エントロピーおよび自由体積評価に基づく高分子材料の力学的劣化および残存寿命評価
Project/Area Number |
23K25990
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Project/Area Number (Other) |
23H01294 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 18010:Mechanics of materials and materials-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
坂井 建宣 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10516222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 潤 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 教授 (60386604)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥19,110,000 (Direct Cost: ¥14,700,000、Indirect Cost: ¥4,410,000)
Fiscal Year 2025: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
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Keywords | 高分子材料 / 寿命予測 / エントロピー / 自由体積 / 体積ひずみ / 比熱容量 |
Outline of Research at the Start |
本研究では使用中の高分子材料における力学的劣化状態評価およびそれを考慮した残存寿命評価を目標とし、高分子材料の力学的劣化状態を、熱エントロピーおよび自由体積に基づき正確に評価し、それに基づく残存寿命評価技術を構築する。熱エントロピーは熱分析および赤外線カメラにより評価し、自由体積については体積計測、密度計測、陽電子消滅寿命測定によるナノ~マクロ計測により多角的に評価する。本研究を達成することで力学的劣化状態をエントロピーで評価し、さらにエントロピー損傷則を考慮した残存寿命を評価する革新的な非破壊検査手法の実現を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では構造部材として使用中の高分子材料における力学的劣化状態評価およびそれを考慮した残存寿命評価を目標とし、高分子材料の力学的劣化状態、すなわち力学エントロピーを、熱エントロピーおよび自由体積に基づき正確に評価し、それに基づく残存寿命評価技術を構築する。基盤技術として、熱エントロピー・自由体積に着目した力学的劣化状態の評価を行っており、熱エントロピーについては熱分析により評価し、自由体積については体積計測、密度計測、陽電子消滅寿命測定によるナノ~マクロ計測により多角的に評価する。 現在までの研究実績は、陽電子消滅寿命測定装置の納品が年度末であったことから、それ以外の評価について検討を行っている。エポキシ樹脂を対象とした引張試験により得られる応力ひずみ曲線より得られる力学エントロピーに対して、引張試験前後および途中止めした際に、示差走査熱量測定(DSC)により得られる比熱容量から算出した熱エントロピーは、より大きな値を示すことが明らかとなった。これはエポキシ樹脂が脆性的な破壊を示したことにも関係しており、延性を示さないため、結果として力学エントロピーの増加がみられなかった。この結果はこれまでに得られた延性的な高分子であるPA6の結果(熱可塑性樹脂)とは大きく異なっており、熱硬化および熱可塑の分子構造の違いおよび、延性・脆性の違いが影響を及ぼしていることが示唆される。 また、熱エントロピーと体積ひずみとの間に線形関係がみられ、熱エントロピーの増加の要因が自由体積である可能性が示唆されたとともに、熱エントロピーの評価により、体積ひずみを捉えることができる可能性が示唆された。分子動力学シミュレーションにおいては、PA6において力学エントロピーと熱エントロピーが、引張解析において同様に増加すること、また自由体積と力学エントロピーの間にも同様の傾向があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の核の一つである陽電子消滅寿命測定装置の納入が遅れ、年度末に納品されたため、2023年度の進捗としては、本装置を用いた正確な自由体積測定、ができていないのが遅れている要因である。また本装置で測定した物質は放射線で汚染されてしまうことから、熱処理・引張試験前後での比較が難しいことが明らかになり、計画の変更をする必要が出てきている。具体的には、引張試験中のその場測定ができないことにより、経時変化を観察することができないことが明らかとなった。しかし、それ以外の評価については順調に進んでおり、全体的には「やや遅れている」の評価となった。 また、エポキシ樹脂での評価において、引張挙動が脆性的であったため、力学エントロピーと熱エントロピーの関係は、線形関係はあるが、同じ値とはなっていない。そのためその検証のためにエポキシ樹脂におけるMD解析が必要であることが明らかとなった。 しかし、それ以外の研究進捗については問題なく進められており、これまでに得られていた熱可塑性樹脂における結果に対して、熱硬化性樹脂では異なる力学エントロピーを示すことが明らかとなっている。しかし、自由体積(体積ひずみ)と力学・熱的エントロピーの関係はPA6の時と同様であることが明らかとなっており、今後はより自由体積に着目した研究を行う必要があることが明らかとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂で、力学エントロピーの変化が異なるが、熱エントロピーの変化は似通っていることが明らかとなっている。そこで今後は熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂において分子動力学シミュレーションによる引張解析を行い、熱エントロピーおよび力学エントロピーの発生要因の違いについて検討を行う。また、熱エントロピーは自由体積と密接な関係があることが示唆されていることから、熱処理により自由体積を制御することで、異なる自由体積におけるエントロピーの評価を行い、陽電子消滅寿命測定による結果と熱エントロピーの比較を行うとともに、自由体積が大きく依存する粘弾性特性との関係を明らかにすることを行う。特に自由体積分布の違い(熱処理温度の違いにより再現が可能)についても言及する。 以上を踏まえて、陽電子消滅寿命測定装置・示差走査熱量測定・MD解析を引張試験・引張解析とともに行うことで、引張変形による体積ひずみ・自由体積分布・力学・熱的エントロピーの関係を明らかにしていく。これらの結果を得ることで、最終年度における非破壊検査法の開発につなげていく。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)