Project/Area Number |
23K25352
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Project/Area Number (Other) |
23H00655 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
黒沢 直俊 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (80195586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PICHITELLI Eliseu 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 教授 (10456246)
水沼 修 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (10795438)
川口 裕司 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (20204703)
市之瀬 敦 上智大学, 外国語学部, 教授 (20276512)
林田 雅至 大阪大学, COデザインセンター, 名誉教授 (50189677)
ロッシャデソウザ ルシオマヌエル 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 准教授 (70735836)
山村 ひろみ 九州大学, 言語文化研究院, 特任研究者 (90281188)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,460,000 (Direct Cost: ¥14,200,000、Indirect Cost: ¥4,260,000)
Fiscal Year 2026: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
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Keywords | 文禄・慶長の役 / 一次資料 / 文献言語学的分析 / 中世近代欧州語 / 間テキスト性 / ディプロマティックエディション / 意味統語分析 / 表記のヴァリアント / ヨーロッパ系文書 / 紛争の歴史的研究 |
Outline of Research at the Start |
16世紀末の世界最大の戦争のひとつであった、文禄・慶長の役(1592-1598)に関し、日本や中国に滞在したヨーロッパ人がポルトガル語やスペイン語など当時の欧州諸言語で記録したものを文献言語学的かつ歴史学的批判に耐えうるような形で取り出し、アジア史料にはない新たな情報の提供を目指す。このような、文献言語学的な視点からの試みは今まで行われていなかったので独創的である。研究成果は内外の研究集会やWeb 上で一般社会に還元される。
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Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトの1年目においては、特にルイス・フロイスの『日本史』に焦点を当て研究を展開した。このテキストには日本語訳がすでに存在し、翻訳はポルトガルでのJose Wicki による校訂本(1976-1984)に先行し、その意味で画期的と言えた。テキストの原本は18世紀頃にフロイスの自署手稿がマカオの火災で焼失したとされ、それを伝承する写本が現在では一次資料で、ポルトガルに2点現存し、Wickiの校訂本はそれに基づく。ところが、松田・川崎訳は手稿の一点のみに基づく点でやや特異である。日本語訳のもとのアジュダ写本は比較的完全なので、部分的な欠落などを除き、全体的な内容の理解は十分可能である。ただし、資料自体の文献言語学的検討はWickiにしても、日本語訳でも行われていないので、相当額の人件費謝金を支払い、手稿の状態をより忠実に反映するテキスト(=ディプロマティック・エディション)を準備した。同時にテキストの英語と現代ポルトガル語版の出版準備を進めている。文献言語学的分析は、写字生の傾向や特定につながる証拠を提供する可能性があり、2年目に行う予定である。16世紀ポルトガル語文献に基づく研究を日本ロマンス語学会で発表(代表者)したり、リスボン大学を中心として組織されている学会での発表(代表者と分担者)などを行ったが、国際学会はZOOM参加であったので旅費は計上したが使用しなかった。スペイン語の未公刊文書の転写も外注しているが、海外協力者が病気であるなどまだ成果物は上がってきていない。スペイン語文献に関しては、意味論と統語論の専門家である九州大学名誉教授の山村ひろみを分担者に加えたので、次年度に成果がみられるものと考えている。また、本年度は業績として学会発表が中心となり、発表論文は少なかった。図書の出版も現在準備中であるが、公刊は次次年度になる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
このプロジェクトは16世紀末に日本や中国に滞在したヨーロッパ人がポルトガル語やスペイン語などで、それぞれの立場から記録したものを文献言語学的かつ歴史学的批判に耐えうるような形で取り出し、アジア史料にはない新たな情報の提供を目指すというのが研究の核心をなすもので、そのために一次資料である手稿を厳密に批判に耐えるような形で転写するのが研究の核心である。結果的に、内外の専門家に転写を依頼する業務が多くなるため、謝金支出が予算の中心を占める。さらに、プロジェクトが目指す、文献学と歴史学の共同作業についても一定程度の成果やプラスの感触は得られているので、1年目の評価としては十分であると考えた。実際、この二つの分野の協働は、研究者の観点と関心が異なるため、現実には極めて難しいのが実際である。反面、海外調査の旅費などは結果的に使わなかったことや、当初の計画とは異なる方向性の研究が実現されたりもしているので、その点も考慮した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は国境という限界を越えず、戦争へのトランスナショナルなアプローチを提示しきれていない面があり、これに踏まえ、戦争の国際的な性格と世界的な広がりに焦点を当てグローバル・ヒストリー的な研究戦略を追求する。研究の核心は以下である。 1)この時代に日本や朝鮮半島に住み、資料の書き手となったヨーロッパ人はどのような人々だったのか。彼らを特定し、動向を調査し、紛争について書かれた手紙や報告書、裁判記録、書籍などを分析する。2)文禄・慶長の役(1592-1598)に関するヨーロッパ系文書はどこに保管されているのか。世界中の文書館に散在するヨーロッパ系文書の目録作成を行う。3)資料の内容はどのようなものか。研究者がアクセスできる効率的な方法は何か。400年前のテキストで転写は文献学的分析が前提である。翻訳や解釈で最も重要な前提であるが、歴史資料の扱いでは欠けていることもある。文献学的に信頼出来る転写に、詳細な文献言語学的分析を行い、文書の信憑性が増すと言える。これが過去の文書を扱う上での正当な方法で、この点にこそプロジェクトのオリジナリティーが存する。 手書きの手稿の転写は難しい。プロジェクトでは内外の専門家に外注的に作業を委託し、成果物をメンバーの言語文献学の専門家が分析する手続きをとる。このため、謝金の占める割合がかなり高いのが、この研究の特徴でもある。年次的に、基礎的な物品の購入や、調査旅費なども計上されているが、研究で予算面での中核を構成するのは各国の専門家への依頼費用である謝金であることは強調しておきたい。なお、最終年度に国際的なシンポジウムの実施を考えているが、コロナ感染症の拡大以降、ZOOMなどを用いたバーチャルな形式での開催が一般化しているので、プロジェクトでもその方式で計画する。すでに、歴史系の分野では海外の同じような形式のシンポジウムには参加している。
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