自然免疫反応とCOX2/PGE2経路による転移微小環境の構築
Project/Area Number |
23K24160
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Project/Area Number (Other) |
22H02899 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大島 浩子 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (80362515)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥13,000,000 (Direct Cost: ¥10,000,000、Indirect Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
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Keywords | 微小環境 / 転移 / 大腸がん / 消化器がん |
Outline of Research at the Start |
これまでに、消化器がんで認められるドライバー遺伝子変異を導入したマウスモデルを作製し、発生した腫瘍からオルガノイドを樹立して、それらの脾臓移植による肝転移モデルを樹立した。これまでの予備的実験結果により、宿主側の自然免疫反応、および炎症シグナルが肝転移巣形成に何らかの役割を果たすと考えられた。本研究では、これまでに樹立したオルガノイド移植モデルを使って、TLR2/4を介した自然免疫反応と、COX2/PGE2経路を介した炎症反応に着目し、微小環境が、がん細胞の生存や増殖、運動性などを制御するメカニズムを個体レベルおよび分子レベルで明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究グループは、これまでにヒト大腸がんで多く認められる、4種類のドライバー遺伝子、Apc、Kras、Tgfbr2、Trp53を導入したマウスモデルを交配により作製し、腸管に発生した腫瘍組織からオルガノイドを樹立した(以下、AKTP細胞)。また、ヒト胃がん腫瘍では、Wntリガンド(W)依存的な腫瘍が多く存在することから、胃粘膜細胞でWntリガンドを発現し、さらにKras、Tgfbr2、Trp53を導入したマウスモデルを交配により作製し、WKTP細胞を作製した。これらのAKTP及びWKTP細胞は、脾臓移植あるいは門脈注射により肝転移させる事が出来る。このモデルでは、免疫反応の正常なC57BL/6への移植が可能であり、ヒト転移巣と類似した、線維芽細胞の増殖による間質増生と、マクロファージやリンパ球浸潤による炎症性微小環境形成が認められる。本研究では、このモデルを用いて、転移形成における宿主反応の関与について、炎症性微小環境形成、自然免疫反応、繊維化形成に関連する遺伝子欠損マウスを用いた移植実験による検討を実施した。これまでにAKTP細胞の肝転移形成に、PGE2受容体のEP4、Toll様受容体のTLR2/4、さらにTGFbeta経路が関与している可能性が示唆された。宿主マウスがTgfbr2遺伝子欠損マウスだと、転移巣形成が著しく抑制され、それに伴い、alphaSMA陽性細胞数も有意に減少した。この結果から、TGFbetaシグナルが肝転移巣に形成される繊維化に関与していることが明らかとなった。GFPマウスからの骨髄移植実験から、alpha-SMA陽性細胞の多くがGFP陽性細胞ではなかったことから、これらの細胞は、骨髄由来ではないことが明らかとなった。これらの結果は、肝転移に関わる微小環境の形成に、肝臓に存在している肝星細胞(HSC)の活性化が重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、炎症経路COX2/EP4経路、自然免疫に重要な経路である、Toll様受容体のTLR2/4の遺伝子、およびMyd88欠損マウス、さらに、線維化に重要と考えられるTGFbeta経路を遮断するためにTgfbr2遺伝子欠損マウスに、ヒト大腸がんで認められるのと同じドライバー遺伝子変異を導入したAKTP細胞を脾臓移植した。この結果、自然免疫に重要な経路である、Toll様受容体のTLR2/4の遺伝子欠損マウスでは肝転移巣形成が抑制された。しかし、TLRのコファクターであるMyd88遺伝子欠損マウスでは、肝転移巣形成が抑制されなかった。この結果から、Myd88を介さないTLR2/4シグナル関与が考えられたため、TRL4/TRIFを介した経路が関与している可能性を考え、TRIF欠損マウスを導入し、AKTP細胞を移植して転移巣形成に関与しているかどうか、検討した。転移能抑制の傾向は認められたが、有意差は得られなかったが、さらにマウスの個体の数を増やした検証実験が必要と考えられた。また、炎症経路の中で、COX2/EP4経路の重要性を確認するため、COX-2阻害剤やEP4阻害剤の投与を移植マウスに行ったが、明らかな転移巣の抑制は認められなかった。しかし、腫瘍巣の腫瘍形態が変化していることが観察されており、これが腫瘍の抑制に関わる可能性があるのかどうか、さらに検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、胃がん・腸管がんおよび胆管がんマウスモデル、およびマウス腫瘍由来オルガノイド、そしてがん随伴線維芽細胞(CAF)を用いた実験を実施する。以下の研究を実施する。 (1)がん随伴線維芽細胞(CAF)の樹立に苦労している。これまでに宿主側の反応で関与が示唆された、COX-2/PGE2/EP4経路または、TLR2/TLR4経路の検証のため、EP4遺伝子およびTLR2/4遺伝子欠損がん随伴線維芽細胞(CAF)の樹立を試みたが、初代での培養は可能だが継代が困難で、実験に使用するのが難しい。このため、EP4欠損マウスおよびTRL2/4遺伝子欠損マウスで、それぞれp53遺伝子を欠損する複合欠損マウス(Trp53/EP4/ROSA-CreERT2マウス)と、(Trp53/TLR2/4マウス)を作製し、AKTP細胞を脾臓移植して、肝臓転移巣からがん随伴線維芽細胞(CAF)を単離し、継代可能なCAF単離を試みる。 (2)樹立したimmortalizedしたimCAFの細胞とAKTPおよびWKTP細胞との共培養実験を行い、CAF活性化やオルガノイドの増殖、運動、および形態変化について解析する。また、CAFの活性化の指標として、CAFの伸縮性のアッセイをAKTPやWKTPの培養上清(CM)を用いて検証する。 (3)これまでの結果から、TLR2/TLR4経路が転移肝腫瘍巣形成に関与している可能性があるが、TLRの重要なco-factorであるMyd88の遺伝子を欠損させても転移肝腫瘍巣形成は抑制されないことが明らかとなった。そこで、Myd88を介さないTLR 4/TRIF経路の関与を検討するため、TRIF遺伝子KOマウスの数を増やして、AKTP細胞移植実験により、肝転移巣形成についてさらに検討する。また、TLR4単独の遺伝子欠損マウスを作製することを計画している。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)