Project/Area Number |
23K24166
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Project/Area Number (Other) |
22H02905 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
原田 浩徳 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10314775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 結花 地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立駒込病院(臨床研究室), 臨床試験科, 部長 (50379848)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,890,000 (Direct Cost: ¥5,300,000、Indirect Cost: ¥1,590,000)
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / ミトコンドリア動態異常 / 炎症性シグナル経路 / 骨髄不全 / BMTモデル / MDSモデルマウス / ミトコンドリアダイナミックス異常 / ミトコンドリア断片化 / 自然免疫系シグナル経路 / DAMPs / ROS / mtDNA |
Outline of Research at the Start |
骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞の異常に起因する難治性の血液がんである。その発症に関わる遺伝子変異は多数同定されたが、クロ ーン優位性の獲得と細胞死が共存する複雑な病態の発症機序は未だ解明されていない。申請者らはMDS患者の造血幹細胞・前駆細胞で過剰なミ トコンドリアの断片化が生じていることを発見し、これが炎症性シグナル経路の活性化をきたし、MDS病態の根幹となっていることを明らかに した。本研究では、ミトコンドリア断片化が炎症性シグナル経路活性化を誘導する分子基盤を明らかにし、前臨床試験を実施する。これにより MDS共通の病態が解明され、MDSに対する新規治療戦略の礎となることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes, MDS)は、造血幹細胞の異常に起因する難治性の血液がんである。その発症に関わる遺伝子変異はこれまでに多数同定されたが、クローン優位性の獲得と細胞死が共存する複雑な病態の発症機序は未だ解明されていない。我々は、MDS患者の造血幹細胞・前駆細胞で過剰なミトコンドリアの断片化が生じていることを世界で初めて発見した。新規に樹立したMDSモデルマウスや多数例の患者細胞を解析した結果、遺伝子変異の種類によらず、ミトコンドリアの過剰な断片化が炎症性シグナル経路の活性化をきたし、MDS病態の根幹となっていることを明らかにした(Cancer Discovery 2022)。本研究では、この最新の研究成果に基づき、ミトコンドリア断片化が炎症性シグナル経路活性化を誘導する分子基盤を明らかにし、これを標的とした前臨床試験を実施することを目的とした。 ミトコンドリアの過剰な断片化に伴う炎症性シグナル経路活性化の機序を明らかにするため、MDSモデルマウスの骨髄細胞の細胞質中で増加しているミトコンドリア由来成分について検討した。さらに、ミトコンドリア分裂阻害剤(mdivi-1)投与後のMDSクローンのROSおよびミトコンドリア由来DMAPsのレベルを測定し、ミトコンドリアの過剰な断片化との関連性を検証した。ミトコンドリアの過剰な断片化の過程において、MDSクローンの細胞質中にミトコンドリア由来ROSおよびmtDNAが大量に放出されていた。さらに、MDSクローン中ではミトコンドリア断片化を起点としてcGAS-STING経路が活性化し、インターフェロンの過剰産生が誘導されていることが明らかとなった。MDSクローンの細胞質中にmtDNAが放出され、これらが起点となってcGAS-STING経路を活性化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDSマウスから採取した腫瘍クローン造血幹細胞・前駆細胞(HSC/Ps)では、ミトコンドリア断片化を伴う細胞の割合が顕著に増加し、このMDSマウスにmdivi-1を投与すると、vehicle投与群に比べてミトコンドリア断片化を有する細胞の割合が半減した。このMDSマウスの細胞質中のROSレベルを評価したところ、MDSマウスでは細胞質ROSレベルが著しく上昇していた。一方、mdivi-1投与後のMDSマウスでは、それに伴ってROSレベルが著しく低下していた。また、MDSマウスから核とミトコンドリアを除く細胞質画分を回収し、細胞質中に含まれるmtDNAを評価した。その結果、細胞質中で増加していたmtDNAが、mdivi-1投与後には有意に低下していることがわかった。以上の結果から、ミトコンドリアの過剰な断片化の過程において、MDSクローンの細胞質中にミトコンドリア由来ROSおよびmtDNAが大量に放出されていることが示された。 また、Mdivi-1投与によってその発現が顕著に低下した遺伝子群において、最も有意な変化を示した遺伝子群としてインターフェロン応答に関連遺伝子群が抽出された。そこで、MDSクローンの細胞質内において、mtDNAをcGASが感知することでcGAMPが合成され、その結果下流のSTINGが局在変化を起こすことでインターフェロンの産生が誘導されるかを検証した。MDSマウスのc-Kit+細胞では、cGAS-STING経路の活性化マーカーとして知られているTANK-binding kinase1(TBK1)の恒常的リン酸化が生じていることが明らかになった。 MDSクローンの細胞質中にはmtDNAが豊富に含有されており、これらが起点となってcGAS-STING経路を活性化していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きMDSマウスを用いて、ミトコンドリア断片化の結果生じる炎症性細胞死の種類、細胞死が顕著におこる細胞系統と分化ステージ、細胞死に伴って循環中に放出されるミトコンドリア由来DAMPsをはじめとする細胞内成分を解析し、MDSクローンにおけるミトコンドリア異常が細胞外に及ぼす影響を明らかにする。細胞死については、MDSモデルマウスに対して各種阻害剤を用いて、種々の細胞死(アポトーシス、パイロトーシス、ネクロトーシス、オートファジー細胞死など)の検証を継続してゆく。さらに、MDSマウスの造血細胞のミトコンドリア断片化、ミトコンドリア膜電位、細胞死等を指標にして、化合物スクリーニングを実施して創薬開発に繋げてゆく。 MDSモデルマウスで得たミトコンドリアの断片化という知見は、多数例の患者検体でも確認され、MDS症例に特徴的な所見であることを確認している。明らかとなったミトコンドリアの過剰な断片化の過程において、MDSクローンの細胞質中にミトコンドリア由来ROSおよびmtDNAが大量に放出され、cGAS-STING経路を活性化していることが、MDS患者の骨髄細胞においても同様にみられるのかを検証する。マウスで行った方法を用いて、ヒト骨髄造血器腫瘍、再生不良性貧血などの骨髄不全症など骨髄造血器疾患の骨髄細胞からCD34陽性細胞を分取し、これらのサンプルにおいて細胞質内のROS、ミトコンドリア由来DAMPsを測定、cGAS-STING経路の活性化マーカーの評価、さらに細胞死関連タンパクの測定を行う。引き続き患者サンプルを収集し、NGSによる造血器腫瘍関連遺伝子パネル検査、およびCD34陽性細胞の網羅的遺伝子発現解析を実施する。MDSモデルマウスで得られた知見について、MDS患者を用いた検証の準備状況は順調である。
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