大規模クレーター形成に伴う地下氷の融解と地下ハビタブルゾーンの生成可能性
Project/Area Number |
23K25927
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Project/Area Number (Other) |
23H01231 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17010:Space and planetary sciences-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
保井 みなみ 神戸大学, 理学研究科, 講師 (30583843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒崎 健二 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (60869519)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,720,000 (Direct Cost: ¥14,400,000、Indirect Cost: ¥4,320,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,360,000 (Direct Cost: ¥7,200,000、Indirect Cost: ¥2,160,000)
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Keywords | 地下ハビタブルゾーン / 大規模衝突クレーター / 衝突残留熱 / 凍土 / 重力支配域 / 含水砂 |
Outline of Research at the Start |
氷天体の大規模衝突クレーター形成に伴う生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)の生成条件を明らかにするため,地下に氷や水を含む天体地殻模擬標的を用いて衝突実験を行う.大規模な衝突クレーターの再現には,物質強度を持つ標的のクレーター成長を重力によって抑制する必要があるため,クレーターサイズに応じて疑似重力を標的表面に発生させる新たな実験手法を開発する.また,標的内部の衝突残留温度分布を測定するため,熱電対及び高速赤外線カメラを用いる.これらの実験結果と熱進化モデルの計算から,氷天体に形成された大規模クレーター周囲の衝突残留熱の発生とその冷却過程を再現し,地下ハビタブルゾーンの生成条件を考察する.
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Outline of Annual Research Achievements |
氷天体上の大規模な衝突クレーター直下では,衝突で破砕された氷や岩石の摩擦により衝突残留熱が発生し,その熱で融解した水が長期間保持された地下ハビタブルゾーンを形成する可能性がある.この生成条件を明らかにするため,氷天体地殻を模擬した氷,凍土,含水砂を用いた衝突実験及び熱進化数値計算を行う. 初年度は2つの室内実験を行った.物質強度を持つ標的に対して疑似重力を発生させる新たな実験手法を開発するため,含水砂を用いた等速度静的圧縮実験を行った.擬似重力を与えるため,標的上面に直径の異なる円形の穴の空いた板を設置し,2種類の直径の異なるピストンを取り付けた変形試験機で圧縮した.そして,板の上部に設置した2つのロードセルで重力の代替である荷重を計測し,空いた穴の径と荷重の関係を明らかにした.その結果,変形試験機で計測した標的にかかる荷重は含水率または穴の直径の減少と伴に増加することがわかった.擬似重力と変形試験機で計測した荷重の関係は穴の直径では変化せず,ピストン径によってその荷重比が変化することがわかった. 次に,同じ含水砂を用いたクレーター形成実験を行い,表面・地下の温度上昇を熱電対及び高速赤外線カメラを用いて調べた.実験は神戸大学に設置された横型二段式軽ガス銃を用い,弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球,衝突速度は2km/sとした.その結果,噴出するエジェクタは100℃以上と以下の2種類が共存し,含水率が大きいほど最高温度は低くなり,その継続時間は長くなった.内部温度は衝突点から遠ざかるにつれて最高温度が低くなるが,その冷却速度は距離によって変化しなかった. 数値実験は,標的天体と同程度の質量をもつ衝突体との巨大衝突現象について検討した.その結果,巨大衝突が発生した直後は岩石が溶融する高温状態になるが,その後の約1億年間で大気中の水蒸気が凝結し,液体の水になることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,擬似重力を制約する実験手法の開発を行った.標的には直径500μmの石英砂を用い,含水量を0から10wt.%まで変化させた.標的は直方体容器に入れ,上部に直径10から40mmの穴の空いたアルミ板を設置した.これを上から2つのロードセルで押さえ,試料中心を変形試験機で圧縮し,ピストン下の荷重を測定すると伴にロードセルで標的表面にかかる擬似重力(荷重)を測定した.その結果,穴の大きさ,含水率,ピストン径がピストン下の荷重と関係があり,擬似重力とピストン下の荷重比はピストン径のみに依存することがわかった.従って,標的条件を変えることで擬似重力を制約できることを確認した.この結果を基に,自由落下によるクレーター形成実験を開始したが(2024/4),衝突銃を用いた凍土のクレーター形成実験までは至っていない. 一方,含水砂を用いた高速度クレーター形成実験(擬似重力なし)と衝突残留温度の測定は,標的表面を赤外線カメラで測定し,標的内部に熱電対を挿入した測定手法を確立し,衝突点からの距離に伴う衝突残留温度の時間変化の観測に成功した.また,その時間変化が含水率が高くなると全体的に温度が低くなることがわかった.この手法を,次年度は凍土標的に適用する予定である. 数値実験については,大規模衝突後のハビタブルゾーン生成条件を推定するために,惑星全体の熱進化コード(惑星大気構造と内部構造を同時に計算する手法)を作成した.また,衝突直下点の温度分布を推定するため,SPH法を用いた衝突計算結果を解析し,衝突後の熱構造を解析する手法を開発した. 以上より,今年度は標的表面及び内部の温度測定法,熱進化コードを確立し,擬似重力を与える治具の開発及び予備実験を行った.本来の目的である凍土を用いた擬似重力下でのクレーター形成実験までは至らなかったため,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度開発した手法を用いて衝突銃を用いたクレーター形成実験を開始し,衝突残留温度の測定を凍土標的を用いて行う. 今年度開発した実験装置と含水砂標的を用いて,クレーター形成実験を行う.最初は自由落下による低速度での実験を行い,板の穴の直径と弾丸の質量,含水率,ロードセルの荷重との関係を調べる.これらの関係を経験式として得た後,衝突銃を用いたクレーター形成実験を開始する.装置は神戸大学の縦型一段式軽ガス銃を用い,弾丸は直径10mmのポリカーボネート球,直径3mmのアルミ球,鉄球を用いる.標的は内径150×150×150mmの金属製容器に入れ,標的上面の板の穴の大きさは直径20mmから80mmと拡張する.板の上部を2つのロードセルで押さえつつ擬似荷重(=擬似重力)を測定し,擬似重力とクレーター直径の関係を調べる.最終的には,自由落下の実験と縦型一段式軽ガス銃を用いた実験の結果を合わせ,重力支配域での含水砂のクレーター直径に関するスケール則を求める.この手法を含水砂の水を凍結させた凍土に適用し,含水砂とのスケール則の違いを調べる. また,含水砂を用いた高速度クレーター形成実験を継続して行い,衝突残留温度の計測を行う.今年度と違い,弾丸にアルミ球及び鉄球を用いて,衝突速度を5km/sまで拡張し,衝突残留温度の最高温度及び最高温度継続時間を計測する.そして,衝突条件を考慮した温度に関するスケール則を導く.そして,この計測方法を用いて,標的に凍土(氷含有率は10wt.%から80wt.%)を用いて温度計測を行う. 数値実験については,惑星全体の熱進化だけでなく,衝突直下点周辺での熱進化を理解するべく衝突直下点周辺の熱進化コードを作成する.衝突点付近を円筒座標系でモデル化し,衝突に由来する加熱の熱伝導による輸送を計算し,クレーター内部での液体の水の存在可能性について検討する.
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Report
(1 results)
Research Products
(10 results)