Project/Area Number |
23K25358
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Project/Area Number (Other) |
23H00661 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 充幸 立命館大学, 文学部, 教授 (10390709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 裕美子 愛知県立大学, 日本文化学部, 教授 (00315863)
辻 正博 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30211379)
大野 晃嗣 東北大学, 文学研究科, 教授 (50396412)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥16,900,000 (Direct Cost: ¥13,000,000、Indirect Cost: ¥3,900,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,760,000 (Direct Cost: ¥5,200,000、Indirect Cost: ¥1,560,000)
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Keywords | 銅人シュ穴鍼灸図経 / 蓬左文庫 / 裏打紙文書 / 明代公文書 / 料紙分析 / 紙背文書 |
Outline of Research at the Start |
『銅人シュ穴鍼灸図経』とは、北宋代に編纂された鍼灸医学書である。この書物は完成直後に首都開封で刻石され、紆余曲折を経て明代の北京で重刻された。その拓本の一つが、現在、名古屋市蓬左文庫に所蔵されている(「蓬左本」と略称)。 蓬左本の魅力の一つは、反故となった明代の公文書を裏打紙として再利用している点である。それゆえ、蓬左本には表面の拓本のみならず、裏打紙にも大きな史料的価値がある。 本研究は、(1)この拓本が蓬左文庫に存在する理由、(2)裏打紙公文書の種類と内容、(3)蓬左本の料紙と構造、以上の3方向から徹底的に分析し、その知られざる史料的価値の数々を明らかにしようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)拓本研究班・(2)档案復元班・(3)料紙分析班を編成し、相互に連携しつつ研究を進め、積極的に(4)成果発信を行っている。今年度の調査研究実績の概要は、以下の通りである。 (1)拓本研究班:主に実物資料の閲覧調査を精力的に実施した。まず、名古屋市蓬左文庫が所蔵する『銅人シュ穴鍼灸図経』拓本(以下、蓬左本と呼称)の来歴を探るため、蓬左本実物の熟覧と高精細写真撮影を行った。加えて、国内外の他の所蔵機関に現存する『銅人シュ穴鍼灸図経』(以下『銅人経』と呼称)、およびそれに関連する諸テキスト(拓本・版本・鈔本)実物の閲覧調査を行い、それらを通じて多くの貴重な知見を得た。 (2)档案復元班:主に明代公文書の実物史料に基づいた研究を定期的に実施した。蓬左本の裏打紙として、二層にわたって使用されている明代公文書(以下、裏打紙文書と呼称)のうち、その第一層目(外側の総裏部分)について、これらの全葉を撮影した高精細写真と赤外線写真に基づき、テキストをほぼ全て翻刻した。さらに、関連する諸テキスト、主として中国明清時代の地方志・政書などとの比較・対校を通じて、第一層目の裏打紙文書テキストの校訂・読解を進め、多くの重要な知見を得た。 (3)料紙分析班:蓬左本に使用されている料紙との比較分析データを獲得するため、国外の所蔵機関において『銅人経』や公文書の実物を閲覧調査し、料紙に関するデータを蓄積した。 (4)成果発信:上記の研究成果について、講演会や定期刊行物など通じてコンスタントに情報発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度、下記のうち特に(1)と(2)に関して研究が大きく進展した。 (1)資料調査:国内外の所蔵機関において『銅人経』の諸テキストならびに関連書籍の実物を閲覧調査し、デジタル写真撮影を行った。蓬左文庫が持つ台湾・韓国の各所蔵機関との人脈なども活用しつつ、申請手続を入念に行ったため、当初の予定以上に多くの実物資料にアクセスすることができた。その結果、以下の4点が明らかとなった。①蓬左本と書陵部本との先後関係。②江戸時代の日本に所蔵されていた『銅人経』諸テキストが、近代以後に台湾へと渡った経路。③台湾国家図書館所蔵の現存最古の刊本が、ほぼ確実に金・大定刊本ではなく元・余志安刊本であること。④朝鮮活字版のテキスト校訂過程と、同整版の印刷時期の前後関係。 (2)明代公文書研究:蓬左本の裏打紙として使用されている明代公文書は、内側の肌裏と外側の総裏の二層にわたって貼り込まれているが、後者の明代公文書全テキストの翻刻を一旦完了することができた。また、夏以降に定期的な読み会を開催し、以下の2点について確認することができた。①人事関連文書類が、貼黄(官僚の履歴や勤務日数などを記した報告書)や、到任須知(官僚の勤務評定を三十一項目にわたって記した報告書)など、いずれも明朝初期に規定された書式に従って逐一記載されていること。②さらに、明代後期の万暦年間に追加された確認事項に従い、きちんとチェックが加えられていること。 (3)料紙分析については、当初の計画通りに進捗している。 (4)成果報告については、蓬左文庫を拠点とする形にて実施した。具体的には2024年1月実施の一般向け講演会と、機関誌『蓬左』105号・106号における学術エッセイ記事の連載である。これについても当初の計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)資料調査:2023年12月に実施した台湾での調査は、時間が不足したため全点を閲覧し終えることができなかった。そのため、次年度以降も定期的に渡航して現物調査を続行する必要がある。また、中国・北京の複数の博物館に所蔵されている、北宋時代のものとされる『銅人経』刻石の断片を調査する必要性が高くなってきたため、中国国内所蔵の『銅人経』各種テキストとあわせて実地調査を検討していく。さらに、大阪の杏雨書屋所蔵の朝鮮活字本など、国内にも未調査のものがあるため、これらについても積極的に実地調査を行う。蓬左本の来歴についても、これに関わった形跡のある人物に焦点を当てていく形で研究を進展させる。具合的には、北京の太医院・朝鮮の内医院・尾張藩の藩医の関係者など当時の医療関係者のグループ、燕行使・通信使の関係者など当時の外交関係者のグループなどを中心に、関連資料の博捜と読解を継続していく。 (2)明代公文書研究:翻刻テキストをもとに、写真版・校注テキスト・研究編を備えた冊子を専門書として出版できるよう、段取りと準備を進める。そのための会合も、引き続き定期的に実施する。 (3)料紙研究:引き続き、明清時代の公文書や『銅人経』諸テキストなど、実物資料の閲覧調査を必要に応じて実施する。 (4)成果発信:2023年度は一般向けの成果発表が多かった一方で、専門的な研究論文・学会発表を行わなかった。次年度以降は、そうした発表も行いつつ、最終年度における国際シンポジウムの開催企画を具体化していく。なお、蓬左文庫における講演会と、機関誌『蓬左』への連載も継続する。
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