Project/Area Number |
23K25189
|
Project/Area Number (Other) |
22H03935 (2022-2023)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2022-2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90110:Biomedical engineering-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神保 泰彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20372401)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榛葉 健太 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80792655)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
|
Keywords | 脳・神経 / 細胞・組織 / 神経工学 / 脳神経 |
Outline of Research at the Start |
アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)ではその典型的な臨床症状である認知や記憶の障害が発生するよりもかなり前の時点で原因となる脳内の変化が始まっていると考えられており,早期診断手法の確立,治療方法の開発が急務である.アミロイドβ(Amyloid β; Aβ)の蓄積が神経回路の興奮/抑制バランスを崩し,結果として生じる異常な活動の神経毒性がシナプス伝達の阻害,神経細胞死につながるという仮説をin vitro系を利用した実験により確認,薬理的な抑制手法の探索を行なう.
|
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)の発症過程において,アミロイドβ(Amyloid β; Aβ)の蓄積が神経回路の興奮/抑制バランスを崩し,結果として生じる異常な活動の神経毒性がシナプス伝達の阻害,神経細胞死につながるという仮説をin vitro系を利用した実験により確認,薬理的な抑制手法の探索を行なうことが本研究の目的である.健常者,AD患者由来ヒトiPS 細胞から分化誘導した培養神経回路を作成してその電気活動を比較,早期に発生する異常な活動の検出を目指している.2023年度は,高密度電極アレイ(High-Density MicroElectrode-Array; HD-MEA)基板上に形成した培養神経回路について,低酸素負荷条件(酸素濃度2 %の環境に60分間暴露)における神経活動を計測した.健常者由来の試料では,初期状態において大脳皮質培養神経回路の典型的な活動パターンとして広く知られている周期バーストが観測された.低酸素環境下ではその周期が短くなり,20分経過後から発生頻度と強度が低下,60分後には自発活動がほぼ消失した.通常の環境に戻すことにより自発活動の復活が認められたが,初期状態と比較するとバースト発生周期は短縮,強度は低下した.AD患者由来の試料については,初期状態において非周期の活動成分が多く含まれており,健常者由来試料の活動とは明確に異なる傾向を示した.低酸素環境下で活動が低下,通常の環境に戻すことにより回復する現象は健常者由来の試料と同様であったが,低酸素環境下で初期状態と比べて周期的な活動成分がやや顕著になるといった現象が認められた.同期活動/非同期活動の構成割合が健常者,AD患者由来神経回路で異なる,すなわち興奮・抑制性細胞あるいはシナプス結合の割合が異なっている可能性を示す結果である可能性があると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度である2022年度にHD-MEA基板上にヒトiPS細胞から分化誘導した神経回路を形成する最適なプロトコル(Laminin/ Brainphys/ DAPT添加の条件(播種時のみB27, N2 Supplement添加培地を使用))を確立した.HD-MEA は26,400個のマイクロ電極を集積化した細胞培養皿であり,非侵襲的な計測,すなわち長時間の活動変化を追跡するのに適した手法である.この特徴を利用して,2023年度は健常者由来,AD患者由来のiPS細胞を用いた2種類の培養神経回路を形成して自発電気活動を計測,両者の比較を実施した.その結果,活動の同期性に顕著な差異が認められること,虚血状態への耐性という見地から実施した低酸素環境負荷に対する応答にも違いがあるという知見が得られた.健常者由来,AD患者由来の神経回路において興奮/抑制性結合の割合が異なる可能性を示す結果であると考えている.iPS細胞由来培養神経回路の自発電気活動の長期計測が可能になり,AD患者由来の試料において健常者由来の試料と異なる活動が観測されたことから,AD発症プロセスに関与する要素(Aβの蓄積,シナプス外NMDA受容体(extrasynaptic NMDA receptor; eNMDAR)の活動亢進,アストロサイトの関与)解明に向けた実験に進む準備が整ったと判断している.
|
Strategy for Future Research Activity |
AD発症に至る過程の早期段階で発生する異常な神経回路活動を検出してその発生機構を解明,異常な活動の発生を抑止する手法を確立することが最終的な目標である.健常者由来,AD患者由来の培養神経回路における自発活動の差異が観測された2023年度の実験結果に基づき,健常者由来神経回路に対するAβ投与により誘起される現象の観測,その過程へのeNMDAR,アストロサイトの関与につき検討を進める. 1. 健常者由来神経回路に対するAβ投与により誘起される現象:Aβを人為的に投与した環境下で培養することにより健常者由来神経回路に生じる電気活動変化を観測する.経時的な変化を追跡することにより,AD患者由来の試料に類似した活動が観測されることを想定している. 2. 異常な活動の発生過程におけるeNMDARの関与:Aβの蓄積がeNMDARの活動亢進を誘導し,それが異常な活動の発生につながるという仮説を検証する.bicuculline 投与によりシナプスに存在するNMDAR(sNMDAR)の活性化を誘導,開孔チャネルの阻害剤であるMK-801によりsNMDAR をブロック,この状態でNMDA投与により引き起こされる神経回路活動を記録し,Aβ投与により誘起される神経回路活動と比較する. 3. 異常な活動の発生過程におけるアストロサイトの関与:アストロサイトに Channel Rhodopsin 2(ChR2)を導入して光刺激を印加,アストロサイト内部のCa2+濃度上昇,神経回路活動の変化を観測してAβ投与によって引き起こされる現象と比較することにより,Aβのアストロサイトα7nAChRへの結合が誘起する現象の神経回路活動変化への寄与を明らかにする.
|