Project/Area Number |
23K25006
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Project/Area Number (Other) |
22H03752 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63030:Chemical substance influence on environment-related
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
黄 基旭 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (00344680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山縣 涼太 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (20963424)
外山 喬士 東北大学, 薬学研究科, 講師 (50720918)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | メチル水銀 / LTBR / シグナル伝達 |
Outline of Research at the Start |
我々は、マウスの脳で高く発現しているリンホトキシンβ受容体(LTBR)に対する中和抗体を脳室に投与することでメチル水銀による神経細胞死が抑制されること、また、このLTBRの発現を抑制した神経幹細胞株が強いメチル水銀耐性を示すことを初めて明らかにした。これらのことは、LTBRがメチル水銀による脳組織選択的な毒性発現に関与している可能性を強く示唆している。そこで本研究では、マウス由来の脳神経細胞株や脳スライスを用いてメチル水銀によるLTBR活性化を介した脳神経細胞死誘導機構を解明するとともに、LTBR欠損マウスを用いて得られた知見の毒性学的意義を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、リンホトキシンβ受容体(LTBR)はミトコンドリアからの活性酸素種産生を促進しシグナル伝達を活性化させることでアポトーシスを誘導することが明らかになり、またLTBR結合蛋白質としてRPSA(40S ribosomal protein SA)が同定された。本年度は、メチル水銀によるRPSAを介したアポトーシス誘導機構を検討するとともに、LTBRとの関わりも検討した。その結果、RPSAの発現抑制はメチル水銀によって生じるミトコンドリアの膜電位低下や活性酸素種産生を抑制し、これらの抑制作用がLTBR発現抑制細胞では認められなくなった。また、通常時のRPSAは細胞膜と細胞質に広く分布していたが、その一部がメチル水銀によって細胞膜の複数箇所に集積し、この集積はLTBR発現抑制細胞では観察されなかった。LTBRの多量体形成もメチル水銀によって促進されることが判明したことから、多量体を形成したLTBRにRPSAが集約することでその下流シグナルを活性化していることが示唆された。マウスの脳を免疫染色したところ、RPSA発現陽性細胞は脳全体的に広く分布し、特に神経細胞の細胞膜や細胞質で発現していた。LTBRも主に神経細胞で発現していたことから、マウス脳中においてもLTBR/RPSA複合体が神経細胞の損傷に関与している可能性が示唆された。また、24 ppmのメチル水銀含有水を6~8週間摂取したマウスでは短期および長期の記憶能が低下したのに対し、これらの障害はLTBR欠損マウスでは認められなかった。さらに、メチル水銀は頭頂葉付近の錐体細胞の尖端樹状突起に損傷を与えたが、この損傷もLTBR欠損マウスでは認められなかった。以上のことから、マウスの脳においてLTBR/RPSA複合体はミトコンドリア機能障害による脳神経細胞の損傷を介した記憶障害に関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、LTBR結合蛋白質として昨年度にRPSAを新しく同定することに成功した。また本年度の検討により、RPSAはメチル水銀によるミトコンドリアでの膜電位低下や活性酸素種産生に関与していることが示され、RPSAもLTBRと同じ経路を介してメチル水銀毒性発現に関与しているが強く示唆された。特に、メチル水銀はRPSAを細胞膜の特定箇所に集積させたが、この集積にはLTBRが必要であった。メチル水銀はLTBRの多量体形成を促進させることも明らかになっており、この作用がRPSAの細胞膜への集積に関与していると考えられる。また、マウス個体を用いた検討により、LTBRはメチル水銀による脳神経細胞損傷(主に錐体細胞の尖端樹状突起損傷)に関与しており、本作用がメチル水銀による記憶障害に関与していることも示唆された。興味深いことに、LTBRおよびRPSAはともにマウス脳中の神経細胞に発現しており、両因子はマウス個体においてもメチル水銀による脳神経細胞の損傷に関与する可能性が示唆された。これまでに、本研究はLTBR/RPSA複合体がマウス由来の神経幹細胞株のみならず、マウス個体においてもメチル水銀毒性発現に関わっていることを明らかにしている。またLTBR欠損マウスでは、通常時においても脾臓や腎臓の萎縮・出血が観察され、LTBRがそれらの機能維持に関わる主要因子であることが明らかになった。以上のように、本研究は当初の研究計画通り進んでおり、今後本研究を推進していく上で貴重な知見を得ることができたことから、本研究は計画に従って「概ね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、マウスの神経幹細胞株および脳スライスを用いて様々な生化学的検討および分子生物的検討を行うとともに、得られた知見の毒性学的意義をマウス個体で検証する。 1.LTBR/RPSA複合体を介したメチル水銀によるミトコンドリア機能異常機構:LTBR/RPSA複合体は未知の因子を介してメチル水銀によるミトコンドリア機能異常に関与することが示唆された。そこで、免疫沈降・質量分析法によりRPSAに結合する蛋白質を網羅的に検索しその中からミトコンドリア機能異常に関わる新規因子を特定するとともに、様々なデータベースに登録されている既知の結合蛋白質についても同様の検討を行う。 2.メチル水銀による記憶障害へのLTBR/RPSA複合体の関与:メチル水銀曝露マウスでは、海馬に依存する短期記憶と大脳皮質に依存する長期記憶がともに低下していたが、これらの低下はLTBR欠損マウスでは観察されなかった。そこで、海馬やその周囲、または大脳皮質におけるLTBRとRPSAの挙動や発現などを検討する。特にLTBRは主に神経細胞の細胞膜上で発現していたことから、ミクログリアなどのグリア細胞とのクロストークについても検討する。 3.メチル水銀による運動障害へのLTBR/RPSA複合体の関与:メチル水銀に曝露したマウスの頭頂葉付近において錐体細胞の尖端樹状突起の損傷が観察され、この損傷がメチル水銀による運動障害に関わる一因である可能性を見出している。興味深いことに、LTBR欠損マウスでは錐体細胞の尖端樹状突起の損傷が観察されなかった。これらのことから、メチル水銀曝露がマウスの運動機能に与える影響を経時的に調べるとともに、主に運動野を中心に錐体細胞の尖端樹状突起の損傷およびミクログリアの活性化におけるLTBR/RPSA複合体の役割を組織化学的に検討する。
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