Project/Area Number |
23K25815
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Project/Area Number (Other) |
23H01118 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 和也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90302760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦井 瑞紀 東京大学, 物性研究所, 助教 (20886915)
小形 正男 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60185501)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,460,000 (Direct Cost: ¥14,200,000、Indirect Cost: ¥4,260,000)
Fiscal Year 2026: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
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Keywords | スピン液体 / 超伝導 / BEC-BCSクロスオーバー / 強相関電子系 |
Outline of Research at the Start |
三角格子有機(超)導体k-(BEDT-TTF)4Hg2.89Br8は、量子スピン液体(モット絶縁体)にキャリアドープを施した系となっていることがこれまでの我々の静磁化率、電気伝導度の研究から分かっている。 この物質を加圧するとバンド幅の増大が期待され、低圧側の非フェルミ流体(nFL)からフェルミ流体(FL)的挙動へとクロスオーバーする。低温では両相ともに超伝導が発現することが分かっているが、コヒーレンス長の圧力依存性からは、nFL-FLクロスオーバーに伴い、超伝導がBEC-BCSクロスオーバーすることが示唆されている。本研究では、この二つのクロスオーバーの関連を包括的に理解することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
[宮川、浦井]三角格子系有機導体k-(ET)4Hg2.89Br8(k-HgBr)は量子スピン液体(モット絶縁体)にキャリアドープを施した系の候補物質である。本物質は圧力によって超伝導転移温度が変化するがおよそ5kbar付近でピークをもつ。加えて、この圧力付近において電気抵抗の温度依存性は非フェルミ液体的(nFL)挙動からフェルミ液体(FL)的挙動へのクロスオーバーが観測されている。超伝導、常伝導状態を調べるため圧力下13C NMR測定を始めた。超伝導状態での磁束の運動によるスピン-格子緩和率(1/T1)への寄与がを避けるため、ロックイン状態をつくるところから始めた。その結果、圧力セル中(ただし加圧していない)でロックイン状態の実現に成功し、それは以前測定した超伝導状態の1/T1と同じ温度依存性を示すことを確認した。 [浦井]強磁性的な相関を示すにも関わらず、低温1.8Kまで磁気秩序を示さない強相関絶縁体k-(ET)2Hg(SCN)2Brについて、希釈冷凍機温度までの交流磁化率測定を行い、磁気転移の有無を検証した。現在までのところ約50mKまで磁気秩序の兆候はみられておらず、今後、測定系の改良により、さらなる測定精度の向上を目指す。k-(ET)2Hg(SCN)2Brに関する実験結果を東大物性研の有機導体に関するワークショップで招待講演として発表した。 [小形]有機導体での熱電の特徴を調べるために、まず2次元ディラック電子系におけるゼーベック係数を不純物散乱の効果と電子格子相互作用を考慮して調べた。第一原理計算に基づいた有機導体(とくにα-(ET)2I3)のモデルを構成し、電気伝導度およびゼーベック係数の異方性について調べた。ゼーベック係数の温度依存性を理解するためには、有機導体中の化学ポテンシャルの温度依存性が重要であることが分かった。また2023年9月日本物理学会・年次大会でのシンポジウム「量子スピン液体-未解決問題の理解と新展開-」において小形が量子スピン液体についての簡単なレビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた、ドープされたスピン液体候補物質の超伝導相の研究に取り掛かることができた。さらに予備実験段階ではあるが希釈冷凍機を用いた交流磁化率測定も始めることができた。理論面では有機導体を念頭に熱電現象の特徴を調べ始めた。このようにおおむね順調に研究をスタートすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
静水圧を制御パラメータとして、BEC-BCSクロスオーバーに伴う超伝導電子対の対称性の変化を13C NMRで、超流動電子密度の変化を磁場侵入長測定で、nFL-FLの変遷を(熱)輸送現象で調べる。さらに、ノンドープ系の有機導体(例えばスピン液体候補物質k-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3など)の結果と比較検討することで、共通点、相違点を実験、理論の両面から見出していく。 具体的には 測定を開始した超伝導の対称性の解明(宮川・小形):低圧側で電子対の対称性を調べ、それがBEC-BCSクロスオーバーを経てどのように変化するのかを調べる。そのために、温度、圧力をパラメータとしてNMRナイトシフトと核スピン格子緩和率を測定する。 (熱)輸送測定(浦井・小形):常伝導状態におけるnFL-FLクロスオーバーにおけるキャリアの性質の変化を調べるため、ホール係数の測定を行う。NMRの結果と合わせてnFL-FLクロスオーバーでの伝導キャリアの性質の変遷の明らかにする。 超流動電子密度の測定(宮川):BEC-BCSクロスオーバーにおける超伝導の性質の変化をNMRとは別角度から見るべく超流動電子密度の測定を行う。具体的には加圧下で磁場侵入長を磁化測定(MPMSを利用)で求め、それにより超流動密度を評価する。試料からの信号に対して圧力セルがバックグランドとして影響することが予想される。そこで、圧力下での超伝導信号の観測から始める。 スピンノンフェルミ面のフェルオロジー(宮川・浦井):k-HgBrはスピン液体状態にキャリアドープが施されている。このため、スピン自由度と電荷自由度が分離した系である。このとき、もしスピンのフェルミ面(スピンノンフェルミ面)が存在するとすればそれは電荷の作るフェルミ面と同じであろうかそれとも異なるのか。常圧での電荷、磁化の量子振動の観測から始め、クロスオーバー領域にまで圧力を拡張して行う。
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