Project/Area Number |
23K26390
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Project/Area Number (Other) |
23H01697 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26030:Composite materials and interfaces-related
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
尾形 修司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90251404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮前 孝行 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (80358134)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥14,950,000 (Direct Cost: ¥11,500,000、Indirect Cost: ¥3,450,000)
Fiscal Year 2026: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2025: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
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Keywords | 接着 / プロトン化 / シミュレーション / 湿潤環境 / DFT / MD / 接着界面 / 和周波発生分光 / X線分光 |
Outline of Research at the Start |
水分による構造用接着剤-金属間の接着力低下問題を,接着剤内部および接着界面でのプロトン化の視点から,シミュレーションと分光測定との併用により解明する.基本とする接着の対象系は,接着剤としてアミン硬化型エポキシ樹脂,また被着基板として自然酸化皮膜を有するアルミニウムとする.実験ではアルミニウムの酸化被膜にSi等を添加することで接着性能が向上するが,本研究ではそのメカニズムを,樹脂内や被着材表面で部分的なプロトン化の可能性に注目して,シミュレーション及び実験計測の連携により明らかにする.
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Outline of Annual Research Achievements |
自動車等の輸送機器産業では軽量化の要求が強く,軽量素材を組み合わせた車体のマルチマテリアル化がトレンドである.マルチマテリアル化においては異なる種類の素材の接合に接着剤が多用されるが,長期間使用すると水分の影響で接着力が低下する問題がある.本研究では,この問題を接着剤内部および接着界面でのプロトン化・脱プロトン化という新しい視点から,DFTを用いたシミュレーションを中心に,実サンプルの分光測定も併用して解明する.対象系は,接着剤としてアミン硬化型エポキシ樹脂,被着基板としてアルミニウムの自然酸化皮膜を設定した.実験ではアルミニウムにシラン化合物を塗布することで接着力とその水分への耐久性が大きく向上する.我々は,外部から侵入した水分により,エポキシ樹脂,アルミニウムの自然酸化皮膜,またはシラン化合物で部分的なプロトン化あるいは脱プロトン化が生じ,それが接着力に大きな影響を及ぼす可能性があると考えている.2023年度は最初に,シラン化合物やアルミニウムの自然酸化皮膜のOH基に関するプロトン化の自由エネルギーを,第一原理分子動力学シミュレーションを利用して計算し,特にシラン化合物の塗布密度が高く互いに架橋した場合には,そのOH基が湿潤環境で脱プロトン化することを予測した.次に,架橋したシラン化合物とアミン硬化型エポキシ樹脂のアミノ基とを接触させ,その接触部周囲に水分子が吸着した状況を扱った.その初期状態から,樹脂を少しずつ引き上げるDFT-MDシミュレーションを遂行することで,エポキシ樹脂のアミノ基とシラン化合物のOH基との結合エネルギーを調べた.その結果,3個程度の極少数の水分子が接触部周囲に存在する場合にだけ,通常の水素結合より格段に強い結合エネルギーが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションの対象系は,接着剤としてアミン硬化型エポキシ樹脂,被着基板としてアルミニウムの自然酸化皮膜をHO終端化γ-アルミナでモデル化した.実験ではアルミニウムにシラン化合物 1,2-Bis(triethoxysilyl)ethane (BTSE) を塗布することで,接着力とその水分への耐久性が大きく向上する.我々は,外部から侵入した水分により,アミン硬化型エポキシ樹脂,HO終端化γ-アルミナ,さらにBTSEにおいて,(脱)プロトン化が生じる可能性を,密度汎関数理論(DFT)による第一原理シミュレーションによる熱力学積分を経て理論予測した.その結果,HO終端γ-アルミナに脱水結合で接続したBTSEに関しては,低塗布密度に対応した独立したBTSEの場合は酸解離定数pKaが7より大きいが,高塗布密度に対応した架橋したBTSEの場合はpKaが7未満であり湿潤環境で脱プロトン化することがわかった.また,アミン硬化型エポキシ樹脂のアミノ基は湿潤環境でプロトン化することがわかっている.次に,架橋したBTSEとアミン硬化型エポキシ樹脂のアミノ基とを接触させ,その接触部周囲に水分子が吸着した状況を扱った.その300Kでの初期状態から,樹脂を段階的に少しずつ引き上げるDFT-MDシミュレーションを遂行することで,エポキシ樹脂のアミノ基とシラン化合物のOH基との結合エネルギーを調べた.その結果,3個程度の極少数の水分子が接触部周囲に存在する場合にだけ,通常の水素結合の3倍程度大きな結合エネルギーが得られた.他方,分光測定による実験を行い,BTSEにおいては,その加水分解が完全には進んでいない場合があることがわかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度にDFTを用いた第一原理分子動力学シミュレーションによって発見した,架橋BTSEとアミン硬化型エポキシ樹脂のアミノ基との接触部の近傍に極少数の水分子が存在する場合に接着力が大きく増大する現象は,大変興味深い.これが発現するメカニズムの検討を進めることは特に重要である.そこで2024年度は.対象系の設定を2023年度での場合から様々に変えることで,推測している発現メカニズムの検証を進める方針とする.例えば以下の設定でシミュレーション及び実験を行う.(1)エトキシ基を少しだけ残す設定でのシミュレーションの可能性,(2)エトキシ基が少しだけ残っている場合に実験で接着強度を調べる可能性,(3)エトキシ基をメトキシ基に変更する設定での実験の可能性,(4)空隙や表面粗さなど他の要因についての実験の可能性
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