Project/Area Number |
23K24493
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Project/Area Number (Other) |
22H03234 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56050:Otorhinolaryngology-related
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Research Institution | Kobe City Medical Center General Hospital(First Clinical Division, Second Clinical Division, Third |
Principal Investigator |
山本 典生 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 部長 (70378644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 麻美 京都大学, 医学研究科, 助教 (00599524)
中川 隆之 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50335270)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50397634)
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
岡野 高之 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60642931)
十名 洋介 京都大学, 医学研究科, 助教 (80898073)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
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Keywords | 内耳発生 / 網羅的発現解析 / 遺伝子 / タンパク質 / エピジェネティクス |
Outline of Research at the Start |
本研究では、複数のオミックス(transcipitomics, genomics, proteomics, lipidomics)を駆使しマウス内耳蝸牛発生の全貌解明を目指す。胎生9.5日から13.5日のマウス内耳単一細胞の網羅的遺伝子発現解析を行い、哺乳類内耳発生に重要な分子の候補を同定する。次に、CHIP-Seqを利用して候補転写因子の下流遺伝子の同定、候補分子の遺伝子改変動物内耳の質量分析を行って候補分子の下流のタンパク質や糖脂質の同定を行い、内耳発生に不可欠なシグナル経路を同定する。さらに、その結果を発生期霊長類内耳に外挿できるかを検討し、感音難聴治療法開発の基礎情報の取得をめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は2022年度に発生期内耳から単離した単一細胞のRNAシークエンスのデータの解析を引き続き行った。具体的には、取得データの前処理、次元削減、クラスタリングののちに、偽時系列解析、RNA velocityなどの手法を使い、新規の内耳発生に重要な遺伝子の同定を試みた。 また、発生期内耳の単一細胞の網羅的遺伝子発現解析のデータから同定された内耳内の蝸牛、前庭、三半規管の3つの感覚上皮に共通に発現するbasic helix loop helix型転写因子Ebf1の内耳発生における役割を解明するため以下の実験をおこなった。まず、Ebf1の発生期内耳における発現量を定量的RT-PCRを用いて明らかにし、その局在を免疫染色やin situ hybridizationで検証した。また、Ebf1のコンベンショナルノックアウトマウスと内耳特異的なコンディショナルノックアウトマウスを用いてその表現型を内耳の形態を中心にHE染色や免疫染色で検討した。その結果、蝸牛有毛細胞や支持細胞の数が増えていることが判明したため、蝸牛内での細胞の増殖の解析を細胞増殖のS期に取り込まれる物質EdUを用いて行った。その結果、Ebf1は特定の時期に蝸牛感覚上皮の増殖を抑制することにより、有毛細胞と支持細胞の数を適正なものにしていることがわかった。また、コンディショナルノックアウトマウスの聴力を聴性脳幹反応で測定し、ノックアウトマウスでは高度難聴となっており、Ebf1は聴覚の獲得にも重要な役割を果たしていることが解明された。 さらに、内耳組織の質量分析のための予備実験を行った。成体の内耳組織切片を作成して、特定の部位(コルチ器、血管条、ラセン神経節)からレーザーマイクロダイセクションを用いて切り出したサンプルに対して、液相クロマトグラフィータンデム質量分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発生期内耳から単離した単一細胞のRNAシークエンスのデータの解析は、現時点で内耳の発生に重要な役割を果たす遺伝子の有力な候補は発見できていない。 しかし、Ebf1の内耳発生における役割については非常に多くの情報を得ることができた。定量的RT-PCRによる発現量の検討で、Ebf1は胎生9.5日で発現が始まり、胎生13.5日で最も発現量が多くなり、その後も生後まで一定量の発現量を保つことが分かった。蝸牛における局在は、感覚上皮予定領域とその内側に存在するKollikers’ organに認める。前庭、半規管では、感覚上皮予定領域の一部に発現する。Ebf1ノックアウトマウスでは、蝸牛有毛細胞と支持細胞が共に通常のマウスより数が増えていた。また、蝸牛回転数はノックアウトマウスで少なく、蝸牛鼓室階やらせん板縁が消失していた。感覚上皮の有毛細胞や支持細胞の数が多くなっているメカニズムとしては、感覚上皮予定領域の増殖がノックアウトマウスでは胎生13.5日目のみで亢進していることがEdUを用いた研究で判明した。一方、前庭や半規管は通常の形態であった。これらのことから、Ebf1は蝸牛の適切な回転数の形成、鼓室階の形成、ラセン板縁の形成に重要であるとともに、感覚上皮予定領域の増殖を抑えることにより、適正な数の有毛細胞と支持細胞を発生させる役割があることが解明された。また、Ebf1コンディショナルノックアウトマウスは高度の難聴が生じるため、Ebf1は聴覚の獲得にも重要な役割を果たしている。 内耳組織切片からレーザーマイクロダイセクションで、コルチ器、血管条、ラセン神経節の部分を切り出し、液相クロマトグラフィータンデム質量分析を行ったところ、各サンプルから1000~2000のペプチド、100~300のタンパク質を検出することができた。各部位に特異的なタンパク質を検出するには十分な数と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
発生期内耳から単離した単一細胞のRNAシークエンスのデータの解析に関しては、引き続き、偽時系列解析のさまざまな分析方法や偽時系列解析以外のさまざまな軌道解析、RNA velocity解析、遺伝子ネットワーク解析などを続けていく予定である。 Ebf1の内耳における役割は解明したが、そのメカニズム、特にEbf1の下流で働く因子については情報が現在のところ不十分である。そこで、Ebf1ノックアウトマウスとコントロールマウスの双方から内耳組織のサンプルを回収し、それらはRNAシークエンスを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、両者の遺伝子発現のプロファイルの違いを明らかにする。またCHIP-seqを用いて、Ebf1が発現をコントロールするターゲット遺伝子を明らかにする。 また、EBF1以外の遺伝子についても検討を行う。例えば、Ebf1と同じEbfファミリーに属するEbf3はEbf1と同様、basic helix loop helix型転写因子で、内耳内の3つの感覚上皮すべてでその発現が多い遺伝子の一つである。さらに、他の遺伝子についてもEbf1を用いて行った実験と同等の実験を行っていく。 成体マウスの蝸牛において、蝸牛内の部位ごとにサンプルを抽出して質量分析が可能であった。今回確立したプロトコールを用いて、さまざまな発生段階の蝸牛の切片を作成の上、質量分析用のサンプルを蝸牛内の指定した領域(コルチ器、血管条、ラセン神経節)から切り出して調整する。それらを質量分析にかけることによって、発生段階ごとにまた各蝸牛内の亜部位ごとに特異的に多く発現しているタンパク質を同定する。
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