Project/Area Number |
23K26539
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Project/Area Number (Other) |
23H01846 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29020:Thin film/surface and interfacial physical properties-related
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
近松 彰 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (40528048)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥19,240,000 (Direct Cost: ¥14,800,000、Indirect Cost: ¥4,440,000)
Fiscal Year 2026: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥11,830,000 (Direct Cost: ¥9,100,000、Indirect Cost: ¥2,730,000)
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Keywords | 酸フッ化物 / マルチフェロイック特性 / 薄膜新材料 |
Outline of Research at the Start |
同一の相で強誘電性と強磁性を併せ持つマルチフェロイック物質は、一方のフェロイック特性を他方の共役場で操作できるため、磁気メモリなど電気磁気効果に基づくデバイスへの応用が期待されている。本研究では鉄・マンガン酸フッ化物に着目し、酸フッ化物薄膜の室温マルチフェロイック特性の検証、酸フッ化物薄膜の局所構造の観測と理解、理論計算による酸フッ化物の構造最適化を行う。本研究により、最適なカチオンの割合やフッ素量、エピタキシャル応力を見つけ出し、室温で安定なマルチフェロイック特性の酸フッ化物の発見と酸フッ化物マルチフェロイクスの学理構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
同一の相で強誘電性と強磁性を併せ持つマルチフェロイック物質は、一方のフェロイック特性を他方の共役場で操作できるため、磁気メモリなど電気磁気効果に基づくデバイスへの応用が期待されている。しかしながら、これまで報告されているマルチフェロイック物質は鉄酸ビスマス等ごく一部を除き低温でしかその特性を示さない。そのため、実用化に向けて室温で安定して動作する物質の開発が切望されている。 令和5年度は、極性構造を持つ鉄酸フッ化ビスマスに注目し、パルスレーザー堆積法とトポケミカルフッ化反応法の組み合わせにより鉄酸フッ化ビスマスの単結晶薄膜を作製し、その室温強誘電特性および光学特性について調べた。 X線回折測定から、Bi0.8Ba0.2FeO2.9薄膜を200-300 ℃でフッ化した薄膜はペロブスカイト構造を保ったままフッ素ドープ量に伴いc軸長が伸長すること、350 ℃ではc軸長が大きく伸長し蛍石構造に転移することが明らかになった。エネルギー分散型X線分析およびX線光電子分光の結果から、250 ℃でフッ化した薄膜の化学組成はBi0.8Ba0.2FeO2.8F0.2と同定された。誘電測定の結果から、Bi0.8Ba0.2FeO2.8F0.2薄膜が室温で残留分極が約9 μC/cm2の強誘電性を示すことが明らかになった。さらに、Bi0.8Ba0.2FeO2.8F0.2薄膜のバンドギャップが1.7 eVとフッ化前に比べて小さくなることを分光測定により確かめられた。今後作製した鉄酸フッ化物薄膜の磁気特性および電子状態を詳細に調べ、室温マルチフェロイック特性について明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度の目標にしていた鉄酸フッ化ビスマスの単結晶薄膜の作製に成功し、室温強誘電特性を発現することを明らかにできた。また、本課題で購入した紫外可視近赤外分光計により、作製した鉄酸フッ化ビスマス薄膜の光学バンドギャップを測定し、フッ素ドープに伴いバンドギャップが小さくなることを明らかにした。これらの成果を論文にまとめ、現在学術誌に投稿中である。さらに、Aサイトカチオン(バリウムとビスマス)の化学組成を変えた酸フッ化物単結晶薄膜の作製にも成功し、X線光電子分光測定により組成によって形状の異なる価電子帯スペクトルが得られたことから、化学組成が変わると異なる物性をもつことが示唆された。 また、セリウム酸化物のトポケミカルフッ化反応にも挑戦し、低温かつ短時間でフッ化反応が進行し、完全なセリウムフッ化物になることを明らかにした。さらに、得られたフッ化物薄膜が既知のフッ化物イオン伝導体と比較しても十分高いフッ化物イオン伝導度をもつこと、フッ素の導入は表面からではなく基板と薄膜との界面から進行することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、(1)ビスマス鉄酸フッ化物薄膜の磁気特性の起源と電子状態の解明、(2)イットリウム鉄酸化物薄膜のトポケミカルフッ化反応による単結晶薄膜の作製とマルチフェロイック特性評価、(3)セリウムフッ化物薄膜のフッ化物イオン伝導性の評価、(4)絶縁体-金属転移を示すタングステン酸化物薄膜のフッ素置換の観点から進める。 (1)に関して、これまで明らかにできていないBi0.8Ba0.2FeO2.8F0.2薄膜の磁気特性とフェルミ準位近傍の電子状態を実験により明らかにする。また、昨年度作製に成功したAサイトカチオン組成の異なる鉄酸フッ化物単結晶薄膜において、強誘電特性や光学バンドギャップを実験により明らかにする。 (2)に関して、理論計算で室温マルチフェロイック特性を示すことが予測されているイットリウム鉄酸フッ化物の単結晶薄膜を、パルスレーザー堆積法とトポケミカルフッ化反応法の組み合わせにより作製し、その物性評価と電子状態測定を行う。 (3)に関して、昨年度作製に成功したセリウムフッ化物Sr0.5Ce0.5F2.5薄膜のフッ化物イオン伝導性を詳細に調べる。さらに、SrとCeの組成の異なるフッ化物薄膜の合成方法を確立し、それらのフッ化物イオン伝導性を測定する。 (4)に関して、フッ素の脱挿入により絶縁体-金属(超伝導)転移を起こすことで知られるタングステン酸フッ化物に着目し、その単結晶薄膜の作製方法を確立する。薄膜作製に成功したら、物性評価および電子状態測定を行い、絶縁体-金属転移の起源を調べる。さらに、基板応力を変えることによる物性の変化も明らかにする。
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