ルテニウム酸化物の選択性反転を起点とする高電流密度海水電解プロセスの構築
Project/Area Number |
23K26760
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Project/Area Number (Other) |
23H02067 (2023)
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Multi-year Fund (2024) Single-year Grants (2023) |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36020:Energy-related chemistry
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
中山 雅晴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70274181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 真明 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00582206)
太田 雄大 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (70509950)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2024: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,660,000 (Direct Cost: ¥8,200,000、Indirect Cost: ¥2,460,000)
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Keywords | 海水電解 / ルテニウム酸化物 / 酸素選択性 / 欠陥 / 水素 / 酸素欠陥 / 塩素フリー / 酸化ルテニウム / 水素製造 / 塩素抑制 |
Outline of Research at the Start |
従来,酸素発生反応(OER)はアルカリ,塩素発生反応(COR)は酸性環境で研究されており,海水電解の基礎データとなるOER/CORのpHや電位依存性に関するデータは欠落している。直接海水電解が現行のアルカリ水電解,PEM型水電解に比肩するためには,pH横断的なOER/COR反応性の理解が不可欠である。また,直接海水電解に関する基礎研究のほとんどが室温で実施されており,より実用に近い50-80℃での試験は行われていない。海水環境での電気化学は水素製造に限らず,海洋設備(洋上風力発電など)の電気防食など,カーボンニュートラルに資する新技術開発においてその基礎をなすものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
1)従来の水電解槽は純水で作動するように設計されているため,グリーン水素が大規模導入されれば,やがて世界的な淡水不足に陥る。この問題は無尽蔵に存在する海水を水素源にすることによって解消できるが,一般的な工業用電極で直接海水を電解すれば,アノードでは塩化物イオン酸化反応(COR)が支配的になる。COR生成物である塩素は腐食性が高く,その需要は水素よりもはるかに小さいため,アノードでは酸素発生反応(OER)が優先する方が好ましい。アルカリを添加すれば,OER選択性を高めることが可能だが,Mg,Ca塩の沈殿が避けられない。また,Clイオンの浸入をブロックする物質と触媒を複合化する方法もあるが,耐久性に悪影響を及ぼす。これらを鑑み,我々は触媒固有の反応性によって酸素選択的な直接海水電解の実現を目指している。 2)今回開発した酸素欠陥を高濃度含むルテニウム酸化物(S-RuOx)と市販の二酸化ルテニウム(C-RuO2)を0.5 M NaCl水溶液中において10 mA/cm2で定電流電解し,その耐久性とCORのファラデー効率(FE(COR))を調べた。C-RuO2では電解を開始してすぐに電位が上昇しており,30時間以内に活性はほとんどなくなった。FE(COR)は電位の上昇とともに増大しており,20時間後に90%に達した。一方,S-RuOxでは60時間の運転で電位上昇は20 mV以内であった。20時間付近まではFE(COR)は5%以内であり選択的OERを達成した。30時間以降から徐々にFE(COR)が大きくなり,60時間後には35%に達した。ルチル型RuO2は高電位を印加することで触媒自体が酸化されてしまい水に可溶な酸化体を形成することが知られている。S-RuOxは欠陥サイトを多く含んだ構造により,格子酸素の酸化をブロックし,結晶の溶解を防ぐことができたと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S-RuOxを水熱法によって粉末として合成し,キャラクタリゼーションを行った。様々な条件で作製した各種触媒に対して広域X線吸収微細構造法を適用し,局所の原子配列や微細構造を明らかにした。OER/COR性能を迅速・簡易かつ多点的に調べる方法として,回転リングディスク電極を用いたアノード掃引試験を海水と同じ濃度の塩化ナトリウム水溶液中で行った。定電流または 定電位電解によって生成した酸素量と酸化塩素種の量と消費電気量の割合,すなわちファラデー効率を導出し,OER/COR酸化選択性を様々な電解条件で決定した。長時間電解と様々な温度での電解を行い,上記各パラメーターと安定性(=電位上昇)を評価した。以上より,本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
S-RuOxと遷移金属酸化物からなるハイブリッド材料を多孔性基材(Ni,Tiフォームなど)上に合成し,電子構造の最適化による固有活性・選択性の向上に加え,反応物・生成物拡散のための多孔質構造形成,露出活性部位の増大により,触媒性能の向上とRu減量の同時達成を図る。定電流または 定電位電解によって生成した酸素と塩素種の量と消費電気量の割合,すなわちファラデー効率を導出し,OER/COR選択性を決定する。この実験を様々な温度で行い,OERとCORの反応性およびその結果としてのOER選択性の温度依存性を調べる。DFT計算を用いてC-RuO2とS-RuOx表面でのOERとCORおよびその各ステップにおける反応中間種の吸着状態の最安定構造を計算し,各ステップの自由エネルギー変化を見積もる。高電流密度印加が可能な電解槽を試作し,長時間電解を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(17 results)