軌道角運動量を持つ高強度光による分子回転励起への挑戦
Project/Area Number |
23K26611
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Project/Area Number (Other) |
23H01918 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 宗良 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20373350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深堀 信一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10802142)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥19,240,000 (Direct Cost: ¥14,800,000、Indirect Cost: ¥4,440,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2023: ¥12,350,000 (Direct Cost: ¥9,500,000、Indirect Cost: ¥2,850,000)
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Keywords | 高強度光 / 分子回転 / 軌道角運動量 / 回転励起 |
Outline of Research at the Start |
近年,軌道角運動量(OAM)を持つ光の生成が可能となった。OAMを持つ光を分子に照射すると,光のOAMが分子へ移行すると期待されるが観測例はほとんど無い。本研究では,光の強度を増大させることでOAMの光から分子への移行過程を誘起し移行メカニズムを明らかにすることを目指す。具体的には高強度OAM光をN2,O2といった単純な分子へ照射し分子の回転角運動量の変化の観測を行う。本研究により,光のスピン角運動量の移行に基づいた従来の分光学に新たな展開をもたらすと期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では軌道角運動量(OAM)を持つ高強度光を用いて分子を回転励起させることを目標としている。今年度(2023年度)は,OAMを持つ光を発生させるための装置購入と設置および励起スペクトル測定の予備実験を行なった。OAM光の発生に関して具体的には,通常の平面波のレーザー出力から軌道角運動量を持つ螺旋状の空間位相を付与させるための空間位相変調器(浜松ホトニクス LCOS-SLM)を購入した。現在,装置の動作確認やソフトウェアの使用方法の確認,独自のプログラムによる動作の検討,HeNeレーザーを用いての軌道角運動量の付与の実験を行い,装置の性能評価を行っている。 また,OAM光で生成した回転励起状態をプローブするための方法として共鳴多光子イオン化(REMPI)による励起スペクトルの測定を予定しており,このための予備実験をOAMを持たない高強度光を用いて行った。NO分子に直線偏光の高強度光を照射し回転励起させ,A-X遷移を経由した REMPIによる励起スペクトルの計測を行なった。高強度光によって回転励起することが確認でき,高強度OAM光の生成ができれば,すぐに励起スペクトルの測定が可能である。 もう一つのプローブ方法として,OAM光で生成した回転波束の直接観測を予定しており,そのために必要な二次元イオン検出器(蛍光面付きMCP検出器:浜松ホトニクス MCP F6959)を購入した。まだ真空チャンバーへ設置していないが,OAMを持つ高強度光が生成した後に真空チャンバーへ設置する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OAM光を発生させることが本研究の鍵であり,新規購入した空間位相変調器(SLM)の立ち上げに現在取り組んでいる。今年度はSLMの使用方法の習熟にあてており,次年度以降にOAM光の発生および評価を行うことができると見込んでいる。高強度OAM光による回転励起の評価については,二通りの方法を用いることによって,通常の高強度光を用いた場合の回転励起とは異なるということを示す予定である。その方法の一つは,色素レーザーを用いたREMPIを用いた励起スペクトル計測であり,OAMを持たない高強度光を用いた予備実験により,現在の装置を用いて励起スペクトルを測定できることを確認した。もう一つの方法は,OAM光によって生成した回転波束に対して,遅延時間を置いて照射する円偏光の高強度光によって分子をイオン化・クーロン爆発させ,フラグメントイオンの角度分布からOAMによって生成した回転波束を評価する方法である。フラグメントイオンの角度分布を計測するために二次元イオン検出器が必要となり,今年度購入したが現在のところ装置開発について進展していない。このため,励起スペクトルによる回転励起の評価と並行して二次元イオン検出器を用いる装置の開発を行う予定である。二次元検出器の立ち上げの面で若干遅れているが,初年度の装置立ち上げとしては概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降,予定通り発生させたOAMを持つ高強度光を分子へ照射し,生成した回転励起状態をREMPIによる励起スペクトルの計測およびクーロン爆発を利用した回転波束の測定から明らかにしたい。各実験において,OAM光を作るためのSLMの動作をON/OFFし,それぞれの場合について測定を行い,ON/OFFの結果を比較することでOAMの効果を調べたい。 このためには,高強度OAM光の発生が必要不可欠であり,来年度以降もOAM光の発生に注力する。今年度に引き続き,単色のHeNeレーザーを用いて光の空間強度分布を自在に制御し,光強度の空間分布を評価する方法を確立する。さらに,SLMを制御しつつイオン信号をPCへ取り込む測定プログラムの開発も行う。 HeNeレーザーを用いての実験が上手く行った後,フェムト秒レーザーを用いてのOAM光の発生を試みる。フェムト秒レーザーでは波長帯域が広くなるため単色のHeNeの場合と状況が異なるが,近年フェムト秒OAM光の発生についての報告もなされており最新の研究を参考にしながらOAM光の発生に取り組んでゆく。 今年度は主に実験に注力したが,来年度以降はOAM光による回転励起の数値計算によるシミュレーションも進める。OAM光と分子の相互作用は,当初の計画通り回転ラマン過程が誘起されるものとして相互作用を二次摂動として取り込み,時間依存のシュレディンガー方程式を数値計算で解く予定である。このための計算コードを開発する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)