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (90803065)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
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Keywords | 感覚性脳室周囲器官 / 脳弓下器官 / ミクログリア / アンジオテンシンII / 血圧制御 / 高血圧 |
Outline of Research at the Start |
高血圧症の発症には生活習慣や遺伝的素因に起因した様々な要因が関わっており、近年、その原因の1つとして脳内炎症による交感神経系の活動亢進が関与している可能性が指摘され始めた。また、脳内において細胞性免疫を担うミクログリア細胞が神経細胞の活動を調節していることも示唆されている。しかしながら、脳内の炎症反応による血圧制御の詳細なメカニズムは不明である。本研究では、薬理学的手法や化学遺伝学的手法などを組み合わせて用いることによって、ミクログリア細胞の活動を人為的に制御することによる血圧への影響を解析する。これにより、脳内炎症を起点とした血圧制御機構の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳は全身の血圧を適切にコントロールするために様々な体内情報を統合処理している。特に、感覚性脳室周囲器官(sCVOs)は、血液-脳関門が欠損している特性から体液情報をモニターし、その情報に基づいて様々な生理機能を制御している。sCVOsが制御する生理機能には血圧に加えて水分・塩分欲求や排尿などが挙げられる。本年度に発表した総説論文(Noda & Matsuda,PJA Series B, 2022)ではsCVOsによる血圧制御を含めた体液恒常性維持機構について総合的に解説している。また、sCVOsが制御する生理機能について学会発表(招待講演)や図書の分担執筆を行い、研究成果の周知を図った。 sCVOsの下流の1つに血圧制御中枢と呼ばれる脳領域が存在しており、この血圧制御中枢において集約・統合されたシグナルが交感神経系の活動制御を介して血圧を制御していると考えられている。近年、これらの血圧制御に関わる脳領域の免疫細胞の活動が血圧制御に関与していることが指摘され始めている。本研究では、sCVOsにおいて脳内免疫細胞が局在していることから、この免疫細胞が血圧制御に関与しているのか検討を進めている。 本年度においては、sCVOsの免疫細胞の活動が血圧制御と相関性を示すことを確認すると共に、レンチウイルスベクターを用いて特定の脳領域の免疫細胞に任意の遺伝子導入を実施する手法の確立を行った。この手法を用いて、来年度はsCVOsの免疫細胞の活動を人為的に操作することを試みる。また、sCVOsの免疫細胞が血圧を制御するためには神経細胞の活動を制御する必要があると予想される。本年度では、免疫細胞が分泌すると予想される炎症性サイトカインがsCVOsの神経細胞を活性化し、血圧上昇を誘導することを確認している。 本年度の研究成果をもとに、次年度からより詳細な血圧制御メカニズムの解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、まず、免疫細胞の活動が血圧制御に関与しているのか検討した。アンジオテンシンIIの慢性投与によってマウスに高血圧を誘導した後、免疫細胞の活動を抑制するミノサイクリンを経口投与して血圧を測定した。その結果、ミノサイクリン投与群において血圧上昇が抑制されることを確認した。また、高血圧誘導時において感覚性脳室周囲器官(sCVOs)の免疫細胞を観察したところ、脳弓下器官(SFO)および終板脈管器官(OVLT)のIba-1陽性細胞において免疫細胞の活性化マーカーである主要組織適合抗原クラスII(MHCII)の発現が増加していた。一方で、ミノサイクリンを投与したマウスでは、MHCIIの発現は抑制されていた。このことから、sCVOsの免疫細胞の活動と血圧に相関性があることが示唆された。 次に、sCVOsの免疫細胞の活動が血圧制御に影響するのか検討するため、免疫細胞の人為的な活動制御の手法の確立を目指している。免疫細胞のマーカー分子であるCX3CR1の発現細胞においてCreリコンビナーゼ(Cre)を発現する遺伝子改変マウス(CX3CR1-Creマウス)とCre依存的に目的遺伝子を発現させるレンチウイルスベクターを組み合わせることで、sCVOsの免疫細胞選択的に蛍光分子を遺伝子導入することに成功した。この手法を用いて、来年度以降に免疫細胞の人為的な活動制御を試みる。 活性化した免疫細胞は、炎症性サイトカインを介して神経細胞の活動を制御することが推定される。そこで、脳室内に炎症性サイトカインであるTNF-αを投与したところ、血圧上昇と共にSFOおよびOVLTに加えて血圧制御中枢において神経細胞活性化マーカーであるFosの発現が増加していた。 本年度の研究成果から、sCVOsの免疫細胞が血圧制御に関与していることを示唆する結果が得られており、当初の計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、高血圧誘導時においてsCVOsであるSFOおよびOVLTの免疫細胞の活動レベルが上昇しているものと考えられる。来年度は、これらの免疫細胞が血圧制御に直接的に関与しているのか検討するため、今年度に確立したレンチウイルスベクターによる免疫細胞に対する遺伝子導入法を用いて、SFOおよびOVLTの免疫細胞に活性化型変異型ムスカリン受容体(hM3D(Gq))を発現させ、人工リガンドを投与することによって免疫細胞の活動を人為的に制御できるか試みる。また、経時的な血圧変化を測定するため、上述の手法とテレメトリーシステムを組み合わせることによって、免疫細胞の活動に対して血圧がどのような応答を示すのか経時的に解析する予定である。 また、脳内の免疫細胞が血圧制御に関与しているのか検討するため、免疫細胞を除去する手法の確立を試みる。特に、SFOおよびOVLT選択的に免疫細胞を除去する手法の確立を目指す。レンチウイルスベクターによる遺伝子導入あるいは遺伝子改変マウスの組み合わせにより、免疫細胞にジフテリア毒素受容体を発現させたマウスにジフテリア毒素を投与することによって、SFOおよびOVの免疫細胞を選択的に除去することが可能か検討する。 今年度において、Cre依存的に蛍光カルシウムセンサーであるGCaMP6sを発現させることが可能なマウスとCX3CR1-Creマウスを組み合わせることによって、免疫細胞にGCaMP6sを発現させたマウスを作成した。このマウスのsCVOsにGRINレンズを挿入し、小型蛍光顕微鏡を用いることによって細胞内カルシウム濃度変化を指標として、in vivoにおける免疫細胞の活動を単一細胞レベルで経時的に解析する手法を確立した。来年度はこの手法を用いて、高血圧誘導時におけるsCVOsの免疫細胞の活動レベルの変化を解析する。
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