Project/Area Number |
23K24984
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Project/Area Number (Other) |
22H03730 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63010:Environmental dynamic analysis-related
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50612256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄瀬 佳之 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00818528)
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20322844)
松田 和秀 東京農工大学, 農学部, 教授 (50409520)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,150,000 (Direct Cost: ¥5,500,000、Indirect Cost: ¥1,650,000)
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Keywords | オゾン吸収 / 森林 / 樹液流 / フラックス / 多層葉群光合成モデル / 林冠多層ガス交換モデル / 濃度勾配法 / 潜熱フラックス |
Outline of Research at the Start |
対流圏のオゾンは、日本を含む世界中で、森林の炭素固定などへの悪影響が懸念されている大気汚染物質である。オゾンは葉に吸収され、光合成などの生理機能に悪影響を与える。森林に対するオゾンの悪影響を評価するため、樹木の葉のオゾン吸収速度が世界各地で推定されているが、従来の推定では林冠内の様々なプロセスが考慮されておらず、推定の不確実性が高い。本研究では、様々な手法で森林のオゾン吸収速度を推定し、それらの比較・解析からオゾン吸収プロセスのメカニズムを解明するとともに、森林のオゾン吸収速度推定のプロセスモデルを構築する。これにより、森林に対するオゾン影響評価精度の大幅な向上が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
オゾンは森林に悪影響を与える大気汚染物質であり、適切な影響評価のためには樹木の葉の気孔から吸収されるオゾン量の評価が必要である。本研究では、【サブテーマ1】は樹木生理生態学的な推定法2種(樹液流速に基づく推定と多層葉群光合成モデルによる推定)、【サブテーマ2】は微気象学的推定法2種(濃度勾配法および潜熱フラックスに基づく推定)によって、森林のオゾン吸収速度を推定し、【サブテーマ3】において、それらを統一的に比較・解析する。 【サブテーマ1】樹液流速に基づくオゾン吸収量の推定では、コナラ、アラカシおよびスギを対象に通年の観測を実施した。前年度より調査サイトで発生しているナラ枯れの影響で、一部のコナラ対象木が枯死してしまったが、以前の観測結果も含めて、すべての樹種で通年の観測を実施できた。多層葉群光合成モデルによるオゾン吸収量の推定では、スギにおいて、前年度に測定したガス交換特性の林冠内鉛直分布に基づき、林冠位置とオゾン吸収能力の関係をモデルシミュレーションによって明らかにした。 【サブテーマ2】濃度勾配法によるオゾン吸収量の推定では、昨年度より導入したキャノピー濃度勾配法を用いて大気から森林へのオゾンフラックスを測定した。年間を通してフラックスは沈着を示し、沈着速度は昼間に高く夜間に低い日内変動を示した。昼間のピークは正午前に現れる傾向を示した。潜熱フラックスに基づくオゾン吸収量の推定では、調査サイトの観測鉄塔を用いて、高度30mの水・熱・CO2フラックスの連続観測を継続し、乱流傾度法における拡散速度の観測・解析を行った。 【サブテーマ3】これまでに開発してきた多層葉群光合成モデルを用いた気孔からのオゾン吸収モデルをベースに、新たにクチクラや土壌への沈着プロセスを組み込んだモデルを開発した。これにより、サブテーマ1とサブテーマ2を統一的に比較・検証ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【サブテーマ1】2023年度の樹液流の計測に基づくオゾン吸収量の推定については、研究計画時より多くの樹種(コナラ、アラカシおよびスギ)で観測を実施することができ、それらの成果の一部は国内外の学会発表において発表を行った。多層葉群光合成モデルによるオゾン吸収量の推定に関しては、当初予定していたコナラおよびアラカシの切り枝のガス交換測定が引き続き難しい状況ではあるが、スギに関しては前年度に測定した切り枝のガス交換速度の結果から、林冠多層葉群光合成モデルによるオゾン吸収量の推定および解析を行う事が出来た。その結果は国内外の学会発表で発表するとともに、原著論文として国際学術誌に投稿中である。 【サブテーマ2】観測鉄塔を用いた濃度勾配法によるオゾン吸収量の推定に関しては、昨年度よりキャノピー濃度勾配法を導入し、順調に通年の大気から森林へのオゾンフラックスを測定することが出来た。また、フラックスの日変化や季節変化をとらえることに成功している。また、潜熱フラックスに基づくオゾン吸収量の推定に関しても、通年の観測を実施することができ、解析に必要なデータを入手することが出来た。これらの成果についても国内外の学会において発表を行った。 【サブテーマ3】今年度実施された気孔、葉のクチクラおよび土壌と大気のフラックスを統一的に扱う事の出来るモデルの開発に成功した。これによりサブテーマ1とサブテーマ2の結果を比較する準備が整った。 以上のように、2023年度の調査は一部で遅れが出ているものの、予定よりも順調に進んでいる部分もあり、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる3年目においては、1年目あるいは2年目から始めた調査を継続し、樹木生理生態学的手法および微気象学的手法のそれぞれで推定されるオゾン吸収量の季節変化や年変動に関するデータセットを取得する。1年目および2年目に十分な進展が得られなかった部分(コナラおよびアラカシの切り枝による葉のガス交換速度の測定)については特に重点的に取り組み、他の手法によるオゾン吸収量の推定結果と比較できるようにする。それらと並行して、サブテーマ3を本格的に進め、これまでに得られている各手法によって推定されたオゾン吸収量の比較・解析を実施する。最終的には、森林のオゾン吸収量推定のためのプロセスモデルを構築する。得られた成果に関しては国内外の学会発表を行うとともに、原著論文として国際学術誌に論文を投稿していきたいと考えている。
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