Project/Area Number |
23K24192
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Project/Area Number (Other) |
22H02931 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50020:Tumor diagnostics and therapeutics-related
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 抗悪性腫瘍薬 / ポリ(ADP-リボシル)化酵素 / タンキラーゼ / 効果予測バイオマーカー / プレシジョン医療 |
Outline of Research at the Start |
ポリ(ADP-リボシル)化酵素タンキラーゼはWnt細胞増殖シグナルを増強する。タンキラーゼ阻害剤は同シグナルを遮断し、腫瘍増殖を抑制する。本研究は、タンキラーゼ阻害剤の制がん効果を最大化する患者層別法もしくは併用療法を考案することを目的とする。これによりタンキラーゼ阻害剤を用いたがん治療戦略が最適化され、同剤の臨床開発の成功確率が向上する。ひいては、プレシジョン医療の強化につながると期待される。研究協力者:中村彩音、周 麗亜
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Outline of Annual Research Achievements |
(1)大腸がんにおける効果予測バイオマーカーの確立 前年度までに扱ってきた患者由来大腸がん細胞(patient-derived cells: PDC)約50株について、ドライバー変異の共存状態をゲノム解析で精査し、β-カテニンの活性化様態およびタンキラーゼ阻害剤感受性との相関を網羅的に解析した。その結果、タンキラーゼ阻害剤耐性のPDCsではPIK3CAの機能獲得型変異の陽性率が有意に高いことが明らかとなった。一方、KRAS、BRAF、TP53といったその他の代表的なドライバー遺伝子の変異はタンキラーゼ阻害剤感受性と相関を示さなかった。 (2)合成致死因子の同定と機能検証 前年度までに同定した、タンキラーゼ阻害剤の細胞増殖抑制効果を増強するshRNAクローンは、様々な臓器由来のがん細胞株のうち、タンキラーゼ阻害剤耐性株を含む約3割の細胞株で阻害剤感受性化をもたらした。そこで今年度は、このような合成致死性が認められた細胞株と認められなかった細胞株を比較解析した。その結果、当該因子Xのノックダウンによってタンキラーゼ阻害剤への感受性が増大する細胞株では、当該因子Xのタンパク質発現量が多いことが判明した。 (3)併用療法の構築と作用分子機序の解明 効果増強・耐性克服に有効な併用療法を考案するため、タンキラーゼ阻害剤感受性PDCから同剤耐性細胞を樹立した。興味深いことに、この耐性細胞はタンキラーゼ阻害剤に低濃度では感受性、高濃度では耐性といういわゆるベル型用量反応性を示した。その分子機序を検討した結果、同細胞では高濃度のタンキラーゼ阻害剤がBRD3/4依存的なE2F標的遺伝子の転写と細胞周期の進行を促進することが判明した。BET阻害剤を併用するとベル型用量反応性は解消し、タンキラーゼ阻害剤感受性が復帰した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンキラーゼ阻害剤の治療指数を向上させるには、同剤に高感受性を示すがんゲノムプロファイル、もしくは同剤と相乗的な制がん効果を発揮する併用剤の設定が有効である。しかし、その具体像は不明であった。本研究は、タンキラーゼを標的とするがんプレシジョン医療への布石として、適応がん種を大腸がんとしたときの効果予測バイオマーカーを非臨床レベルで確立することを達成目標としている。昨年度までに効果予測バイオマーカーの候補因子としてShort APC(=20アミノ酸リピート領域を完全に欠失した変異型APC)とβ-カテニンタンパク質の蓄積を見出してきたが、今年度はさらに適用患者の除外基準(exclusion criteria)として、PIK3CAの機能獲得型変異を同定することが出来た。さらに重要なことに、大腸がん治療においてセツキシマブなどの既存の抗EGFR抗体薬の除外基準と位置づけられているKRASもしくはBRAFの機能獲得型変異は、タンキラーゼ阻害剤耐性とは相関せず、したがって抗EGFR抗体を適用できない患者群においてもタンキラーゼ阻害剤が有効性を示す可能性が示唆された。一方、タンキラーゼ阻害剤耐性細胞を樹立してその性状解析を進めることで、同剤にベル型用量反応性を示すがん細胞の存在が明らかとなった。このときの耐性はBET阻害剤によって克服可能であることを発見し、新たな併用療法の可能性を提唱することができた。これら一連の成果は、タンキラーゼ阻害剤の新たな作用メカニズムおよび効果予測バイオマーカーの解明、さらには併用療法の合理的デザインに結びつくと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)大腸がんにおける効果予測バイオマーカーの確立 タンキラーゼ阻害剤高感受性と判定されたPDCsを用いてゼノグラフト(patient-derived xenograft: PDX)マウスモデルを構築し、タンキラーゼ阻害剤のin vivoレベルでの制がん効果を検証する。阻害剤は経口で投与し、治療効果および副作用の指標として腫瘍体積および体重を経時的に計測する。さらにこのときの腫瘍を採材し、ウェスタンブロット等により薬力学的バイオマーカーの変動を検証する。さらに、これまでに同定したShort APCを補完する薬効予測バイオマーカーの妥当性について、臨床病理組織などを用いて検証する。
(2)併用療法の構築と作用分子機序の解明 これまでに得た成果を踏まえ、大腸がんPDC集団内の個々のがん細胞が、タンキラーゼ阻害剤、抗がん剤、およびこれらの併用でどのような応答を示すかについて、バーコード付きシングルセルRNA-seq解析で検討する。それぞれの薬剤処理で残存した細胞の遺伝子発現パターンから、(i)タンキラーゼ阻害剤および抗がん剤の増殖阻害効果には、それぞれがん幹細胞および非幹がん細胞への指向性があるのか、(ii)薬剤初期耐性(drug-tolerant persister形質)に対してがん幹細胞と非幹がん細胞の相互転換がどの程度寄与しうるか、などについて検証する。これにより、大腸がん幹細胞のターゲティング療法としてのproof-of-conceptの達成を目指す。
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