Project/Area Number |
23K24516
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Project/Area Number (Other) |
22H03258 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 57020:Oral pathobiological science-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柳川 徹 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10312852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田渕 克彦 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20546767)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70396612)
内田 文彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70736008)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | p62 / 口腔がん / 選択的オートファジー / 口腔潜在的悪性疾患 |
Outline of Research at the Start |
p62は我々のグループで酸化ストレスタンパク質としてクローニングした分子で、選択的オートファジーのアダプター分子として知られているが、口腔癌を含む多くの癌で発癌や進展、予後との関連が報告されている。本研究ではp62の細胞内の局在によるシグナル異常がこれらに関与するという仮説を立てて、p62の局在に変異を加えた細胞内でのシグナルの異常の検討と、その状態を表現した遺伝子改変マウスによる動物モデルで実際に生体内で異常が起きているか解析すると同時に、ヒトの体の中の発癌の過程で実際にその現象が起きていることを確認するために臨床サンプルを用いて患者のOPMDsおよび口腔がんの病理標本での状態を調べる。
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Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、p62の細胞内での局在異常によるシグナルの変化を確認するために、 I.基礎的探索として、1) in vitroの実験:核排出シグナル(Nuclear export signal :NES)配列にゲノム編集でミューテーションを入れて作出したΔNES p62-/-マウスより培養系に移した細胞の抽出液を元に網羅的プロテオーム解析を行い、発現の変化するものを検索したところ、上昇するものが325個、減少するもの59個が同定され、そのうちDPH2がp62とともに凝集して障害を引き起こすものとして期待された。ΔNES p62-/-細胞の特徴をGene Ontology(GO)解析を行い、バックグラウンド遺伝子セットと比較して有意に過剰表現されているGO termを特定した。2) in vivoの実験:ΔNES p62遺伝子改変マウスの表現型の生化学検査のデータの解析から検討し、腎臓での表現型に注目して腎臓の糸球体の構造を電子顕微鏡で野生型と比較したところ、足突起と糸球体基底膜の間に異常が認められた。 II. 臨床的探索として、筑波大学附属病院歯科口腔外科で2014~2021年に生検等から得た104検体中 口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)と診断された70例を選択し、医療記録から収集した臨床指標と 上皮異型の有無、p62については核内、細胞質、凝集群として分類し、核外輸送因子XPO1と、Ki67、p53の発現レベルについて相関を調べた。また、臨床指標および上皮異型、免疫組織学的指標とp62の核内の局在との関係について統計学的解析を行ったところ、OPMDsから発癌した群では核内p62の低発現(P=0.03)、細胞質内p62の高発現(P=0.03)、p62凝集の増大(P<0.01)で有意差を認めた。以上から細胞内のp62の局在が発がんと関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は、基礎的探索では方針を一部変更したが、臨床的探索は非常にスムーズに進んでおり、全体としては概ね良好と考えている。 I.基礎的探索はin vitroの解析において網羅的プロテオームについてはある程度の結論が出たが、遺伝子改変マウスの解析に想定以上の時間がかかっている。当初のXPO1ノックアウトの製作の到達が困難であるため、XPO1の局在についての阻害剤による解析に切り替えて行う予定としている。 II. 臨床的探索は順調に進んでおり、OPMDsを選択し、医療記録から収集した臨床指標(年齢,性別,部位,飲酒歴,喫煙歴,部位)と 上皮異型の有無を調べ、さらに、p62については評価方法を、核内、細胞質、凝集群として分類し、核外輸送因子XPO1と、Ki67、p53の免疫染色を行ったところ、癌化を認めた症例は6例であった。p62、XPO1、p53およびKi67の発現レベルの相関を調べたところ、核内p62発現はKi67発現と負の相関(r=-0.321;P<0.01)、細胞質p62発現は、Ki67発現(r=0.353;P<0.01)およびXPO1発現(r=0.380;P<0.01)と正の相関があった。XPO1発現は、ki67発現(r=0.258;P=0.03)およびp53発現(r=0.262;P=0.03)と正の相関があり、これら5つ以外の有意差はなかった事などから、p62の核排出を行うXPO1や細胞増殖などに関連することが推測され、OPMDsから発癌した群では核内p62の低発現(P=0.03)、細胞質内p62の高発現(P=0.03)、p62凝集の増大(P<0.01)で有意差を認めたことなどからも、p62の細胞内局在が増殖などのがん化に影響を及ぼしうることが臨床的にも証明され、目的は順調に達成されている。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
I.基礎的探索はin vivoの解析においてΔNES p62遺伝子改変マウスの生体内での機能の検討に想定以上の時間がかかっている一方、p62の核内での局在が生体に及ぼす変化を解析する方法としては優れた手法であり、かつ、得られる結果は示唆に富むものであるため、この方向から重点的に解析する方がより高度な結果が得られると想定されるため、これらの手法は継続する。一方、XPO1がp62を核外へ排出している可能性は非常に高く、解析の必要性が高いものの、時間的に結果を出すのが困難であることから、当初のXPO1遺伝子改変マウスの製作は中止し、培養細胞系からのデータをもとに、生化学的解析に重点を絞って進める。XPO1の阻害剤の実験を中心に、p62の細胞内の局在について調べる。さらに、前年度までに行った網羅的なプロテオーム解析やGO解析の結果からin vitroの解析を進めていく。 II. 一方、臨床的解析については、OPMDsからのがん化とp62の細胞内の局在についての関連について一定の成果が得られたため、さらに口腔癌を発症してからのp62の細胞内の局在との関連を調べる。具体的には、口腔癌の検体を約100症例を集め、臨床指標(年齢,性別,部位,飲酒歴,喫煙歴,部位)と予後、リンパ節転移、病理学的特徴(Tumor budding、YK分類など)との関連とp62の細胞内局在の関連を探る。また、幹細胞と前駆細胞の増殖活性を調節するYAPの染色も加えて、発がん経路におけるHippoシグナル伝達との関与も検討を行う。以上の推進方策により今年度は研究を進める。
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