金星の気候とスーパーローテーションの変動の要因解明
Project/Area Number |
23K25945
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Project/Area Number (Other) |
23H01249 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17020:Atmospheric and hydrospheric sciences-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 憲彦 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (10402538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 征弘 京都産業大学, 理学部, 教授 (00323494)
神山 徹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究チーム長 (40645876)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,590,000 (Direct Cost: ¥14,300,000、Indirect Cost: ¥4,290,000)
Fiscal Year 2026: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
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Keywords | 金星大気 / スーパーローテーション / 大気大循環モデル / 気候変動 / あかつき / 地球シミュレータ / 長期変動 |
Outline of Research at the Start |
最近の金星大気の気候変動の要因を明らかにする研究である。金星探査機「あかつき」などの観測では、大気中の太陽光の反射率と気温が長期変動していることが発見された。同時に、高速の東西風(スーパーローテーション)も長期変動していることが明らかになった。 本研究では、大気循環と未知の紫外吸収物質の相互作用が原因となり長期変動が生じていると仮定し、太陽加熱強度を変化させた大気大循環モデルの数値実験により、この可能性を検証する。最新の観測を援用し、アルベードの変化に伴う太陽光吸収量の変化によって、金星大気の温度分布やスーパーローテーションを含めた大気循環がどのように変動するかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
金星探査機「あかつき」などの観測により、金星大気のアルベードが最近約10年で数10%も変動し、太陽光吸収による金星上層大気の加熱率が大きく変化していることが発見された。同時に、金星大気最大の謎であるスーパーローテーションの風速がこのアルベードの変化に同期して数10%変動していることも明らかになった。 本研究では、大気循環と未知の紫外吸収物質の相互作用(雲層付近の太陽加熱強度を介した結合)が原因となり長期変動が生じていると仮定し、最新の観測を援用しながら、太陽加熱強度をパラメタライズした大気大循環モデルの数値実験により、この可能性を検証する。 金星大気大循環モデルには、我々がこれまで開発してきた地球AFESを金星版に改良した金星AFESを用いる。金星AFESでは、静的に太陽加熱強度の変化(観測された未知の紫外吸収物質の変化に対応)を与えることができるため、様々な加熱強度に対する大気循環の応答を網羅的に調査できる。特に雲層において大きな温度分布の変化が予想されるため、大気加熱量に関する感度実験を行うことで、放射平衡温度分布がどのように変化するかを定量的に明らかにする。 令和5年度は、静的な太陽(固定した)加熱強度の大小で、金星大気の気候がどのように変化するかを調査した。その結果、太陽加熱強度が大きい(小さい)場合に高速(低速)のスーパーローテーションが実現され、これらは観測と整合的である。次に、準定常状態になるまで50地球年間積分した後、加熱強度を12年周期で変化させた。上部雲層のスーパーローテーションは加熱強度と同じように時間変化し、その変動範囲は90-115 m/sとLee et al. (2019)と整合的である。また、熱潮汐波はスーパーローテーションの速度変化に関係し、短周期擾乱よりも5倍程度の大きさを持つことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、静的な(固定した)太陽加熱強度の大小で、金星大気の気候がどのように変化するかを解明することを目標としていたが、すでに観測と整合的な高速および低速のスーパーローテーションを太陽加熱強度の大小の差で実現できた。これにより、これらの差が生じるメカニズムを調査可能な段階に進んだことになる。 また2年目以降の計画であった、加熱強度を周期変化させる実験にも着手している。加熱強度の変化に対する上部雲層のスーパーローテーションの変動範囲もLee et al. (2019)の観測と整合的で、大気大循環モデル内に変動を駆動する力学過程が存在することを意味している。また、加熱強度の変化により熱潮汐波の振幅が変動し、この運動量輸送に伴い、スーパーローテーションの速度が変化することを新たに見出した。大循環モデル内の結果とは言え、熱潮汐波による加速率が短周期擾乱よりも5倍程度の大きさを持つことも定量的に示すことができた。 また、金星AFES内の短周期擾乱の時間変動に伴い、雲層下部の赤道ジェットの風速が変動することや、金星AFESの擾乱の成長度を計算するBred Vectorによる調査も行い、金星の予測可能性が地球の傾圧波による1-2週間程度に比べて長くなりそうであるとの初期結果を得た。これらの成果はすでに出版済みである。観測に関しては、あかつき中間赤外カメラ画像の長期変動の解析を進めており、熱潮汐波や雲頂温度の長期変動が見られており、風速との関連を調査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
太陽加熱強度の大小で、温度分布が変化することにより、子午面循環などの大気大循環のパターンの変化も予想される。次年度は、平均子午面循環の変化とそれがスーパーローテーションに与える影響を調べる。また、大気の平均温度、南北温度差、夜昼間の温度差、大気の安定度、対流層の厚さ等の変化も解析を行う。 また、すでに導入している周期的な太陽加熱強度の時間変動によって、どのようにスーパーローテーションが変動するか、そのメカニズムを解明する。スーパーローテーション生成のメカニズムには子午面循環によるものと熱潮汐波によるものが有力であるため、本研究では2つのメカニズムが個別に働く理想化した場合と、双方が働く現実的な場合について、スーパーローテーション強度(風速)の太陽加熱強度の時間変動に関する依存性を明らかにする。 最終的には、上記で得られた結果をヒントに、スーパーローテーションの生成・維持メカニズムを解明する。スーパーローテーションの東風とその鉛直シアは南北温度差と温度風の関係にあるので、スーパーローテーションの強度の変動は金星大気の気候変動と密接に関係する。また、スーパーローテーションは、その大気循環(特に鉛直風)によって未知の紫外吸収物質の分布を変化させる。このため、これまでに得られた大気循環の結果を用いて、太陽加熱強度をパラメタライズし、気候変動を一体化し、スーパーローテーションの強度(大気循環)に応じて太陽加熱強度を動的に変動(相互作用)させる。そして、静止状態からスーパーローテーションの発達を再現することで、現実の金星大気におけるスーパーローテーションの生成・維持メカニズムを決定する。
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Report
(1 results)
Research Products
(23 results)