Project/Area Number |
23K24998
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Project/Area Number (Other) |
22H03744 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63020:Radiation influence-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松谷 悠佑 北海道大学, 保健科学研究院, 講師 (20826929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 久典 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (50781267)
松山 成男 東北大学, 工学研究科, 教授 (70219525)
赤松 憲 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 量子応用光学研究部, 上席研究員 (70360401)
甲斐 健師 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (70403037)
楠本 多聞 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 計測・線量評価部, 主任研究員 (90825499)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥15,600,000 (Direct Cost: ¥12,000,000、Indirect Cost: ¥3,600,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
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Keywords | DNA損傷予測モデル / 化学過程のモデリング / DNA損傷 / 中性子・BNCT照射 / 炭素線照射 / 一本鎖切断 / 二本鎖切断 / クラスター損傷 / 高LET放射線 / 放射線飛跡構造解析 / 陽子・中性子照射 / 化学モデル / 放射線飛跡構解析 |
Outline of Research at the Start |
生体細胞が放射線により被ばくした場合,細胞死や染色体異常,発がんといった後発の放射線影響が発生する。これら影響は放射線飛跡上で生じる初期のDNA損傷に起因するため,放射線による生じる生物影響を正確に理解するためには,放射線の飛跡構造に基づいてDNA損傷数を予測するシミュレーション研究が重要である。しかし,このDNA損傷推定シミュレーションは,飛跡構造やラジカル生成・拡散の詳細な計算が必要なため,膨大な計算コストを要する問題がある。本研究では,最も計算コストを要する化学過程をモデル化することで,様々な放射線タイプにより生じるDNA損傷を高速に推定可能なDNA損傷予測システムの開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は,DNA損傷を高速に推定可能なDNA損傷予測システムの開発を目指し, (a)水の放射線分解により生成するラジカル種(OHラジカル)の量と放射線タイプ(単位長当りの付与エネルギー(LET))の評価(化学シミュレーションモデル開発),(b) X線・イオン線により生じるDNA損傷データの取得,2点について研究開発を進めた。得られた成果は、国際的に著名なジャーナルにて12報の発表を行った。 当該年度のモデル開発は,先に開発したラジカルの初期収量とその後の時間変化を計算するコードを,汎用放射線科学計算コードPHITSへ実装した。これより,OHラジカル量とDNA損傷数の関係の評価に成功した。また,様々なイオン線について,放射線の単位長当りの付与エネルギー(LET)とラジカル量を評価する化学コードの開発にも成功した。今後,この開発した化学コードについて検証を進め,国際ジャーナルにて成果報告する同時に,PHITSコードへ実装する予定である。 次に,当該年度のDNA損傷測定については,X線装置ならびに低エネルギー陽子ビーム(1~3 MeV)を使用することで,実測データの蓄積を進めた。X線射実験では、OHラジカルスカベンジャー濃度を10と200 mMと変化させ,複雑なDNA損傷収率の測定を行った。陽子ビームを使用した照射実験では,陽子線の飛行距離が照射サンプル厚より短いことから,単色陽子ビームのDNA損傷データの測定が困難であることが判明した。この限界を考慮し,令和6年度以降は中性子照射(反跳陽子)やホウ素中性子捕捉療法により発生する高LETイオン線を使用してデータ蓄積を進める予定である。 以上の化学モデル開発ならびにイオン線照射実験の蓄積から,高LET放射線において重要性が低下すると考えらえる化学過程とDNA損傷発生数の関係の評価に成功し,DNA損傷予測システムの開発につながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の進捗状況においては,化学過程を考慮して高速にDNA損傷予測を可能にするモデルの開発に向けて,様々なイオン線に対して化学過程を詳細に計算するコードの開発を進め,電子線照射用の化学コードについてはPHITSコードへ実装することで社会還元を行った。また,開発したコードを使用することで,化学過程で発生するOHラジカルの発生量からDNA損傷数の実測値を再現することに成功し,化学過程メカニズムを考慮してDNA損傷を予測するモデルの開発に発展した。同時に,化学過程の寄与率を変化させる目的でOHラジカルスカベンジャー濃度を可変させた際に,X線により発生するDNA損傷の複雑さの測定にも成功し,測定データの蓄積も順調である。さらに,国際的に著名なジャーナルへ複数の論文発表を行うことにも成功した。一方で,電気代の高騰に伴い,当初利用を予定していた高崎量子応用研究所TIARAの炭素ビームの使用が困難な状況となったため,使用する照射実験設備については他の施設の使用も視野に入れる必要がわかった。以上のとおり,照射施設に関する課題点が浮上してきたが,当該年度に計画していたモデル開発ならびに実測データの蓄積を進めることに成功し,順調に研究が進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度以降は,上記の令和5年度の研究開発状況を踏まえて,下記3点の研究内容について着手する予定である。 (1)令和5年度に開発した化学シミュレーションコード(モデル)について,そのモデルの妥当性を様々なイオン線で生じるラジカルデータと比較することで一層の開発を進める。同時に,生体細胞内と同等のスカベンジング能(300000000 /sec)を有する水の放射線分解で生じるOHラジカル収量と電離励起数(LET)との関係を評価し,モデル化する。 (2)DNA損傷の高速予測の実現へ向けて,上記で開発したOHラジカル収量と電離励起数の関係を活用して,DNA損傷収量を高速で計算するアルゴリズムを開発する。開発したDNA損傷予測システムをDNA損傷に関する既存の実測データを比較し,予測システムの妥当性の検討を開始する。 (3)DNA損傷に関する科学データの蓄積を継続する。具体的には,細胞内のコンディションに近い200 mM Trisで調整したプラスミドDNAを使用した高LET放射線照射を実施し,測定したDNA損傷データと(2)で開発したDNA損傷の予測結果と比較することで,DNA損傷予測システムの開発を加速させる。炭素線照射については,電気代の高騰に伴い,当初利用を予定していた高崎量子応用研究所TIARAの使用が困難である可能性も在り,群馬大学重粒子医学センターの利用も検討する。 以上のとおり,化学シミュレーションコードやDNA損傷予測システムの開発,さらにはDNA損傷測定データの蓄積を実施し,当初予定している「様々な放射線タイプにより生じるDNA損傷を高速に推定可能なDNA損傷予測システムの開発」を一層進める予定である。
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