水と空気からアンモニアを合成するプラズマ反応プロセスの学術基盤構築
Project/Area Number |
23K25860
|
Project/Area Number (Other) |
23H01163 (2023)
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 14030:Applied plasma science-related
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 浩一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50235248)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥18,590,000 (Direct Cost: ¥14,300,000、Indirect Cost: ¥4,290,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥10,400,000 (Direct Cost: ¥8,000,000、Indirect Cost: ¥2,400,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
|
Keywords | アンモニア合成 / 水 / 空気 / 低ガス圧プラズマ / 大気圧プラズマ |
Outline of Research at the Start |
空気と水蒸気の非平衡プラズマを用いてアンモニアを合成するための学術的基盤を構築する。低ガス圧プラズマでは,水蒸気から発生する酸化性OHの影響の理解,および,酸素の導入によってOH密度が低減できるかに焦点を絞る。大気圧の窒素/水蒸気プラズマでは,振動励起状態窒素分子が触媒表面に吸着することと,OHどうしの3体反応がOH密度を低減させる効果を活用したプロセスを構築する。さらに,大気圧の窒素/空気プラズマでは,水素分子の振動励起状態の還元能力に期待したプロセスを構築する。これらにより,実用化を指向した開発研究において行動原理となり得る体系化された学術的理解を獲得する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の初年度に当たる2023年度の研究実績は以下のとおりである。 予備実験で用いた装置とは別に,本計画専用の誘導結合プラズマ発生装置を整備した。新たに整備したプラズマ発生装置では,水蒸気のガス流量を自在に制御するために,水蒸気に適応するマスフローコントローラを採用した。この装置を用いて,予備実験における実験条件よりもはるかに広いプラズマ生成条件においてアンモニアの合成特性を調べた。このとき,四重極質量分析器を用いた独自の方法により,アンモニアの生成レートと生成したアンモニアのプラズマ中での損失周波数を別々に求めた。その結果,予備実験と同様のプラズマ生成条件では予備実験と同様のアンモニア合成特性が得られ,予備実験の結果は装置に依存しない結果であることが確認できた。 しかしながら,予備実験よりも放電電力が高い場合や水蒸気ガス圧が高い場合には,予備実験と比較してアンモニアの合成特性が悪化することが見出された。放電電力が高い場合の合成特性の悪化(特に生成レートの低下)は,計画時点で予測していなかった結果であった。放電電力が高いときにアンモニアの生成レートが低下する理由は,水蒸気の電子衝突解離によって生成されるOHラジカルが本実験において触媒として作用するステンレス製真空容器の表面をより強く酸化するためであると推測した。 OHラジカルは生成したアンモニアのプラズマ中での損失にも関与すると考えられるため,連続波長光源を用いた吸収分光法により,プラズマ中のOHラジカル密度の絶対値を実測した。測定により求まったOHラジカル密度は,窒素/水蒸気プラズマと窒素/水素プラズマにおけるアンモニアの損失周波数の違いを説明することができない程度に低密度であり,プラズマ中での反応過程についての再考が必要である可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書では,2023年12月まで低ガス圧誘導結合プラズマを用いたアンモニアの合成特性に関する実験を行い,2024年1月からは,真空搬送XPS装置を用いた触媒表面の観察実験を行う年次計画であった。これらのうち,低ガス圧誘導結合プラズマを用いたアンモニアの合成特性に関する実験は,研究実績において述べたとおり,一部において計画時点で予測できていなかった結果が出てきているものの,概ね計画の通りに進捗している。研究計画調書では,酸素添加によるOHラジカル密度の制御まで実施する予定であったが,これについては次年度当初の実験に繰越となった。なお,別の小型ECRプラズマを用いた実験により,研究計画調書に記載の窒素原子密度,水素原子密度,および振動励起状態窒素分子密度の測定を実施しており,その結果から,低ガス圧プラズマにおけるアンモニアの生成レートを支配するのは窒素原子であることを明らかにしている。 一方,真空搬送XPS装置を用いた触媒表面の観察実験については,北海道大学触媒科学研究所に必要な実験設備を設置し,窒素/水素プラズマを用いた実験をまもなく開始できる予定である(研究計画調書では2024年10月までに完了予定としている)。以上のように,本研究計画は,ほぼ当初計画の通りに進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度においても,低ガス圧誘導結合プラズマを用いたアンモニアの合成特性に関する実験を継続する予定である。まず,2023年度から繰越となった酸素添加の効果に関する実験を行い,空気と水を用いたアンモニア合成のための基盤となるデータを得る。2023年度の実験において,計画時点では予測していなかったことではあるが,水蒸気の電子衝突解離によって生成されるOHラジカルが,アンモニアの損失周波数を高めるだけで無く,生成レートを低下させることを示唆する結果が得られた。その原因は,OHラジカルが触媒表面を酸化するためであると考えられ,触媒表面の観察は計画時点にも増して重要なテーマとなった。アンモニアの合成特性を詳細に調べた誘導結合プラズマ源を北海道大学触媒科学研究所の真空搬送XPS装置に取り付けることは不可能なため,誘導結合プラズマ源におけるin-situのラマン散乱実験を計画に加えることとした。誘導結合窒素/水素プラズマと窒素/水蒸気プラズマに晒された鉄表面の酸化鉄をその場で観察し,窒素/水蒸気プラズマにおいてアンモニアの生成レートが低い原因を特定する計画である。 また,研究計画調書に記載のとおり,2024年度には,大気圧窒素/水蒸気プラズマを用いたアンモニア合成に関する実験を開始する。誘電体バリア放電窒素プラズマから排出されるガスと,誘電体バリア放電水蒸気プラズマから排出されるガスをルテニウム触媒に照射する実験装置を構築する。鍵となるのは,水蒸気プラズマが良好な水素原子源として働くための装置の最適化であり,既に実験装置の設計に着手している。
|
Report
(1 results)
Research Products
(8 results)