膵癌における反復配列RNAの機能解析と治療選択最適化への応用
Project/Area Number |
23K24090
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Project/Area Number (Other) |
22H02828 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49010:Pathological biochemistry-related
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Research Institution | Okayama University (2023-2024) The University of Tokyo (2022) |
Principal Investigator |
大塚 基之 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90518945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 玲緒 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がんエピゲノムプロジェクト, プロジェクトリーダー (60607985)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,410,000 (Direct Cost: ¥5,700,000、Indirect Cost: ¥1,710,000)
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Keywords | 膵がん / 反復配列RNA |
Outline of Research at the Start |
膵癌の予後改善のためには、早期発見のためのバイオマーカーの新規同定とともに、1) 発癌機構の解明に基づく癌予防法の開発、2) 癌化後の適切な治療法の選択が喫緊の課題である。近年、通常の解析では解析対象から外されることの多い反復配列RNAと呼ばれる特徴的な配列を持つnon-coding RNAの癌スクリーニングへの応用法を見いだした。本研究では、ヒト膵発癌過程の早期から異常発現してくるHSTII-RNAについて、1) 癌化プロセスにおける生物学的な機能を解析するとともに、2) そのRNAの発現をマーカーとした治療選択における有用性について検討し、膵癌の予後改善に寄与することを目標としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
通常の解析では解析対象から外されることの多い反復配列RNAと呼ばれる特徴的な配列を持つnon-coding RNAが 膵癌で高発現しており、それを血中で高感度に検 出可能にする方法(TRAP-digital PCR法)を考案して癌スクリーニングでの有用性を見いだした。本年は、昨年度に引き続いて、新たな展開として、ヒト膵発癌過程の早期から異常発現してくる反復配列RNAのひとつであるHSTII-RNAについて、癌化プロセスにおける生物学的な機能を解析することとした。HSATII RNAを発現するコンストラクト(基本となる配列を3つ連結したもの)をヒト不死化膵管上皮細胞に発現させ、a) RNAsequencing による遺伝子発現変化、b) 細胞内シグナル伝達機構の活性化状態の変化、c) HSATII RNAに結合する蛋白の同定、を中心としてHSATII RNA発現がもたらす機能変化を解析する予定として、特にRNA IP と質量分析によって同定したHSATII RNAと結合する蛋白に、Smc6蛋白 に着目した。 Smc6蛋白はSmc5蛋白らと複合体を作り染色体安定性や相同組み換え修復に寄与するが、HSATII RNAの細胞内局在は細胞質が主体のため、細胞癌化の観点からは「RNAによるDNA修復蛋白の細胞質での捕捉が 遺伝子変異蓄積を惹起する」と考え、「遺伝子変異の惹起」とリンクする現象について注目した解析を進めている。実際に、HSATII RNA発現細胞ではDNA障害のマーカーであるgH2AXの発現が核内で増えていることも確認した。本年度はさらに、Smc5/6のノックアウト細胞を樹立したところ、HSATII RNAが発現がしたときと同様にgH2AXの発現が増え、DNA損傷が増加していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Non-coding RNAの研究はmicroRNA、long-non coding RNA、環状RNA など、さまざまな分子を対象として世界的に進められているが、本研究では、まだ広く研究されていない反復配列を持つRNAについて、これまでの申請者らの研究をさらに発展させて、特にヒト膵管上皮細胞内で反復配列を持つRNAが異常発現したときのoncogenic な potential に着目した機能解析を進めることができている。「従来の解析手法では注目されてこなかったヒト膵癌の癌化過程で異常発現する反復配列RNAは、潜在的な変異原として機能しているのではないか?」という観点から、染色体安定性や相同組み換え修復に寄与するSmc6蛋白と結合することを同定でき、今後のSmc蛋白の過剰発現によるレスキューなどを含め、DNA障害の蓄積を経た発癌機構について検討を続ける基盤をつくることができた。本年度はさらに、Smc5/6のノックアウト細胞を作成し、その結果、HSATIIRNAが発現した時と同様にgH2Axの発現が増え 核内のDNA損傷が増えていることが示唆された。これらの結果は、HSATII RNAの発現そのものが 発癌に寄与していることを示唆しており、本年度はそれを同定することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
Smc蛋白の過剰発現によるレスキューなどを含め、DNA障害の蓄積を経た発癌機構について検討を続ける基盤をつくることができた。今後、PDXを用いた検証、膵癌 細胞株の3D培養による内在性のHSATII RNA発現に伴う遺伝子異常の経時的蓄積、あるいは発現機構自体に対する介入によるレスキュー効果の検証も含めた実験を進めて、HSATII RNAによる発癌機構を同定する。さらに、HSATII RNAによるSmc複合体機能の阻害による相同組み換え修復阻害に立脚した「BRCAness」との類似性に基づき、BRCA変異癌で効果が高いPARP阻害剤の効果が得られる膵癌亜型として提唱できないか検討することで、治療選択への応用という観点からも研究を進めていく。実際に、Smc5/6のノックアウト細胞ではBRCA変異と同様にPARP阻害剤の効果が得られないか検討を進めているところである。
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Report
(2 results)
Research Products
(9 results)