Project/Area Number |
23K26554
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Project/Area Number (Other) |
23H01861 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29030:Applied condensed matter physics-related
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 雄馬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60738277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉見 龍太郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40780143)
川村 稔 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 専任研究員 (60391926)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥19,370,000 (Direct Cost: ¥14,900,000、Indirect Cost: ¥4,470,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2023: ¥14,300,000 (Direct Cost: ¥11,000,000、Indirect Cost: ¥3,300,000)
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Keywords | 量子抵抗標準 / 量子異常ホール効果 |
Outline of Research at the Start |
近年、磁性トポロジカル絶縁体薄膜において、ゼロ磁場でホール抵抗が量子化される現象「量子異常ホール効果」が発見された。この現象では、量子化抵抗の観測に強磁場が不要であることから、これまで抵抗標準として利用されてきた強磁場下の現象「量子ホール効果」を置き換える可能性に注目が集まっている。しかし抵抗標準への応用には、臨界電流や動作温度の向上、ならびに量子化抵抗の普遍性の検証といった基礎研究が必要である。本研究では、磁性トポロジカル絶縁体薄膜の成膜条件や膜構造・素子構造を最適化し臨界電流・動作温度を改善し、高精度抵抗測定に基づく量子化抵抗の普遍性検証を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、磁性トポロジカル絶縁体薄膜において、ゼロ磁場でホール抵抗が量子化される現象「量子異常ホール効果」が発見された。この現象では、量子化抵抗の観測に強磁場が不要であることから、これまで抵抗標準として利用されてきた強磁場下の現象「量子ホール効果」を置き換える可能性に注目が集まっている。これまでに申請者らは、量子異常ホール効果の精密ホール抵抗測定を行い、有効数字8桁という世界最高精度で量子化抵抗を観測し標準応用に向けた原理検証に成功した。しかし、強磁場下の量子ホール効果と比較すると臨界電流や動作温度がまだ1桁以上劣っている。さらに、量子化抵抗の普遍性が十分検証されていないという課題も残っており、引き続き基礎研究が必要である。 本研究では、強磁場発生装置不要の量子抵抗標準の実現に向け、磁性トポロジカル絶縁体を利用した抵抗標準素子の開発ならびに精密抵抗測定に基づく量子化抵抗値の普遍性の検証を行う。理研では、磁性トポロジカル絶縁体薄膜の臨界電流向上と品質改善のため、成膜・素子作成条件の最適化と基板表面処理の評価を行った。さらに、量子異常ホール抵抗値の精密測定に必要な極低温電流比較器動作のために、液体ヘリウムを用いない無冷媒冷凍機を活用したヘリウムガスチャンバーの設計製作を進めた。これらの進捗により、研究は順調に進んでいる。今後は成膜条件のさらなる最適化や、磁気近接効果を利用した量子異常ホール素子の開発に着手し、測定実験を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性トポロジカル絶縁体薄膜の膜質向上については、これまでに我々が到達した臨界電流1 uAを一桁向上させた10 uAを実現できる高品質膜の実現を目指した成膜・素子作製条件の最適化に取り組んだ。磁性トポロジカル絶縁体薄膜は分子線エピタキシー成長によって成膜するが、成膜には温度や真空度などの成長条件などに加え、基板の前処理などの工程が膜質に作用する。初年度には、磁性トポロジカル絶縁体薄膜の高品質化を目指す試みとして、成膜前の基板表面処理による表面状態の改善や真空チャンバーのベーキングによる成膜室内の環境改善などを行い、膜質にどのような影響があるかを調べた。実際に、基板の表面処理を行うと薄膜表面形状の平坦性が改善することをAFM測定などを通じて評価した。 量子異常ホール抵抗値の精密測定には、これまで量子抵抗標準として利用されていた整数量子ホール効果で観測される量子化抵抗と直接比較測定を行うことで、抵抗値の差から抵抗値を決定する。この測定には、2つの独立な回路で電流をバランスさせるための極低温電流比較器を用いて行う。極低温電流比較器は産総研で所有しているものの、液体ヘリウムを必要とする装置であり、近年の液体ヘリウムの入手困難に伴い使用困難な状況となっている。そのため本研究では、液体ヘリウム不要の無冷媒冷凍機でこの装置を動かすためのヘリウムガスチャンバーの設計製作と評価を進めた。その他、回路のバランスを検出するための低雑音チョッパーアンプの試作や磁性トポロジカル絶縁体を磁化させるための小型超伝導電磁石の設計製作などを進め精密測定に向けた測定セットアップの準備を進めた。 これらから目標としている研究計画に沿って、おおむね順調に進捗したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
成膜前の基板前処理については、膜厚の均質性については改善したものの、量子異常ホール効果の臨界電流や動作温度の改善には至らなかった。今後も引き続き、成膜に関係する条件の最適化を継続する。また、当初計画していた磁気近接効果を用いた量子異常ホール素子の開発にも着手し、素子の最適化を目指す。 初年度に設計したHeガスチャンバーは、無冷媒冷凍機にステンレス製のフレキ配管を通し4Kのプレートにはアルミニウム製のハウジングを熱接触させた構造となっている。その配管の中に極低温電流比較器のプローブを差し込んで使用する。冷却時には配管内にヘリウムガスを導入し、ガスを熱伝導媒体として極低温電流比較器を冷却する構造である。実際にそのようなHeガスチャンバーを試作して動作検証を行ったところ、4 K以下にする必要がある先端部において20 K程度までしか冷却できなかった。これは、途中の50 Kプレートで十分な熱アンカーを取らなかったために先端部への熱流入が大きかったためであると考えられる。今後の改良として、50 Kプレートで配管を一度分割し、銅ブレードなどを用いて十分な熱アンカーをとることなどが必要と思われる。次年度は、その改良を進めるとともに量子異常ホール抵抗の抵抗値の決定に向けて実験を進める。
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