Project/Area Number |
23K25935
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Project/Area Number (Other) |
23H01239 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17020:Atmospheric and hydrospheric sciences-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷本 陽一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (00291568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 裕之 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10435844)
木戸 晶一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 研究員 (40878394)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,330,000 (Direct Cost: ¥14,100,000、Indirect Cost: ¥4,230,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
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Keywords | 海洋中規模渦 / 海洋熱吸収 |
Outline of Research at the Start |
海洋には、中規模渦と呼ばれる数100km規模の高気圧性の暖水渦と低気圧性の冷水渦が広く分布している。これらは海洋混合層から亜表層への海水の沈み込みに寄与していることが指摘されてきた。しかしながら、この海水の沈み込みに伴い、どの程度の熱が海洋混合層から亜表層へ取り込まれるかという問題は、観測機会の制約や数値モデルの空間分解能の不充分さのために、まだ検討されはじめたばかりである。本研究では、近年運用が開始されたばかりの中規模渦を表現する海洋再解析データセットと高精度な海面熱フラックスデータを利用することで、大気から海洋への熱の取り込みにおいて中規模渦が果たす役割を検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
高解像度海洋再解析データを利用し、北太平洋の海洋中規模渦上で行われた大気と海洋の熱交換に焦点を当てた研究を実施した。本研究では、渦を個別にトラッキングする従来のラグランジュ的手法ではなく、各格子点の流速データから求められる曲率渦度に基づき、高気圧性・低気圧性の中規模渦をオイラー的に抽出する手法を高解像度海洋再解析データに適用することを試みた。抽出された高気圧(低気圧)性回転を示すグリッドでの海面水温は、85%以上の割合で長期間の時間平均場に対する正(負)偏差を示した。また、高気圧性・低気圧性回転それぞれでコンポジットした水温偏差は、暖水渦・冷水渦に特徴的な渦の中心から概ね同心円状に分布する水温偏差の水平・鉛直構造を適切に再現し、本研究の手法が暖水渦・冷水渦を高解像度海洋再解析データから適切に取り出せることを示した。 さらに、中規模渦が検出されたグリッドとそうでないグリッドの海面熱フラックスを比較した結果、高気圧性(低気圧性)渦上では下向き(上向き)の海面熱フラックス偏差が示された。高気圧性(低気圧性)渦の存在頻度は中緯度の水温フロントの高緯度(低緯度)側で大きいため、中規模渦に伴う大気海洋熱交換は高緯度(低緯度)側での海洋からの熱放出を促進(抑制)し、結果として海水温の緯度分布を維持する働きを持つことが示された。このような海洋中規模渦に伴う大気海洋熱交換偏差は、1993年から2021年の間に北西部太平洋で吸収された熱量の約20%に相当すると見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地球温暖化に伴い大気海洋系内で増加した熱の大半は、海面から海洋混合層へ吸収され、海洋亜表層まで沈み込むことで、貯熱されている。このような海洋熱吸収の十年規模での変動は、全球の気温上昇率を規定することが知られている。本研究は、大気から海洋亜表層への熱フローの内、大気から海面を通り海洋混合層へ熱が吸収される過程における、海洋中規模渦の働きを明らかにした。 また本研究では、従来の手法より早い計算によって、海洋中規模渦を適切に抽出できることを示した。この手法の導入によって、海洋中規模渦の再現に求められる、高解像度で容量の大きい海洋再解析データの解析をスムーズに行うことが可能となった。 上記の研究成果は、研究集会において、海洋再解析データの開発者である研究分担者との間で共有し議論することで、今後の研究の推進方策を立てた。 以上の進捗から、研究は概ね順調に遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、海洋中規模渦において大気から海洋の最も浅い層である海洋混合層へ取り込まれる熱量を推定した。海洋混合層は常に大気と接し熱交換する層であり、夏は大気から熱を吸収し、冬に熱を放出する。1年以上の時間スケールで熱が海洋に固定される為には、より深い海洋亜表層への熱の沈み込みが必要となる。今後の研究では、海洋の混合層と亜表層の熱交換における海洋中規模渦が果たす役割に焦点を当てた解析を行う。 今後の解析結果やさらなる研究の推進方策について、研究分担者と議論するために、前年度に引き続き研究集会を開催する予定である。
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