Project/Area Number |
23K25810
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Project/Area Number (Other) |
23H01113 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
網塚 浩 北海道大学, 理学研究院, 教授 (40212576)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,590,000 (Direct Cost: ¥14,300,000、Indirect Cost: ¥4,290,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,150,000 (Direct Cost: ¥5,500,000、Indirect Cost: ¥1,650,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
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Keywords | パリティ混成 / ハイブリッド奇パリティ多極子 / 局所的空間反転対称性の破れ / ウラン化合物 / 5f電子 / 奇パリティ多極子 / 共鳴X線散乱 / 中性子散乱 / 非対角物性応答 / 電気磁気効果 |
Outline of Research at the Start |
空間反転対称性を欠いた環境下にある原子では電子の偶奇波動関数の混成が起こる。このパリティ混成は最近まで軽視されてきたが,強いスピン軌道相互作用を有するd・f電子系物質の電子状態に重要な影響を及ぼし,新奇な超伝導や特異な多極子秩序の発現に重要な役割を担う可能性がある。本研究では,典型物質候補と目されるCaBe2Ge2構造をとるウラン系化合物に焦点を当て,まだ観測例のない局所的な5f-6dパリティ混成により形成されるハイブリッド奇パリティ多極子の振る舞いを実験的に明らかにし,ウラン系強相関物質に残る様々な課題を解く鍵となる新たな基礎概念を確立することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、局所的に空間反転対称性を欠くウラン系化合物に焦点を当て、未だ観測例のない局所的なパリティ混成により形成されるハイブリッド奇パリティ多極子の振る舞いを実験的に明らかにし、ウラン系強相関物質に関する新たな基礎概念を確立することを目指す。令和5年度の主な成果として、正方晶CaBe2Ge2 型のUPt2Si2に対して共鳴X線散乱(RXS)及び偏極・非偏極中性子散乱実験を行った結果、①RXS実験では、5f電子軌道がCDW秩序により高温の常磁性相から変調を受けていること、さらに低温の反強磁性秩序状態において横波の磁気変調を受けることを見出し、②中性子散乱実験では、反強磁性秩序モーメントの傾きが最大で約20°に及ぶことを明らかにした。これらの結果は、本系においてU-5fとPt-5dもしくは6s電子軌道間の選択的な結合が5f電子状態の対称性を破り、局所的なパリティ混成が発現していることを強く示唆する。また、関連系として、 (U,Th)Be13、およびCeRh2Si2について弾性定数、一軸応力下物性測定等を行い、f電子状態の対称性の低下について議論した。これらの成果を論文や国際、国内会議で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
U系化合物に現れる特異な局在-遍歴二重性(Duality)については、従来、Uの5f電子とリガンドイオンの電子との混成効果に起因するRKKY相互作用と近藤効果の競合という4f系でよく成り立つDoniach描像を基礎に、リガンドイオンの種類に応じた混成効果の微細な変化が物性のバリエーションを担っているものと主に定性的に議論されてきた。しかしながら、個々の系において混成効果と基底状態との具体的な関係性についての情報はほとんど得られていなかった。本研究では、Uの5f電子状態に対するリガンドイオンの影響を定量的に示す実験結果が提供された。今後は、対象物質に関する結晶及び電子構造のより詳細な実験研究と第一原理計算を含む理論研究との照合を通じて、U系金属化合物における5f電子状態の理解が大きく進展するものと期待される。以上の展望を考慮し、当初の予定を上回る成果が得られたものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
UPt2Si2において局所パリティ混成効果が発現していることがほぼ確実であることがわかったので、放射光共鳴X線散乱実験において従来用いられる遷移過程を拡張し、パリティ混成状態すなわち奇パリティ多極子自由度を直接観測する実験を進める。同時に対照系として、同型の類似物性を示すUPt2Ge2並びに5f電子を持たないがCDW秩序を有するThPt2Si2についても調査を始める。また、UPt2Si2を中心に非対角物性応答の測定を進める。
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