Project/Area Number |
23K26743
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Project/Area Number (Other) |
23H02050 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36010:Inorganic compounds and inorganic materials chemistry-related
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
稲熊 宜之 学習院大学, 理学部, 教授 (00240755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝又 哲裕 東海大学, 理学部, 教授 (90333020)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥19,110,000 (Direct Cost: ¥14,700,000、Indirect Cost: ¥4,410,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
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Keywords | 酸フッ化物 / 極性 / 高圧合成 / 結晶構造 / アニオン配列 |
Outline of Research at the Start |
陰イオン(アニオン)として酸化物イオンとフッ化物イオンを含む酸フッ化物では、金属-異種アニオン間の化学結合の違いに由来した、酸化物やフッ化物等の単アニオン化合物では実現できない機能の発現が期待される。一方、酸フッ化物の探索が十分に行われていないことに加え、その平均構造、アニオン配列を含む局所構造、物性との関係についての理解は十分とはいえない。そこで、本研究では、極性を示す酸フッ化物に焦点を当て、新規極性酸フッ化物の探索・合成を行う。そして、得られた極性酸フッ化物の平均構造、局所構造、極性およびそれらの相互関係を調べることにより、極性の起源を明らかにし、極性の制御を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
酸フッ化物は、金属と酸素/フッ素の異種アニオン間の化学結合の違いに由来する新たな機能の発現が期待される化合物群であり、実際に酸素/フッ素の規則配列に由来する機能性が見出されている。一方、酸フッ化物の探索が十分に行われていないことに加え、その平均構造、アニオン配列を含む局所構造、物性との関係についての理解も十分とはいえない。本研究では、極性酸フッ化物に着目し、 (1) 金属-アニオン間の化学結合を意識しHard Soft Acid Base (HSAB)則に基づくアプローチから新規酸フッ化物の探索合成を行う。 (2) 極性酸フッ化物の平均構造および局所構造、アニオン配列、極性を明らかにする。(3)アニオン配列を含めた構造と極性の関係を明らかにすることを目的としている。 本年度は、低温で測定可能な光第二高調波発生(SHG)装置システムの構築、合成過程の解析、ペロブスカイト型酸フッ化物の合成、構造解析および誘電性に関する研究を行った。-190~350℃の温度範囲で光第二高調波発生(SHG)測定ができるシステムを整備した。SPring8の高強度かつ短波長の放射光X線を用いたin situ X線回折実験により、金属管内でのフッ化物および酸フッ化物の反応を追尾できることがわかった。ペロブスカイト型酸フッ化物BaFeO2Fに関する研究では、その平均構造は立方晶であるが、X線PDF解析およびSHG測定により局所的には歪んでおり、極性(polar)領域が存在することが明らかになった。また、ペロブスカイト型酸フッ化物AgTiO2Fに関する研究では、放射光in situ X線回折実験により、AgFとTiO2から直接生成しているのではなく、Ag3TiOF5とAg2Oを経て、AgTiO2Fが生成することがわかった。そして、高温X線回折により、400 K付近で構造相転移が起こることを突き止めた。さらに、酸フッ化物の探索の過程で、立方晶をとる新規酸フッ化物Ag0.7ZrO2.35F4を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極性を評価するための低温で測定可能なSHG装置システムが整備された。そして、放射光in situ X線回折実験により金属管中でのフッ化物および酸フッ化物の反応を解析することができることが確かめられた。物質に目を向けると、立方晶の平均構造をもつペロブスカイト型酸フッ化物BaFeO2Fにおいて、局所的にはアニオン八面体の歪とFe3+イオンの変位が起こっており、それによってpolar領域が存在することが示唆された。また、ペロブスカイト型酸フッ化物AgTiO2Fの相転移も見出された。これらの結果からおおむね順調に進んでいるといえる。一方、AgTiO2Fの相転移の理解については初期段階である。今後構造変化を詳細に調べ、構造と物性との関係を明らかにする。また、新規酸フッ化物の探索・合成の検討に関してもまだ不十分である。さらに検討を続け、新規極性酸フッ化物の合成を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
酸フッ化物の合成を行い、得られた酸フッ化物の平均および局所構造解析、酸フッ化物の誘電性および強誘電性評価に取り組む。 (1) 新規酸フッ化物の探索合成 得られた結果をもとに合成指針を検討し、酸フッ化物の探索合成を行う。酸フッ化物の合成において、Ni等の金属管に封入し気密状態で加熱して合成を行うことがあるが、上で述べたように、SPring8の高強度かつ短波長の放射光X線を用いたin situ X線回折実験により、金属管内でのフッ化物および酸フッ化物の反応を追尾できることがわかった。そこで、引き続きin situ放射光X線回折実験により酸フッ化物の生成過程を明らかにし、酸フッ化物の合成へフィードバックする。 (2) 酸フッ化物の構造解析 X線および中性子線構造解析による平均構造解析、PDF解析を用いた局所構造解析に取り組む。さらに、共同研究によりTEM、フッ素19F-固体NMR測定を行い、別の視点から局所構造を調べ、PDF解析と合わせアニオン配列を明らかにする。また、構造の温度依存性も明らかにする。 (3) 酸フッ化物の誘電性および強誘電性評価 引き続きSHG測定システムの高性能化に取り組む。入射するレーザー光により試料が損傷を受ける場合は光強度を下げる必要があり、必然的にSHG信号強度が小さくなる。微弱な信号でも検出できるように、光学系を工夫し測定感度の向上を図る。SHG測定によって非対称中心性が確認された試料について、SHGの温度依存性、研究室現有のLCRメータを用いて誘電率の温度依存性、そして、強誘電テスタを用いて分極の電場依存性を測定し、強誘電性について評価を行う。また、相転移挙動についても熱測定および構造解析と組み合わせて明らかにする。
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