沿岸生態系における窒素の相対的過多がもたらす生体分子フローの変質と環境管理適正化
Project/Area Number |
23K25007
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Project/Area Number (Other) |
22H03753 (2022-2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63040:Environmental impact assessment-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂巻 隆史 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60542074)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤林 恵 九州大学, 工学研究院, 助教 (70552397)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | 沿岸海域 / 栄養塩 / 二次生産 / 植物プランクトン / 脂肪酸 / マガキ / 窒素循環 / 富栄養化 |
Outline of Research at the Start |
実海域において採取される沿岸海域のプランクトン群集に対して窒素添加実験を行う.これを通じて,プランクトン群集としての各種生体分子生成速度に対する窒素負荷の影響を明らかにする.さらに,実海水連続流入型の小型メソコズムで,窒素・リンを異なる条件で培養されたプランクトン群集を添加する複数系を作成し,若齢マガキの飼育実験を行う.これにより窒素過多によるプランクトン性微細藻類の質・組成変化がマガキの生育,摂餌・同化過程,生体分子組成に及ぼす影響を定量的に把握し,それらのプロセスのモデル化に向けた基礎的知見を集積する.さらに,水産物としての品質に及ぼす栄養塩環境の影響を評価する.
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Outline of Annual Research Achievements |
1) 窒素供給に対する植物プランクトン群集の生体分子合成の応答パターンを解析するための現場実験を志津川湾において実施した.夏季の比較的低栄養塩の条件下で,現地海水を透明タンクに密閉し異なる窒素・リン添加条件下で同海域内にて培養した.脂肪酸分析の結果,以前の実験結果から当初想定していた窒素添加による珪藻マーカー脂肪酸生産の抑制や細菌・藍藻マーカー脂肪酸の促進の傾向が認められなかった.以前の実験に比較して実験時の水温が若干低かったことが影響した可能性が考えられる.これらの結果を踏まえ,今後,温度の交互作用効果も加味して評価できる実験系で,さらに窒素供給による植物プランクトン群集ならびにその生体分子生成への影響の検討を進める必要があると判断された. 2) 植物プランクトン群集への栄養塩供給を制御したマガキ飼育実験のためのメソコズム実験系を作製した.そして初冬の2カ月間にわたって実海水の連続流入運転の中で窒素・リン添加を行い,生産されるプランクトン群集やそれを摂餌したカキの生育・化学組成への影響を検討した.その結果,栄養塩添加によるプランクトン由来粒状有機物の脂肪酸組成に変化がみられた.特に,窒素の添加が珪藻マーカー脂肪酸(特にEPA)の生産を高めていたことから,珪藻の生産が高められたと考えられる.一方で,それを摂餌したカキの生育や化学組成には,有意な影響が認められなかった.今回の結果では,季節的に比較的低い水温条件下での実験であったことから,全般的にプランクトンの生産活性が低い,珪藻に比較的有利,カキの生育が遅い・活性が比較的低いなどの要因が作用した可能性も考えられる.今後,異なる季節を含めて継続的に実験を行い,傾向を見定めていく必要があると判断された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初予定していた実験を実施することができた.ただし,実験の結果新たな課題もみえたことから,今後それを加味して実験を進めていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
1) 窒素供給に対する植物プランクトンの生体分子合成の応答パターンの解析: 沿岸海域に比較的広く・多く分布する珪藻・渦鞭毛藻・藍藻等それぞれについて代表種を選定して純粋培養実験を行い,栄養塩供給パターン(窒素濃度,窒素・リン比)の変化による藻類体内の生体分子組成の変化や各種脂肪酸・アミノ酸生合成速度への影響を明らかにする.また,各藻類種試料の一部では,藻類の生態学的な機能に関わる指標(一次生産・呼吸,細胞径,沈降速度等)も測定し生体分子組成との関係を解析する. 2) 二次生産者の生体分子代謝への餌料藻類の生体分子組成変化の影響の解析: 13C・15Nを操作した培養珪藻によるマガキ飼育実験から,マガキの体内必須脂肪酸・必須アミノ酸各種の取り込み速度や代謝回転速度を定量化する.あわせて,2022年度同様に海水中植物プランクトン群集への栄養塩供給を制御したマガキ飼育実験を,季節を変えながら継続して実施する.そこでは,特に温度条件の変化によって,マガキの生育状態や化学組成の栄養塩供給への応答がどのように変化するのかに着目した解析を実施する. 3) 実海域における窒素環境と一次・二次生産者の生体分子組成の関係解析: 国内沿岸域の貧栄養~富栄養な内湾より,カキ・イガイをはじめとした二次生産者と海水中粒状有機物(プランクトン群集を含む)を採取する.二次生産者試料の脂肪酸・アミノ酸の組成や生育状態等を測定し,粒状有機物のそれらの組成とあわせて,採取海域の溶存態栄養塩組成との関係を多変量統計解析手法により解析する.
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)